幸せは「1割の不満」のなかにある

  • 対談 作家・重松清×ライター・大平一枝 (上)
  • 2013年1月10日
写真 山本倫子

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  • 写真 山本倫子 撮影協力 つゆくさ(世田谷・下北沢)

重松:アサヒ・コム時代から読ませていただいていた「小さな家の生活日記」という連載は何年になるんですか。

大平:11年です。コーポラティブハウスを建てた経験をまとめて『自分たちでマンションを建ててみた。』という本を出した次の年、2001年に始まりました。

重松:ということはもう、500回くらいってこと? 連載が始まった時点では、お子さんはいくつといくつでした?

大平:その時は娘が2歳と息子が6歳ですね。毎週書くというのも、10年を超えて書くというのも初めてのことでした。

保育園で、壁に向かって話していた息子

重松:この10年の連載中で、いちばん変わったことって何でしょう?

大平:かつては編プロで月刊誌の記事を書いたりもしていたんですが、子どもができてしょうがなくフリーになったんです。すると、おもしろいほど仕事が来るので、なんでもかんでも受けちゃって。あるとき、保育士さんに呼び止められたんです。

「○○くんってお父さんお母さんの話をするとき、壁向いちゃうんです」

早く伝えたいと思っていたけど、いつも朝はポンとおいて走っていっちゃって、帰りに引き取るときもパッと走って行っちゃっうので、なかなか声をかけられなかった、と。

 二十歳そこそこの保育士さんに言われたことに、私はまったく気づいてなくて。お金はいっぱい稼げても、子どもはしゃべれなくなるし、夫婦の会話も無くなるし、よく考えたら私、全然幸せじゃないなと思ったんです。

重松:へえー、そうですか。

大平:ちょうどそのころ、取材で重松さんにお会いしてるんです。そのとき、重松さんはこうおっしゃって。「俺、18歳の時に山口から東京に出てきたんだよ。ふと気づいたら、娘ももうその年頃に近づいていて、子どもと過ごせる時間ってそんなにないんだよね」って。それを聞いて、育児と仕事に追われて永遠に終わりが見えないと思っていた日々にも終わりが来るんだって気づかされたんです。いや、終わるどころか、ものすごく近いところにゴールがあるんだと知って、もうたまらなく一日が大切だと思いはじめました。

重松:子育てと仕事の関係って、おそらく読者の人たちもみんな悩みながら読んでいると思うけど、何がいちばんきつかったですか?

大平:仕事の選び方がわからないということでしょうか。要するにお金なのか、時間なのか。独立したてのフリーライターなんて、自分に求められているものなんてないじゃないですか。それでも、仕事が来るときは来る。山のように。だけど、子どもを犠牲にしていいのかって。犠牲という言葉は嫌いなのですが、子どもとの時間をお金に換えているんじゃないか、という思いが心の隅っこによぎる。それが苦しかったです。

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PROFILE

大平一枝(おおだいら・かずえ)

長野県生まれ。ライター。生活やライフスタイルををはじめ、人物ルポなども執筆。著書に『ジャンク・スタイル』『もう、ビニール傘は買わない。』(平凡社)、『日曜日のアイデア帖〜ちょっと昔の暮らしで楽しむ12か月』(ワニブックス)、『かみさま』(ポプラ社)、『スピリッツ・オブ・ジャンク・スタイル』『ジャンク・スタイル・キッチン』(風土社)ほか多数。共著に『母弁』(主婦と生活社)、『ジャンク・ウエア』(平凡社)など。 ホームぺージ「暮らしの柄」

PROFILE

重松清(しげまつ・きよし)

作家。1963年生まれ。著書に『ナイフ』(坪田譲治文学賞)、『エイジ』(山本周五郎賞)、『ビタミンF』(直木賞)、『十字架』(吉川英治文学賞)のほか、『流星ワゴン』『その日のまえに』『峠うどん物語』『空より高く』など多数。鋭い批評眼とやわらかな筆致で幅広いテーマを描き分け、家族や子どもをモチーフにした作品に定評がある。

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