Woman’s Talk

一つずつやってきたら、膨れあがっていた 蜷川実花さん

  • 2015年2月19日
  

自分のイメージが膨張する瞬間、自分の確認のために撮りたくなる

 東京の原美術館で「蜷川実花:Self-image」展が開催中だ。オープニングパーティーに100近い花と1000人ほどの招待客が溢(あふ)れた。改めてその人気、寵児(ちょうじ)ぶりが印象的だった。

「すごくうれしいけど、現実感がないというか、人の話みたいな、不思議な感じがします」

 当代一の売れっ子写真家。AKBのPVも撮り、映画も監督、華やかな話題がつきまとう。もっとも目の前のこの人は、むしろ自然体でバランス感覚があり、柔らかな印象だ。

 今回の写真展にはカラー作品とともに、中心にモノクロのセルフポートレートがあった。笑顔はない。怒り、不安、戸惑い、寂しさ、虚無、そんな言葉が浮かぶ。案内状に「これが私の原点です。ここからまたスタートできる気がしています」と書かれていた。

「映画を撮っていた前後にセルフポートレートを撮っていました。自分のイメージが膨張する瞬間、違和感や戸惑いがあり、自分の確認のためだけに撮りたくなるみたいです」

 デビューから20年、写真集もすでに90冊近く。鮮やかな色彩が氾濫(はんらん)する可愛くポップな写真や人気の役者やアイドルを撮った写真集がある。その一方で、花や生き物や日常の光景に潜む歪みや不気味、死の匂いや闇の気配を捕らえた写真集がある。荒っぽくいえばメジャーとマイナー、エンタメとアート、光と闇、生と死……。その両極の世界を軽やかに横断し、自分の世界を創ってきた印象がある。

「両方やりたいんですね。二つは地続きで、どちらも私で、境界線はなく、スイッチを切り替えているわけではないんです。ただ風当たりが強くて、ものすごい突風が吹く。でもやりたいなあ、やれそうだなあと、一つずつやってきたら、膨れあがっていた。それは性に合っていると思うんです。いろいろやりたくなるんです。恵まれた愛ある家庭ですくすく育っているのに、なんでこんなに欲が深いのかと、自分でも不思議なんですけどね(笑)」

子どものことが好きすぎて、あとをくっついて歩いてます

 小学1年の男の子の母親である。その日常を「まるでミルフィーユみたいに重なってカオスのような状態」と笑うが、子どもとの時間を大切にしている。毎朝5時半に起きてご飯を作り、学校に送り出す。夕方は6時からご飯、宿題、お風呂とつきあい、8時半に寝かすまでは「できる限り仕事をいれないで空けている」。

 結構、メロメロな母である。

「子どものことが好きすぎて、あとをくっついて歩いてますが、怒る時は怒る(笑)。男の子は興味が全く違うので面白くて仕方ないです。小さい頃から棒を見ると必ず拾う、砂利とかも好き、なんで?と思う(笑)」

 不気味さ、禍々(まがまが)しさが全面に表れた代表作「noir」は子どもをもってからの写真集だ。表現への貪欲さと覚悟は、むしろ子どもを持ってからさらに増したように感じられる。

 インタビューは蜷川さんの事務所で行われた。この人の映像世界そのままの不思議空間。絵も写真もキラキラグッズも奇妙なオブジェも過剰に過度に混沌(こんとん)と装飾され、溢れていた。「キラキラした過剰なものが好き」と話すが、花や女の子の「アシの早い」一瞬の美にときめき、人工美にゾクゾクし、「日常の中に潜む違和感に惹(ひ)かれる」。増殖しつづけるその独特な美意識は、魅力的であり、謎でもある。

撮影:Makoto Uchikoshi(LUCKY STAR)/文:追分日出子
ヘアメイク:Noboru Tomizawa(CUBE)/スタイリング:Kumi Saito(SIGNO)

    ◇

にながわ・みか(写真家、映画監督)
東京生まれ。2001年木村伊兵衛写真賞など数々受賞。07年、監督映画「さくらん」、12年、「ヘルタースケルター」公開。14年、20年開催東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会理事に就任。15年1月から品川の原美術館で個展「蜷川実花:Self-image」(~5/10)、「noir」(2/4~23渋谷ヒカリエ・8/ ART GALLERY/ Tomio Koyama Gallery)、「Portraits & Flowers」(2/21~4/12 三宿CAPSULE、SUNDAY)など開催。

■この記事は、2015年2月12日付朝日新聞朝刊「ボンマルシェ」特集のコーナーの転載です

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