リノベーション・スタイル

特別対談<2>いま、リノベに携わる人たちが宿を始める理由 ~hanare<後編>

  • 宮崎晃吉×石井健
  • 2016年5月2日

  

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hanare前編から続く

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石井 ゲストハウスがいま流行っているのは、単純に宿が足りないっていうのもありますね。ホテルを運営しようとするとかなりの稼働率がないとできないけど、小規模な民宿のような形であれば、もうちょっと違った考え方でできます。今のゲストハウスって、昔のカフェブームやラーメン屋ブームに近いのかもしれません。みんなが「なんとなくやってみたい」と思っている感じがあって……。

宮崎 小さな宿の問題は、単価を上げざるをえないということと、リネンサービスの業者が請け負ってくれないことですね。うちは5部屋なんですが、見積もりさえとってくれませんでした。リネンサービスの問題はけっこう大きいです。結局、コインランドリーに持ち込んでやっていますが、本当はアウトソースできたら楽なんですよね。

石井 そうですか。でもこの辺はコインランドリーがあるんですね?

宮崎 まあ、銭湯があるので。

石井 なるほど!

宮崎 小規模なところから請け負ってくれるリネンサービスがあったら、すごくもうかると思うんですよね。

石井 僕の自宅近所には「WASH&FOLD」というおしゃれなコインランドリーがありますよ。そこはピックアップもやってるはず。

宮崎 そうなんですか!

石井 宮崎さんがコインランドリー屋さんやってみたら……?

宮崎 いや、この辺じゃまだそれほど需要がないんです。でも、浅草とかでやったら間違いなく当たるでしょうね。エアビーやっている人も多いですし。

石井 セルフと持ち込み両方あるといいですよね。

宮崎 ランドリーカフェみたいな。

石井 いいですねえ(笑)。ゲストハウスはまだいろいろ課題があるにせよ、ここにきて実際に動く人が一気に増えてきたというのが興味深いです。arts&craftの中谷ノボルさんが、2010年に大阪のゲストハウス「HOSTEL 64 Osaka」を始めたのが最初だと思いますが、ここ数年でリノベーションに携わっている人たちが、どんどん宿泊業を始めています。

たとえば銭湯に行って帰ってくる体験をどこまで豊かにできるか

宮崎 そういえば、去年11月にオープンした浅草の「Bunka Hostel Tokyo」は、僕と須藤剛さんという建築家で設計協力したんですよ。

石井 そうなんですか!ちなみに宮崎さんはなんで宿泊をやっているんですか?

宮崎 うーん。僕の場合は、観光のレベルを上げたいというのがありますね。もうちょっと深く、本当の部分を見て欲しいと思ったんです。でも、それってすごく難しくて。というのも、住民は必ずしも観光化を望んではいないんです。

石井 それはそうですよね。

宮崎 ただ、宿泊業が面白いのは、包括的にサービスを考えられることです。どういう朝ご飯を提供して、どんなところを歩いて、どんな銭湯に行ってどんなお店へ行けるか……。たとえば銭湯に行って帰ってくるという体験をどこまで豊かにできるか。そんなことを考えるのが面白いんです。今ある要素をどういうふうにつなぎ合わせると違う価値になるかをいつも考えています。カフェでもできるかもしれませんが、宿泊がからんでくると、時間軸が入ってくるから、より深いものになるんです。

石井 そうですね。宿泊となると、時間軸と観光軸ができて、街とのつながり方がもっと多面的になっていくんでしょうね。ゲストハウスを経営する魅力はそこかもしれないですね。

宮崎 そうだと思います。

石井 きっと、昔の民宿とは違った、都市型民宿というのがこれから増えていくのでしょうね。採算が合うとか合わないとかいうより、今はとにかくやりたいという人が多い。シェアハウスみたいなのがたくさん増えた時期があったけど、きっと宿の方が魅力的なんだと思います。アメニティ考えたり、名前を考えたり……。

宮崎 ええ、いろんなデザインを考えられるのが楽しいです。

石井 そのうちアメニティを作りたいから宿をやるみたいな人が出てくるんじゃないかな(笑)。その中で、サテライト型の宿をやりたい人もたくさんいるんじゃないでしょうか。

宮崎 サテライト型でいいのは、パッケージ型のホテルとは違って同じものにならないところです。絶対に違うものになる。だから、各地域にこういう宿泊施設があったらいいなと思っているんです。

石井 きっと増えると思いますよ! 今後の活動も楽しみにしています。

(構成 宇佐美里圭・写真 篠塚ようこ)

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宮崎晃吉(みやざき・みつよし)

HAGISO 代表、建築家。東京藝術大学建築科非常勤講師。東京藝術大学大学院修了後、磯崎新アトリエを経て、2011年よりフリーランスの建築家・デザイナーに。
建築デザイン事務所:HAGI STUDIO

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PROFILE

石井健(いしい・たけし)

1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から600件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。

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