
「高雄には、台北の女の子が泊まってみたいホテルがある」
そう聞いて向かったのは、漢來大飯店(グランド・ハイライ・ホテル)。台湾でもここにしかない、限定デザインの「漢來ハローキティ・ルーム」があるのです。
キティちゃんの客室に宿泊したゲストは、エグゼクティブフロアの宿泊客専用のラウンジで、特別な朝食が用意されます。キャラクターが刺繍された非売品のマットの上には、ハローキティを描いた目玉焼きやホットサンド。いちごのムースもキティちゃんの顔型。プレートやカップ、グラスも、ソルト&ペッパーまでキティちゃん一色です。「キティちゃんはりんごが好きだから、ジュースはアップル」と言われ、完璧なキャラクター設定に思わず脱力……。
連日満室、海外からも訪れるというこの客室。子ども向けかと思いきや、宿泊するのはほとんどが30代、40代の女性同士またはカップルとか。なにしろ、さまざまな特典がパッケージになっているのです。内容は時期によって変わりますが、このときはハローキティ・デザインの自転車のレンタルが含まれていました。
その自転車でまさにこぎだそうとしていたのは、香港から来た30代前半の女子ふたり組。ボーイフレンドと別れた記念に泊まりにきた、と笑います。
「ハローキティは香港でも大人気。日本のキャラクターはほんとに可愛いわ。こんな客室をサプライズで予約してくれる恋人がいたら、最高ね」
台湾では、恋人の誕生日のお祝いやプロポーズのために予約する男性が多いそうです。我らが日本男児にはかなりの勇気がいりそうですが、「台湾のオトコも香港のオトコも、全然平気よ」と彼女たちは言います。そこに、ちょっとした大陸気質を感じたのでした。
キティちゃんを満喫した夜は、観光名所の「高雄市六合観光夜市」をふらつくことに。約380mの道の両側に170軒ほどの屋台がにぎにぎしく並んでいるなかを、ためつすがめつしてガチョウの専門店に入り、どんぶりを注文しました。
まさに頬張ろうというそのとき、背後から日本語が聞こえてきました。「わぁグロテスク。私、あんなの食べられないわぁ」。振り返ると、胸にバッジをつけて、ポシェットをななめがけしたおばちゃんが立っています。
「ひとりですごいわね。屋台は汚いわよ。お腹には気をつけてね」
丁寧に処理されたガチョウの肉は、私の目から見ると清潔そのもの。注文が入るごとに、炊飯器からほかほかのご飯をどんぶりによそい、ネギやしょうがで風味を加えたガチョウの油と、醤油ベースでちょっと甘口の特製タレをかけ回し、まずご飯とタレをよくなじませます。
ご飯ひと粒ひと粒に油とタレがよく絡み、てらてらとしたご飯だけでも食欲をそそるったらありません。それにジューシーなガチョウ肉のスライスとシャキシャキの野菜のつけあわせをのせ、全部を一気にごちゃ混ぜにして食べるのが、正しい食べ方だそうです。
屋台の店先には、首を落とし、羽をむしられた後、ゆでたり揚げたりされたガチョウが並んでいます。地元の人々は一羽まるごと持ち帰り、それぞれの家庭で食べるのでしょう。
私は、「屋台は汚いわよ」と言ったおばちゃんの言葉を思い出し、ざらつく思いを抱えながら、ちょっと冷えてしまったどんぶりをかき回しました。ハイエンドなレストランも、人々の暮らしがにじむ屋台も楽しめる性質でよかった。そう、ひとりほくそ笑んだのでした。
■ステイ 漢來大飯店
「漢來ハローキティ・ルーム」は、スイートを含めて3室。全540室・45階建ての大型高層ホテルにはエグゼクティブ・フロアもあり、ビジネス利用も多い。高雄で最大級の漢神デパートを併設していて、ショッピングにも便利です。

旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化を体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案する。趣味は、旅や食にまつわる本を集めることと民族衣装によるコスプレ。「江藤詩文の世界ゆるり鉄道旅」をmsn産経に連載中。
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