リノベーション・スタイル

<127>一人でも「毎日きちんと作って食べる」ための部屋

  • 文 石井健
  • 2016年6月15日

部屋全体にトーンの異なるブルー

  • 部屋全体にトーンの異なるブルー

  • テレビボードは福岡の広松木工のもの

  • 「巴里の空の下オムレツのにおいは流れる」の初版。カウンターでは友人たちをもてなす

  • 配管にも物を掛けられるようリモコンを低めに設置。機能と用途。見せる収納としまう収納がいさぎよい

  • WICから回遊でできるBEDROOM。リビングからの光がアイアンサッシを通して差し込む。シャンデリアはトートボーンチェのもの

  • 青と合わせるように、床の色と無機質なコンクリートの分量を細かく計画

 [O邸]
 Oさん(男性、30代)
 東京都中野区 築44年/40.48m²/総工費 730万円

    ◇

 最近の住宅事情の傾向のひとつとして、都心でコンパクトな部屋が増えているということが挙げられます。地価の上昇と立地優先の結果、新築でも50平米程度の3LDKというような物件が増えているのです。

 今回ご紹介するのも、そんな部屋のひとつ。Oさんは30代前半の独身男性で、実家から出て都内で暮らす部屋を探していました。もともとていねいな暮らしをしていた方で、一人暮らしをしても、「毎日きちんと作って食べる」という食を中心にした暮らしを望んでいました。

 見つけたのは都内の40平米の中古マンション。40平米というのは、ワンルームにするとわりと広々と暮らせますが、部屋を細かく分けると少し窮屈な感じがする大きさです。ただ、Oさんの希望は、キッチンを充実させてリビングにはソファを置き、収納スペースを作りつつ、寝室は別にしたいということでした。これらをすべてかなえると同時に、より広く感じられるにはどうしたらいいのか……。そこからプランを練ることが始まりました。

 最終的に落ち着いたのは、5.2畳のダイニングキッチンと4.5畳のリビングを中心とし、一方の壁に水まわりを集め、もう一方の壁にウォークインクローゼットと寝室を置いたプランです。40平米でこれだけの要素を詰め込んだので、どうしても何かは我慢しないといけません。そこで、今回はダイニングを思い切ってなくすことにしました。その代わりキッチンをⅡ型にして、幅45mmほどのバーカウンターを付けることに。お皿を置いても余裕があり、バルの一人呑みカウンターのような感じで落ち着いて食事ができます。

 ウォークインクローゼットと寝室は一体型です。二つの空間を区切る壁は天井までつながっていないので、遮断されつつも広さを感じられます。引き戸を開ければ通風も確保でき、湿気を防ぐことができます。ウォークインクローゼットへは玄関から入り、そのまま寝室へ抜けられる動線になっています。スペースの都合で洗濯機をクローゼットの近くに持ってきましたが、かえって使い勝手がよくなりました。寝室はコンパクトですが、ダブルベッドを置いても十分に歩けるスペースがあり、リビング側の壁に窓を付けたので、採光と通風もあります。

 玄関は、室内ドアまでタイルをはることによって、細長い土間空間のように使えるようにしました。自転車もここの壁にかけられます。

 全体のカラーリングは、躯体(くたい)の状態がよかったのでそのままトーンを生かしながら、青をキーカラーに。コンロの壁のタイル、キッチン内側のタイル、引き戸などは全部青ですが、どれも微妙にニュアンスを変えリズムをつけています。

 40平米という限られた広さですが、プライバシーの確保と部屋の広さの体感が両立できる空間が完成しました。このような間取りは汎用(はんよう)性があり、将来的に貸すことになっても、おそらく誰にでも受け入れられやすいでしょう。

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PROFILE

石井健(いしい・たけし)

1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から600件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。

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