このパンがすごい!

素材と素材のハーモニー 胃や食道にまで訴えかけるカレーパン / コンセントマーケット

  • 文・写真 池田浩明
  • 2016年11月15日

たっぷり野菜とチキンのスパイシーカレー

写真:たっぷり野菜とチキンのスパイシーカレー断面 たっぷり野菜とチキンのスパイシーカレー断面

写真:たっぷり野菜のマスタードビネガーソースサンド たっぷり野菜のマスタードビネガーソースサンド

写真:栗のデニッシュ 栗のデニッシュ

写真:レンズ豆のワイン煮込みとチキンのチャバタサンド レンズ豆のワイン煮込みとチキンのチャバタサンド

写真:中に足を踏み入れると、あふれるパンと活気に満ちたオープンキッチン 中に足を踏み入れると、あふれるパンと活気に満ちたオープンキッチン

写真:外観 外観

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コンセントマーケット(兵庫県)

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かぼちゃのクリームパンもグッとくる

 扉を開けた瞬間、活気が押し寄せてくる。オープンキッチンから声をそろえた「いらっしゃいませ」、音楽のビート、棚にあふれるようにのったパン。欲望を刺激する眺めだ。サンドイッチからは青々と葉野菜があふれかえり、肉がべろーんとはみだしている。濃厚な焼き色のデニッシュにごろごろとのせられた栗。プライスカードには、しらすのオイル漬け、ドライのチェリートマト、地元・日本盛の酒粕(さけかす)といった、そそるワードが頻発。手当たり次第トレイにのせたい気持ちを抑えるため、「冷静になれ」と自分に言い聞かせなくてはならない。

 たっぷり野菜とチキンのスパイシーカレーパン。黄土色のパンに開いた小窓からチラ見せされたフィリングとたなびくスパイスの香りが誘っていた。迷わず購入、近くの公園で矢も盾もたまらずかぶりつく。いきなりのサプライズ。鶏肉のかたまり、おおぶりなナスがごろっと潜んでいる、その破壊力。食感ぐさり、肉汁ナス汁があふれ出る。カレーはスパイシーなトマトソースというイメージ。トマトその他野菜の旨味(うまみ)と香りあふれ、そこに肉汁ナス汁があふれ出るものだから、口の中で混ざりあい、響きあって悶絶(もんぜつ)。一方、じわじわぴりぴりとスパイシーにもなってくる。胸が熱くなる。感動したからだけではない。スパイシーさが胃や食道に熱く訴えかけていたからなのだ。

 「生地にスパイスを入れています。黄色はターメリック、それからガラムマサラ。基本、うちはなるべくシンプルに…カレーパンはやりすぎかな(笑)」と岩井直人シェフ。

 あふれるサービス精神とおいしさへの追求が具材とギミックてんこもりのカレーパンを生みだした。でも、シンプルであること、それは矛盾しない。トマトと肉、そのほかの野菜。調味料を重ねるのではなく、素材と素材の合わさったハーモニーが呼ぶおいしさだからだ。

 たっぷり野菜のマスタードビネガーソースサンドもまさにそう。パンからもりもりとはみ出すレタス。ジャングルに突撃する決意でかぶりつく。そこに待ち受けるのは、ブリーチーズとアボカドのぐにゃぐにゃワールド。オイリーにミルキーにさわやかに、というめくるめく混ざりあいの快楽。さらに、その底からロースハムという見えざるボスキャラまで襲いかかる、まるで有為転変のRPG。マスタードビネガーソースからは酸味とともに意外にもしょうゆのまろやかな香り。それが旨味を増し、国産小麦を使ったバゲットのやさしい風味とも相性を見せる。

 このバゲット。国産小麦に加え、ハンドリングのいい外国産小麦もブレンドし、風味と食べやすさを両立させている。味の決め手は石臼挽きの春よ恋。やさしい甘さの中にフレーバーの揺らぎを演出し、具材を引き立たせていると思った。

 それにしても、レタスがぱりぱりとして、風味が生き生きとしていることは印象的だった。「野菜は、近くにある国産にこだわった八百屋さんで買ってます。レタスは必ず冷水につけてぱりっとさせたり。そんな小さいことの積み重ねがおいしさになるんです」

 レンズ豆のワイン煮込みとチキンのチャバタサンド。チャバタの皮に惚(ほ)れた。乾いていて、かしかしとした感触で心地よく割れる。ローストされたレンコンがさくさく音を立てる。レンズ豆からは土っぽい滋味とともに、芳醇(ほうじゅん)な白ワインの香りがあふれ、それがチキンのソースとなる。ぐさっ。頼もしい感触とともに鶏肉が割れ、ぶりんとふるえ、ローズマリーとともに肉味を湧き立たせる。チャバタからあふれだすオリーブ感は具材全体を包みこむ。

 1個のパンにこれだけの満足感。客が引きも切らないのもうなずける。興奮とにぎわいは、まさにマーケット。食材に出会い、気前よく盛られたごちそうをいただく。いつかどこか外国の市場を訪れたときの幸福感にその体験は似ていた。

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■コンセントマーケット
兵庫県西宮市寿町5−15
0798-23-0707
8:30~19:00(月曜火曜休み)
http://concent-market.com/

PROFILE

池田浩明(いけだ・ひろあき)

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

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