里山アートめぐり

<6>やっぱりダンスが好き! 白神ももこ

  • 写真 石野明子
  • 2015年8月18日

  

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 「大地の芸術祭」で『つまりは、ダンスでコマーシャル』という作品を出品している「モモンガ・コンプレックス」。日常風景の中からダンスが突然生まれ出すような、ユーモラスなパフォーマンスを得意とするグループだ。彼らは会期中にエリアや作品を紹介する100本の動画を制作・配信するという壮大なプロジェクトを進めている。メンバーが実際に現地を歩いて作品を探し、雰囲気に合わせた創作ダンスと音楽で動画を制作、特設サイトで順次公開していくというもの。

(特設サイトはこちら:http://momoconmomocon.wix.com/tsumaridance#!cm/c14hl

 リーダーとしてグループをまとめ、振り付けや構成・演出を担当している白神(しらが)ももこさんに、プロジェクトの狙いやこれまでの活動の歩み、意気込みを聞いた。

   ◇

――芸術祭での活動内容を教えてください。

 創作ダンスと音楽でつくるコマーシャル動画を、会期中に100本配信することを目指しています。炎天下なので体が持つかどうか心配ですが。音楽もエリアごとに変えていきます。そして、9月5日午後6時半から、うぶすな・下条飛渡エリア内の神明水辺公園にある「バタフライパビリオン」で、プロジェクトの総集編として公演を行う予定です。期間中に撮りためた映像や音楽を紹介しながらダンスをしたり、映像が流れているパネルを背負って踊ったりと、お客さんに楽しんでもらえるパフォーマンスを考えています。

【K033 境界の神話/内田繁】

――「モモンガ・コンプレックス」という名前はとてもインパクトがありますね。

 大学卒業後、ダンスユニットを立ち上げるときに演出家さんからアイデアをもらいました。「モモンガ船長」などの候補が出たのですが、私は「コンプレックス」という言葉が好きで、自分の作風にも近いと思ったので組み合わせてみました。ダンスだけではなく、いろんな活動と組み合わせて演じていきたいという思いもあり、「複合的」という意味も込めました。

――ダンスは小さいころから習っていたんですか?

 小学校1年生から高校3年生までクラシックバレエを習っていたのですが、コンプレックスの塊になってしまいそうでした。ある程度上手じゃないと口を聞いてくれなかったり、何よりも技術の高さが優先されたりと。評価が一方向ということもつらかった。その点、同じ踊りとはいえ、ダンスには違う魅力がたくさんありました。

 桜美林大学出身なのですが、大学では演劇や舞台芸術を専門に学んでいました。平田オリザさんや木佐貫邦子さんなどが教えてらっしゃって、とても刺激的でした。普通の生活をしていたら「変わった人だね」と言われていた自分が、ダンスをやっている時は「そこは面白いね」と評価される喜びを感じました。

――「ダンスで食べていこう」と決意したきっかけはあったのでしょうか。

 学生時代はスーツを着て就職活動もしたんです。ダンスや演劇に携わる人たちのための整体やマッサージの仕事がやりたいと思い、いろいろ調べました。その中のある会社が、入社してからもトレーニングやコンディショニングの方法を学ばせてもらえるということで訪問したのですが、面接でやらかしてしまって……。

――何があったんですか?

 就職面接なのに、「ダンスがやりたい!」 「ダンスの時間が欲しい!」と熱く語ってしまったんです。ふと気づいて面接官を見ると、「この人は就職する気ないんじゃないか」という表情になっていて。「やっちゃった」とは思いましたが、逆に「自分はやっぱりダンスがやりたいんだ」と気づきました。面接でしゃべっているうちに本音が出て、素直な自分を見つけることができたんですね(笑)。

 ダンスが好きだからといって、職業にできるほど向いているとは思っていなかった。親もそう思っていたようです。だから、その業界に近いところで働きたかったんです。衣装さんとかは無理でも、ダンサーの体に関することなら自分にも何かできるかなと。ところが、そういう結果になってしまって、「ダンスで生きていくしかない」ということになりました。

【T030 光る泥だんごをつくろう!/週末泥だんご教室】

――「無意味・無駄を積極的に取り入れた作風」が得意ということですが、どういう意味でしょう。

 ダンスをやっている人間がこんなことを言うのはおかしいですが、ダンスの動きは無駄ばかり(笑)。普通に歩けばいいのに、跳んだりはねたりして動く。だけど、そんな「無駄」の中に人間の本質があるのではと思います。たとえば、ゴミをみればその人の生活の本質が見えるように、ある人にとって無駄だと思われる部分を掘り下げることでその人自身が見えてくるのではないでしょうか。

 バレエの動きには無駄がない。直線的な動きや乱れなく動きを合わせる踊りは美しいですが、私が好きなのは、完璧な技術を持ったダンサーが何かの拍子にちょっとよろめいたり、振りを間違えてハッとした時の表情を見せたりするところ。その時、その人らしさが表れると思う。そこが面白いんです。全体の流れからしたら無駄な部分かもしれないけど、私は好き。みんなが捨てそうなところにこそ宝物があると思っています。

――今回の出品作でどんなメッセージを届けたいですか?

 スケジュールや距離の問題で芸術祭に行きたくても行けない人は多いと思うんです。そんな人たちには、現地に行かなくても作品やエリアを楽しんでもらえるような動画を作りたい。逆に行くことができる人には、新しい作品の楽しみ方を見つけてほしい。作品と人が並ぶとその作品の規模感がわかっていいですよね。展示品の横にたばこの箱を置くみたいに(笑)。

――これからの目標は?

 欲があまりないんです。周囲からは野心がなさすぎて心配されたりもします。でも、その時そこにいる人たちといっしょに楽しいことができるなら、私は幸せですね。

【E313 サウンド・ダイアログ】

   ◇

白神ももこ(しらが・ももこ)

振付家・演出家・ダンサー。1982年生まれ。「モモンガ・コンプレックス」ではすべての作品の構成、演出、振り付けを担当。2014年に開催された日本最大級の舞台芸術フェスティバル「フェスティバル/トーキョー」では、美術家・毛利悠子や音楽家・宮内康乃らとストラヴィンスキーの『春の祭典』を手がけた。

モモンガ・コンプレックス
http://www.momongacomplex.info/

ダンスパフォーマンスグループ。メンバーは白神ももこ、臼井梨恵、北川結、夕田智恵の4人。2005年に結成され、横浜トリエンナーレや越後妻有アートトリエンナーレなどで作品を発表。小学生や高校生を対象としたワークショップ、中学校の卒業式や市役所、地域のお祭りなどでのパフォーマンスも行っている。

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