このパンがすごい!

歯ざわりの「ボケと突っ込み」が絶妙な人気者 / なんばグーテ&アトリエグーテ

  • 文・写真 池田浩明
  • 2016年8月30日

【なんばグーテ】ブロッチェンチーズ(手前)とブロッチェンゴマ

写真:【アトリエグーテ】プレミアムには焼き印が押される
【アトリエグーテ】プレミアムには焼き印が押される

写真:【アトリエグーテ】山型食パン「アトリエ」
【アトリエグーテ】山型食パン「アトリエ」

写真:【アトリエグーテ】和あん食パン(右)と山型食パン「アトリエ」。店内のカウンターでトーストとコーヒーを楽しめる。
【アトリエグーテ】和あん食パン(右)と山型食パン「アトリエ」。店内のカウンターでトーストとコーヒーを楽しめる。

写真:【アトリエグーテ】外観
【アトリエグーテ】外観

写真:ブロッチェンチーズを使ったホットドッグ。ソーセージにザワークラウト、粒マスタード。生地の食感とチーズの香りがおもしろい彩りを添える
ブロッチェンチーズを使ったホットドッグ。ソーセージにザワークラウト、粒マスタード。生地の食感とチーズの香りがおもしろい彩りを添える

写真:ブロッチェンごまを使った「パンヲカタル」の浅香正和さん作のサンドイッチ。ごまの風味と焼豚とキャロットラペの相性が◎
ブロッチェンごまを使った「パンヲカタル」の浅香正和さん作のサンドイッチ。ごまの風味と焼豚とキャロットラペの相性が◎

写真:【なんばグーテ】チーズフォンデュ。もはやパンの領域を超えお総菜
【なんばグーテ】チーズフォンデュ。もはやパンの領域を超えお総菜

写真:【なんばグーテ】クリームパン。バナナ型は試行錯誤の末行き着いた、お客さんにいちばん受けのいい形だとか
【なんばグーテ】クリームパン。バナナ型は試行錯誤の末行き着いた、お客さんにいちばん受けのいい形だとか

写真:【なんばグーテ】外観
【なんばグーテ】外観

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なんばグーテ/アトリエグーテ(大阪)

 大阪ミナミの中心、なんばの地下街。せっかちな大阪人が足早に行き交う中、かなりの確率でなんばグーテに客が吸い込まれていく。

 この店には、大阪で50年以上も親しまれてきたパンがある。ブロッチェンという。大阪の老舗「エーワンベーカリー」を代表するパンで、なんばグーテでも1日に500~800個も売れる。一人で5個10個まとめ買いする姿も珍しくない。なにがそんなに人を虜(とりこ)にするのか。

 噛(か)むことがよろこびになる。小ぶりで細身、口の中にちょうど収まる形。噛むとぽわんと沈む。沈んではみたものの意外に粘り強くなかなか噛み切れない。と思った瞬間ぱーんとあっさりちぎれる。と言いつつ、もぐもぐとした噛みごたえはやっぱりつづく。周囲に焼き付けられたチーズの香ばしさが口の中で消えると、自然にパンも溶けている。

 「笑いとは緊張と緩和である」と、かの明石家さんまも喝破したように、このパンは、噛むという緊張とちぎれるという緩和のタイミングを命とする。笑都・大阪にふさわしいことに。

 ブロッチェンとはドイツ語で「小さなパン」を意味する。エーワンベーカリーの創業者がドイツのレストランで出たパンに感動したことが出発点。そこから、大阪の人たちの食文化に合わせるべく改良を重ねたのが現在の姿だ。朝食に、あるいは小腹が空(す)いたときに。キッチンの戸棚から、あるいはカバンやポケットの中からむしゃむしゃ取り出して食べる。しっかり食事をとりたいなら、歯切れがいいのでサンドイッチにもうってつけだ。ゴマやチーズといったフレーバーと具材の相性を考えるのも楽しい。

 いま、ブロッチェンの材料が、この夏とれたばかりの熊本の新麦になっている。小麦の収穫を祝う気持ち、熊本地震からの復興を祈る気持ちが込められて。この日常的なパンをかじるたびに、思いが熊本の小麦畑へと通じていくならば、すてきなことだ。

 同じ地下街に系列のアトリエグーテがある。1本1000円の食パン「プレミアムプラス」が話題になっている食パン専門店。山型食パン「アトリエ」も熊本新麦に切り替わっている。

 併設のカウンターでトーストとコーヒーを楽しんだ。アトリエ、そしてこの生地を使った和あん食パンの2種。まずはアトリエにかりっとかじりつく。ちょっとだけもちっと抵抗してくるけれど、本気になって歯に力をこめればいともたやすく歯切れる。作り手のたくらみを感じさせる、ボケと突っ込み的な間合い。味わいが徐々に広がり、甘い汁が口の中で溜まったところで、ごくりと飲み込むと、甘さが喉(のど)を滑り落ちていく。

「歯切れ、食感、喉ごし。試行錯誤を繰り返してできあがりました。邪魔するものがない、さっぱりした味。気泡を大きめにして口溶けよく、バターも滲(し)みやすい」とアトリエグーテの大島裕さんは言う。

 次なるお楽しみは、アトリエの生地にあんこを巻きこんだ和あん食パン。トーストしているのに中がしっとりしている。ふにゃっとして、だらーっと溶ける感じ。焼けた皮の香ばしさ、ミルキーな口溶けとあんこの甘さが融合する幸福のトライアングル。

 さらに、添えられたバターをここに塗りこむ。バターとあんこの組み合わせはまさに核融合。豆の味わいをバターのオイリーさがまったりとさせ、さらに光り輝かせていた。

>>「このパンがすごい!」でご紹介した店舗マップはこちら

なんばグーテ
大阪市中央区難波2 なんばウォーク1番街内北通り
06・6213・2088
8時~21時

アトリエ グーテ
大阪市中央区難波1 なんばウォーク2番街内
06・6224・0107
10時~22時

PROFILE

池田浩明(いけだ・ひろあき)

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

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