リノベーション・スタイル

特別対談<3>ひがし茶屋街近くの仏具屋がホテルに~HATCHi金沢

  • 北島優・五ノ井麻衣×石井 健
  • 2016年5月11日

左から、北島優さん、五ノ井麻衣さん、石井健さん

  • 左から、北島優さん、五ノ井麻衣さん、石井健さん

  • 北島さんは、金沢出身。実家に帰るたびに感じていた「思い」を形に

  • 「地域資源を生かして地域の価値を高め、新しいツーリズムやライフスタイルを生み出したい。それが地域活性化につながれば」と、五ノ井さん

  • 金沢と同じように、全国各地で、老朽化した不動産を宿泊・飲食・シェアスペース・店舗で構成した「シェア型複合ホテル」へ再生、運営していくという

  • 地元の人に開かれた「グランドホテル的な建物」が同時多発的に増えている、と石井さん

  • 「THE SHARE HOTELS HATCHi金沢」のレセプションとカフェ

  • レセプションのカウンターには、北陸のいいものを集めたギフトショップ「[g]ift(ギフト)」が選んだ品が

 本連載でおなじみのブルースタジオ・石井 健さんが、いま日本各地で急増している“ゲストハウス”に注目し、宿泊事業とリノベーションをテーマに語り合う特別編第3回目。

 今週のゲストは、リノベーション分譲事業やシェア型賃貸住宅事業のパイオニア、株式会社リビタ・地域活性化ホテル準備室の北島優さんと五ノ井(ごのい)麻衣さん。これまで数々のエポックメーキングな施設を手がけてきた同社は、いよいよ今年から本格的に宿泊事業をスタートする。その記念すべき第一号、「THE SHARE HOTELS HATCHi(ハッチ) 金沢」とはどんな場所? リビタが目指す宿泊事業とは? その根底にある思いをうかがいました。

THE SHARE HOTELS HATCHi金沢の写真はこちら

    ◇

石井 健 このたびは、3月18日に地域密着型ホテル「HATCHi(ハッチ)金沢」をオープンされたそうで。おめでとうございます。

北島優、五ノ井麻衣 ありがとうございます。

石井 すごくおしゃれですね。場所はどのあたりにあるのでしょうか?

北島 ひがし茶屋街にほど近い、橋場という交差点のすぐ近くです。この建物は築50年くらいで、もともと仏具屋さんだったんですが、2年くらい前からずっと空きビルでした。15年ほど前には地下に5、6店舗のスナックや小料理屋が軒を連ねる飲食店街もあったんですよ。

石井 ホテルの1階にはカフェが2店舗入っているんですね。

五ノ井 金沢でも人気がある「a.k.a.(アーカ)」という和食ダイニングと、「HUM&Go#(ハムアンドゴー)」というコーヒースタンドに入ってもらいました。もちろん宿泊者が食事をするだけでなく、宿泊していない地元のお客さんも使えます。

石井 いいですね。レセプションのカウンターに並べているのはお土産ですか?

五ノ井 はい、北陸のいいものを集めたギフトショップ「[g]ift(ギフト)」に出店していただいたんです。

石井 部屋はいくつあるんでしょう?

北島 ドミトリータイプが3種5室、プライベートタイプが3種9室で、最大94名収容です。ドミトリーが一泊3800円から、プライベートが一泊8800円からです。

石井 確か、今年中には同じ金沢で2店目ができるんですよね?

五ノ井 2店目は街の中心部の方なんですけど、HATCHiとはまた全然違ったコンセプトの建物になる予定です。もともとオフィスビルだったところを自社で購入し、リノベーションしています。その他、京都と東京、来年春には北海道でオープンします。ちょっと焦っています(笑)。

石井 すごい、この1年で5カ所もオープンするんですか!

五ノ井 はい、すべて「THE SHARE HOTELS」という事業ブランドで計画をしています。全国各地の老朽化した不動産を用途変更し、宿泊、飲食、シェアスペース、店舗で構成した「シェア型複合ホテル」へ再生、運営しようという試みです。

地元を盛り上げるローカリストと旅行者をつなげたい

石井 なるほど。宿泊事業を始めたきっかけってなんだったんですか?

北島 実はすごく個人的なことなんです……。僕、金沢出身で。実家が金沢にあるんで、休みになると帰るんですけど、帰るたびに空きビルが増えたり、コインパーキングが増えたりしていて。まあ、地方はどこも同じような感じだと思うんですけど、せっかく自分がこういう仕事をやっているので、どうにかできないかなと思ったのが最初です。今から5年くらい前ですかね。

石井 個人的な思いからスタートしているんですね。

北島 ええ。それで、ちょうどそんなことを思っていたとき、大阪の「Arts&Crafts(アートアンドクラフト)」さんが「HOSTEL 64 osaka」を造って。

石井 「64(ロクヨン)」ができたのが確か6年くらい前ですよね。

北島 はい。それを見て、金沢でもそういうのができたらいいなと思って、金沢R不動産の知人に、いい物件があったら教えてくださいって話はしていたんです。そんな流れで、ちょうど1年くらい前にリビタで新規事業を募集していたので提案したら、「じゃあやろうか」と。

石井 北島さんの興味と会社の方向性がぴったり合ったんですね。

北島 はい。だから、一号店が金沢になったのはただ単に実家があったというだけ……(笑)。北陸新幹線の開業とはまったく関係ないんです。

石井 そういうことだったんですね(笑)。ちなみに北島さんはこれまでどんな部署にいたんですか?

北島 リビタに入社して4年目なんですが、これまでは横浜みなとみらいの造船ドック跡に造った「BUKATSUDO」という、大人のためのシェアスペースの企画などをしていました。コミュニティーの場に興味があるんです。

石井 「HATCHi」では企画やプロジェクトリーダーをされていますが、オープンした今はいったん現場からは離れているんですか?

北島 いえ、ハードを造って終わりでなく、ソフトコンテンツを回していくことも大切なので、まだまだ関わっていきます。町づくりのプレーヤーや伝統産業の継承者、農家さんなど地元を盛り上げるローカリストと旅行者をつなげていくコンテンツを充実させたいと思っています。

石井 なるほど。五ノ井さんはリビタに入社されて何年目になられましたか?

五ノ井 私は8年目です。入社してすぐ石井さんとリノベーション住宅推進協会を立ち上げて……。

石井 そうでしたね。

五ノ井 そのあと建築部門に2年ちょっといて、今は事業ブランディングやPRを担当しています。2013年に立ち上げた「R100 TOKYO」という、100平米超えのマンションばかりを集めた事業ではブランディングの担当をしていました。今は100%ホテルのことをやっています。「THE SHARE HOTELS」のブランディングがメーンですね。

街に開く、ということは徹底しようと思っています

石井 このホテル事業のコンセプトってなにかありますか?

五ノ井 「日本の未来が宿る場。をつくる」をコンセプトに、地域資源を生かして地域の価値を高め、新しいツーリズムやライフスタイルを生み出し、ひいては地域活性化につなげていくことを考えています。

石井 どの場所でも「これは必ずやっていきたい」というものってありますか?

北島 街に開く、ということは徹底しようと思っています。ホテルを開かれた場所にしたいんです。ドミトリーとかホステルタイプの宿って共用部が充実していますが、僕らは利用を宿泊者に限定するのではなく、街の人もシェアスペースを借りたりして活動できるようにするつもりです。旅行者にとっても、地元の人にとっても楽しめる場所にしていきたいんです。

石井 サロン的な役割を持たせるということですよね。そもそも、ホテルってそういう役割があったんですよね。

北島 そうですね。

石井 東京でも地方でも、昔から“グランドホテル的な建物”がありますよね。結婚式はみんなそこであげる、というような。ただ、ホテルがもう少し小規模になってくると、泊まることだけに特化されてしまい、そういった役割を持つところはあまりありません。それが、最近変わってきました。さっき出てきた大阪の「64(ロクヨン)」もそうだし、東京の「NUI.(ヌイ)」もそう。NUI.のカフェなんて、泊まっている人より地元の人の方が多いくらいです。そういったことが今同時多発的にあちこちで起こっているんですよね。

(後編へ続く:5月18日掲載予定です)

(構成 宇佐美里圭・写真 篠塚ようこ)

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PROFILE

石井健(いしい・たけし)

1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から600件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。

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