東京の台所

<133>入院で“美腸生活”にチェンジ

  • 文・写真 大平一枝
  • 2016年12月7日

〈住人プロフィール〉
 ジュエリーデザイナー(女性)・40歳
 戸建て・3LDK・東急東横線 学芸大学駅(目黒区)
 入居9年・築13年
 夫(会社員・42歳)との2人暮らし

    ◇

 九州の大学で知りあった夫と上京して18年、結婚13年目だ。鹿児島の彼の実家から地鶏の刺し身が届くと、友だちを呼んで家でパーティーをする。料理はもともと好きだが、この家に越して少し変わった。

「前の住人が料理教室を開いていたそうで、部屋に対して台所がすごく広くて収納も豊富なんです。疲れて作りたくないなって思っている日でも、ここに立つと作りたくなるんですよね」

 ものを外に出しておくのが嫌いな質(たち)。さらに掃除好きも手伝って、全長3メートル78センチの特注サイズの台所がさらにすっきり広く見える。今朝のメニューは、セロリとタマネギのトマトスープだ。

「飲みすぎた翌朝はこのスープでリセットします。食物繊維がたっぷりで腸の調子が良くなるので」

 飼っているダルメシアンのおやつも医者のアドバイスで、キャベツに変えた。大人もそれに合わせて野菜中心の生活に。

 彼女が今一番心がけていることは、腸と心を健康に保つ、ということだ。

「きっかけは盲腸を悪化させて入院したことなんです。そこで腸の調子が良くないとわかった。1カ月点滴で過ごしたら体がリセットされたのです。長い間悩んでいた、原因不明の肌荒れも良くなった。ああ、食生活を見なおさなきゃと痛感しました」

 ただし、食生活に制限をかけるのは続かないと思った。おいしいものは食べたい。いろいろ約束事を作りすぎるといつかストレスになる。健康法は、第一に長続きするものでなければならないと考えていた。

「腸を整えるための色んな本を読んでいるうちに、食べるものを考えるより、出すことを考えることのほうが大事じゃないかなって気づいたんです。飲みすぎたり食べすぎたりした翌日は、お通じの良いメニューでデトックスする。あとは運動ですね」

 朝夕あわせて犬の散歩で3時間歩く。血行が良くなったため、肩こりがなくなり、二日酔いもしなくなったと言う。「ジムに入ると、行かなくちゃという、それもまたストレスになったりしますよね。犬と暮らすと、自然に体を動かすことができていいですよ」

 休日は、犬連れでキャンプに行く。

「ホテルより気を使わないのでキャンプに行き始めたのですが、夫も私もハマってしまって。朝起きたときの景色、ゆっくり作る朝ご飯、夜の星。夫もふだんは23時頃の帰宅なので、キャンプ場でのゆっくりした時間がとても心地いいみたいです」

 足し算ではないのだなあと思う。飲み過ぎたから薬やサプリを買うのではない。疲れたから豪華なホテルに泊まるのでもない。運動をしたいからジムに入会するのでもない。

 心身が健やかでいられるヒントは、けっこうシンプルでささやかな営みの中にたくさんある。

 わかってはいるけれど、日頃実感しにくいあたりまえのことを、きちんと教わった気がした。明るく広々、すっきりして無駄なものがない台所は、そのまま彼女の今の心身をあらわしているようだ。

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PROFILE

大平一枝(おおだいら・かずえ)

長野県生まれ。大量生産、大量消費の社会からこぼれ落ちるもの・こと・価値観をテーマに各誌紙に執筆。著書に『東京の台所』『ジャンク・スタイル』『もう、ビニール傘は買わない。』(平凡社)、『信州おばあちゃんのおいしいお茶うけ』『紙さまの話~紙とヒトをつなぐひそやかな物語』(誠文堂新光社)、『日々の散歩で見つかる山もりのしあわせ』(交通新聞社)、『日曜日のアイデア帖~ちょっと昔の暮らしで楽しむ12か月』(ワニブックス)、『昭和ことば辞典』『かみさま』(ポプラ社)ほか多数。HP「暮らしの柄」 ■レンズ協力:SIGMA ART|18-35mm F1.8 DC HSM、SIGMA 17-70mm F2.8-4 DC MACRO HSM

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