リノベーション・スタイル

特別対談<4>いまリノベーションホテルに関わる人に必要な、5つのセンス~HATCHi金沢

  • 五ノ井麻衣・北島優×石井 健
  • 2016年5月18日

左から、五ノ井麻衣さん、北島優さん、石井健さん

  • 左から、五ノ井麻衣さん、北島優さん、石井健さん

  • 「昔は『中古は煮ても焼いても中古』って言われて、住宅ローンさえおりなかった。でもちゃんとやっている人が増えると、徐々にみんなの価値観が変わってくる」と、石井さん

  • 「出会いがあるようなホテルを作れたら」と、五ノ井さん

  • 「街づくりのローカリストとタッグを組みたい」と、北島さん

  • ドミトリータイプの部屋。ベッドのスペース内に、物置台や鍵つきロッカーなど様々な工夫が

  • 共用のキッチンスペース。郷土料理のワークショップなども開催予定

(HATCHi金沢対談 前編から続く)

    ◇

石井 今、リノベーションに関わっている人たちが宿泊事業にこぞってひかれている理由って、どんなところにあるのでしょうか?

五ノ井 リビタの場合は、リノベーションによる場の継承だけでなく、シェア型賃貸住宅事業を10年間やっているので、その流れが今の宿泊事業につながっていますね。シェアって単にモノや空間をシェアするだけじゃないんです。アイデアやライフスタイルといったものをシェアすることで、今まで自分にはなかった価値観を知ることができたり、新しいチャンレジが生まれたりする。そういったシェア型賃貸住宅で使ったノウハウや概念をホテルで使い、限られた住民同士だけじゃなく、旅行者という多種多様な人が混ざり合う場を作りたいんです。「交流を仕掛ける」と言ったら、言葉が適切かどうかわかりませんが……。

石井 なるほど。リビタさんの場合は、中古物件を一棟丸ごとリノベーションしたりしていますが、そのときもコミュニティーだったり、物件を購入した後の暮らしを考えながら作っていますよね。これまでに手がけてきたシェアプレイスって、何棟あるんでしたっけ?

北島 15棟、合計997室あります。

石井 ほぼ1000室ですね。シェアプレイスの一棟あたりの規模ってどれくらいなんですか?

五ノ井 50室前後が多いのですが、30室もあれば、140室くらいのものまであります。

このホテルに泊まると人生変わるかも、という期待感

石井 かなり大きいですよね。その中で培ってきたノウハウは、今回のHATCHiにはどれくらい生かされていますか?

北島 ハードだけでなく、ソフトにおいてより生かされていますね。結局、シェアプレイスの入居者さんが求めているものって、コミュニティーであったり、人生が変わるようなきっかけや出会いなんです。築年数や駅近かどうか、という不動産の価値ではなく、そこでの出会いがシェアプレイスの価値なんです。だから、ホテルでも単純な設備や機能だけでくくれない、付加価値をどう作るのか、ということをすごく考えています。

石井 このホテルに泊まると人生変わっちゃうかも、という期待感がホテルの価値になる……。

五ノ井 私、地方に行くことが多いんですけど、ビジネスホテルとかに泊まると、どこにいっても同じなんですよね。せっかく地方に行ったのに、ホテルはその土地とは全然関係ない。どこの街にあってもおかしくないホテルばかりです。でも、せっかく地方に行ったら、その土地のことを知ったり、新しい出会いが欲しいじゃないですか。だから、この事業を通して、出会いがあるようなホテルを作れたらいいなとは思っています。

北島 ワークショップなど、いろいろできますよね。たとえば、金沢には「おくりいえ」という取り組みをしている人たちがいて。町家が壊されたりするとき、掃除を手伝うと残った家具や小物を持って行けるという、いわばお掃除イベントなんです。そうすると家主もラクだし、モノが欲しい人はタダでもらえます。さらに愛着がわいて、買い手、借り手が出てくるというものなんです。

石井 一種の「おくり人」の家バージョンってことですね。

北島 そうです。そういうイベントがあるときに、連帯してホテルのお客さんに紹介してあげたりすれば、世界が広がるかもしれない。このホテルでターゲットにしているのは、先ほどお話ししたようなシェアプレイスの入居者さんたちのような感性を持っている人だから、ローカルな人と交流することに価値を見出してくれると思うんですよね。

石井 そうでしょうね。

北島 だから、街づくりのローカリストとホテルがタッグを組んで、一種の体験観光もできるかなと思っています。そういうソフト部分での取り組みもいろいろ仕込んでいるところです。

新しい発見や出会い、気づき、WOW!が必要

石井 ところで、ホテルのスタッフって制服がみんな違うんですね?

五ノ井 はい、実はスタイリストさんを入れているんです。制服はそれぞれの人に似合うものをスタイリストさんに見立ててもらい貸与しています。個性が違えば、似合う服も違うので。中には、眼鏡と髪形を変えて大変身した人もいます。(笑)

石井 すごいですね。

五ノ井 ホテルに関わるメンバーは、「地域ならではの魅力を、価値を転換する5センスをもって、徹底的に掛け合わせる」という目標を掲げています。5センスというのは、ボーダーレス、バランス、シンパシー、サスティナブル、そしてワオ……。

石井 ワオ?

五ノ井 WOW!のワオです。シンパシーで共感してもらっても、新しい発見や出会い、気づきがないとだめです。「ワオ!」も1回で終わりじゃなく、何度もワオが続かないといけません。

北島 結局のところ、ホテルって目的じゃなくて、手段なんですよね。表現手段がたまたまホテルだったというところがあります。

石井 ホテルという場で繰り広げられる人とのつながりとか、そこから結果的に生まれてくるデザインやアートディレクションの世界観ってありますね。これからビジネスが大きくなれば、いろんな人たちが参入しやすくなるでしょうね。今じゃ、中古マンションを買ってリノベーションをするなんて当たり前になりましたが、昔は「中古は煮ても焼いても中古」って言われていて、住宅ローンさえおりなかったんだから。でもちゃんとやっている人が増えると、徐々にみんなの価値観が変わってくる。リビタさんが宿泊事業を計画的にやっていくことで、今までのチェーン系ビジネスホテルとはひと味違う、新しいスタイルのホテルが増えてくるでしょうね。

北島 そうなるといいですね。

石井 今までうまく使えなかった中古物件が再生できて、町並みが変わって行くことだってあるかもしれない。今後の展開も楽しみにしています。

北島 五ノ井 ありがとうございます!

(構成 宇佐美里圭・写真 篠塚ようこ)

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PROFILE

石井健(いしい・たけし)

1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から600件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。

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