リノベーション・スタイル

<135>リノベマンションから、リノベ戸建てに住み替える

  • 文 石井健
  • 2016年10月5日

 [aestates]
 Hさん
 横浜市 築30年/91.08m²

 これまでは中古マンションのリノベーションを見てきましたが、今回から3回は「戸建て編」として戸建てのリノベーション事例をご紹介します。

    ◇

 戸建てに住みたいという人にはいろいろな理由がありますが、まず一つには「土地を持ちたい」ということが挙げられるでしょう。日本において「土地神話」は根強く、土地の値段は安定していると思っている方はたくさんいらっしゃいます。ただ、それは地域や条件によって違いますので、一概には正しいとも間違っているとも言えません。

 たとえば地価が高い都市部では、同じお金を払うなら戸建てよりもマンションの方がいい条件の家に住めますし、地価が安い地方や郊外なら戸建ての方がいい場合もあります。また、日本は建て売りがほとんどですので、建設コストがあまりかからない木造なら、戸建ての方が安くすむときもあります。都市部でも駅から遠いなどの立地条件によって価格は変わります。土地を所有する資産性は場所や条件によって違うのです。また、戸建てを望むもう一つの大きな理由は「家庭=一軒家」という暮らしのイメージが強いということもあるでしょう。

 そういった様々な理由で戸建てを選び、中古物件をリノベーションすることになったとき、マンションとは違った点に留意する必要があります。

 たとえば、戸建てはほとんどが木造ですので、間仕切りがそのまま構造壁になっています。マンションの場合はRC造なので、中を丸ごと変えられることが多いのですが、戸建ては好き勝手に間取りを変えられないことがよくあります。「この壁を10センチ動かしたい」と思っても、その下には基礎がありすべてが一緒についてくるのです。そういった意味で戸建てのリノベーションは制限が多いのです。

 ただし、構造さえ許せば、屋根を開けてトップライトを造ったり、玄関の位置を変えたり、窓を増やしたり、減築して中庭を造ったり、耐震、耐熱などの基本性能を上げたりと、大きな改修も可能です。もちろん手を加えれば加えただけ出費もかさみますが……。

 ちなみに、マンションは修繕積み立て費があるから、戸建ての方が得という人がいますが、それは間違いです。戸建てでも当然メンテナンスは必要で、それは自分で管理しないといけないだけのこと。逆に言えば、マンションは第三者の目でそれなりに管理されていますが、戸建ての場合は家主次第。家主が何もしなければなんのメンテナンスもされていません。戸建ての中古物件は建物ごとの差が激しいのです。ですから、ホームインスペクションなどを積極的に活用し、専門家と相談した上でリノベーションを進めることが必要になります。

 ちょっと前置きが長くなりましたが、戸建て編1回目にご紹介するのはHさん一家のケースです。実は、連載第77回でご紹介したご夫婦のお宅です。お二人は結婚してすぐに中古マンションを買い、リノベーションをして住んでいましたが、その後お子さんが生まれ3人暮らしに。2人目のお子さんが生まれるといよいよ部屋が手狭になり、「そろそろ広い一軒家に」とのことで住み替えをすることになりました。

 それまで住んでいた中古マンションはしっかりとリノベーションをしていたため、結果的に平均的な相場よりも高く売れ、住み替えのときには手元に戻ってくるほど。賢い選択をされました。

 新しく見つけた家はもともと住んでいたマンションの近くで、広さは100平米以上。工事の前にホームインスペクションをしたところ雨漏りが見つかったため、すべて売り主さんに直してもらいました。

 Aさん夫妻は2回目のリノベーションなので慣れたものです。何をやりたいのかわかっていらっしゃるので、お金を使うところは使い、節約するところは節約、というメリハリのあるリノベーションができました。

 たとえば、2階建てのこの家で手を入れたのは家族が過ごす1階が中心です。リビングや水回りなどは大幅に変えていますが、2階の寝室や子ども部屋はある程度割り切っています。インナーサッシを入れ、クロスを張り替えて色を塗って終わり。フローリングはそのままです。戸建ての場合はこういうメリハリを付けられるのがメリットですね。

 家全体の世界観は以前住んでいた部屋と同じです。たとえば、アイアンの装飾はまったく同じ物を玄関と廊下の間に使い、ハンモックもつるせるようにしています。テレビ周りの棚は以前のマンションとほとんど同じです。

 新しく加わったのは、廊下とリビングの間の壁に使ったブロンズのサッシや腰壁、ヘリンボーンのフローリングやキッチンのれんがタイルです。ただ、キッチン自体はコストと機能優先でシンプルに造っています。

 Hさんご夫婦は最初のマンションの買い方が上手だったので、戸建てに住み替えるのも経済的にスムーズでした。とても模範的なケースですね。もう1回くらいリノベーションをしたいなんておっしゃっていましたが(笑)、お子さん達が独立したあとに、またすてきな家を建てられるのかもしれませんね。

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PROFILE

石井健(いしい・たけし)

1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から600件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。また「賃貸アパート改修さくらアパートメント」(東京・経堂)で2014年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)、『MUJI 家について話そう』(部分監修)、『リノベーションでかなえる、自分らしい暮らしとインテリア LIFE in TOKYO』(監修)。
ブルースタジオへのリノベーションのご相談は、隔月開催のセミナーや、個別相談で承っています。

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