リノベーション・スタイル

<110>“美術館のカフェ”のような雰囲気

  • 文 石井健
  • 2015年7月29日

 [K邸]
 Kさん一家(夫40代・妻40代)
 東京都渋谷区 築43年/83.24m²

    ◇

 Kさん夫妻はデザイナーで、お二人でグラフィックデザインの会社を経営しています。これまではマンションの2室を借り、住居と事務所をわけていたのですが、今後は一つにしたいということで、新たな物件をリノベーションすることになりました。

 見つけたのは山手線内の好立地に建つ83平米のマンション。3分の1を住居に、3分の2をオフィスとキッチンにすることにしました。

 最近はレトロスタイルやブルックリンスタイルが人気ですが、Kさん夫妻はもう少しモダンに立ち戻りたいとのこと。いい意味で生活感を表に出さず、かつリラックスできる”美術館のカフェ”のような雰囲気を目指すことになりました。

 そこで提案したのが、真っ白な空間。全体のトーンは白とスリガラス、落ち着きのあるダークなフローリングでまとめました。表向きはオフィスなので、玄関を開けるとオフィスとしての空間が広がっています。白い壁とスリガラスに囲まれた廊下ですが、実は白い壁の向こうにはトイレとお風呂があります。お客さんが使うトイレの扉には取っ手をつけていますが、お風呂の扉にはつけていません。お客さんがお風呂を使うことはないので、存在感を消すデザインにしたんです。

 大きな本棚のあるLDKが打ち合わせスペースです。キッチンがありますが、手元を見えないようにしたり、冷蔵庫や洗濯機を引き戸の中に隠したりして、生活感をなるべく出さないようにしています。スリガラスの扉の向こうが執務室になっています。

 ここまでがオフィス空間で、一見するとどこで生活しているのかわかりません。実は本棚の隣にある全面鏡がドアになっていて、そこが居住空間の入り口になっているんです。隠し部屋みたいですね(笑)。本棚が壁になっていて、その向こう側にベッドルームや収納スペースがあります。

 空間としては一つですが、ちょっとした扉を開けると生活空間が出現し、閉じるとオフィス空間になります。美しく“二重生活”が重なったお部屋になりました。

リノベーションの写真 つづきはこちら

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PROFILE

石井健(いしい・たけし)

1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から600件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。

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