リノベーション・スタイル

<109>どこかがいつも「未完成」

  • 文 石井健
  • 2015年7月15日

 [Y邸]
 Yさん一家(夫35歳・妻30歳・長男0歳)
 品川区 築15年/65.39m²/総工費 1055万円

    ◇

 こちらの物件は、古い洋館の庭園が隣にあって、窓からは借景が楽しめるラッキーな立地。バルコニーも広く、都心にいながら緑に囲まれています。

 住んでいるのはYさん一家。ご夫婦ともクリエイターです。リノベーションでは、「製作」と「暮らし」をどう結びつけるかがテーマになりました。お二人が目指していたのは、「暮らしの中にインスピレーションがある」世界観。快適な住環境を実現しつつも、どこかがいつも「アンダーコンストラクション」で、家そのものを暮らしながらつくり続けるというイメージでした。

 2005年にイギリスのアーティスト集団が出した『Janfamily: Plans for Other Days』という写真集があるんですが、ちょうどそういう雰囲気です。一見、何の変哲もない日常の中にユーモアを見いだす。この写真集そのものを目指したわけではありませんが、全体の世界観や壁の色味などは参考にしています。

 たとえばフローリング。アトリエスペースは寄せ木を使っているんですが、打ち合わせのときにぱっと裏を見たら「これ、かっこよくない?」と(笑)。作った人に申し訳ないなあと思いながら、ここはわざと仕上げをしていない裏側を使いました。ラフで「未完成な感じ」が出ますよね。この裏使いは、今後商品化するかもしれません。

 天井も仕上げを寸止めしています。赤や黄色のシールのようなものがぽつぽつついていますが、これは「偶然のアート」なんです。天井にはもともと吊り天井や配管を止めるインサートというプラスチックのパーツがついているんですが、これはその残骸。現場で偶然見つけて「いいね!」となって。設計担当者がすべてマスキングして残したんです。その作業が想像以上に大変だったんですが(笑)。

 全体的に未完成感を意図的に作っていますが、かなり細かく調整してのこと。ゾーニングは以前とあまり変わっていませんが、アトリエと生活スペースをどうつなげるかをかなり考えました。基本的にはワンルームですが、空間ごとに床の仕上げを変えています。大きくわけて7パターン。玄関はモルタル、廊下はベニア。アトリエは先ほど出たように寄せ木で、窓際のインナーテラスはカーペット。LDは居住空間なのでフローリング、寝室はブルーのカーペットでキッチンはビニールタイルです。アトリエだけ、水まわりとの関係を遮断するため腰壁を作っています。将来的にはここを個室にもできます。

 家は完成したら終わりではありません。住みながら、壊したり、作ったり、付け足したり。あえて未完成感を残すことで、インスピレーションを刺激する家になりますね。

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PROFILE

石井健(いしい・たけし)

1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から500件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)

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