リノベーション・スタイル

<113>マンションでありながら戸建てのように

  • 文 石井健
  • 2015年9月9日

 [S邸]
 Sさん一家(夫婦・息子2人)
 横浜市港北区 築36年/116m²/総工費 1,900万円

    ◇

 マンションの1階はあまり人気がありませんが、庭があったりすると戸建て感覚で住めるので、実はおすすめです。戸建てに対するイメージって、玄関がゆったりしていて窓が多く、庭がある、というようなものですよね。都心の住宅事情を考えると、庭のない戸建ても多いので、マンションの広い1階の方が、私たちが考える戸建てに近いといえるかもしれません。

 とはいえ、なかなか広いマンションがないのも事実。ある統計によると、都内で100平米を超えるマンションは新築でたったの1.1%。中古物件で4.4%とも言われています。

 今回の物件は、厳密に言うと都内ではありませんが、100平米を超える広々としたお部屋です。しかも1階で庭付き。マンションでありながら戸建てのような空間を味わえるリノベーションを目指しました。

 まず、玄関はゆったりとした造りに。すぐ隣にはシューズとウォークインが一緒になったクローゼットがあります。エントランスに立ったときに、視界がリビングの窓の外に抜けるように細かい計算をしています。

 LDKも全部で25畳くらいあり、広々としています。特筆すべきはその隣にある8畳の和室。最近、小上がりなどで畳を取り入れる人は増えていますが、本格的な和室というのはまだ少数派です。今回はお茶をする奥様の要望で作りました。畳の中には炉が入るようになっています。炭だと耐火設計が必要ですが、電気なら比較的簡単にマンションでも取り入れられます。床の間、畳、聚落の壁、特注の障子紙とふすま。きちんと作った和室は、本当の和室の良さを感じられますね。

 ちなみに洗面はダブルシンク。4人家族なので、朝のラッシュ時に待たなくてもいいように2つ作りました。シンク1台を増やすのって実はそんなにお金もかからないんです。その割には毎日のことなのでとても便利。トイレも二つ作っています。その辺りも戸建てのような感覚ですね。日本ではなぜかトイレも洗面台も一家に一つというケースが多いのですが、最近は見直されてきています。

 マンションでも、いい条件がそろえば今回のように戸建てとマンションのいいとこどりができるんです。1階だからといって選択肢からはずしてしまうのはもったいないですね。

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PROFILE

石井健(いしい・たけし)

1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から600件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。

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