シネマ・アミーゴ館長の長島源さん
シネマ・アミーゴは、海岸沿いの大通りから1本、裏に位置している
上映予定の看板は黒板だ
シネマ・アミーゴの店内。映画の上映時には奥にスクリーンが出る
この日のランチは「豆乳ときのこのクリームソースペンネ」(右)と、「チキンとクリームチーズのサンドウィッチ」の2種類。どちらもサラダと季節のおそうざい付きで1200円
その日のランチと上映ラインナップは、入り口の黒板で
地図
シネマ・アミーゴ館長の長島源さん逗子海岸沿いの道路から1本裏手に入ったところに、映画館「シネマ・アミーゴ」はある。といっても、いわゆる通常の上映館ではない。建物は閑静な住宅街にある一軒家で、正しくは「映画を観ながら食事ができるシネマ・カフェ」である。
通り沿いの壁に貼られたラインナップ表には、2月の上映として『眠れぬ夜の仕事図鑑』(オーストリア)、『ベイビーズ いのちのちから』(仏)、『ペンギン夫婦の作りかた』(日本)といった、単館系カルチャームービーのタイトルが並んでいる。カレンダーには、青森県六カ所村の核燃料再処理施設をめぐるドキュメンタリー映画を上映して、核の問題を語りあうイベントの告知もある。
シネマ・アミーゴの業態を一言で表すのは難しい。映画の上映は毎日4〜5回で、正午から15時まではランチタイム。ランチは「アミーゴ・キッチン」と名付けられたチームが日替わりで、オリジナリティあふれるメニューを展開する。親密でくつろいだ空気が流れる20席ほどの館内は、友人の家のリビングルームのよう。最終上映が終わったら、バータイムの始まりだ。
映画館であり、心地よいカフェ&バーであり、社会問題を共有する場でもあり――そのあり方に、従来の仕事観や商業主義に対するオルタナティブへのメッセージが込められている。
シネマ・アミーゴは、館長の長島源さん(34)が、カメラマンの志津野雷さん、内装デザイナーの出口英介さんと3人で2009年にオープンさせた。
「地元育ちの仲間が集まって、自分たちの空間がほしいよね、と作った場所なんです。僕はミュージシャンなので、音楽+イベントカフェの形も考えたんですが、すでにやり尽くされている。だったら映画カフェがいいんじゃないか、って。それなら、『地の人、地のもの、地の食』という、僕たちが大事にしていることも伝えやすいと思って」
一軒家は1階がシネマ・カフェで、2階が写真と内装のオフィスも兼ねたギャラリーサロンになっている。3人の活動に合わせて映画部門、写真部門、内装部門があり、そこに食部門であるアミーゴ・キッチンが加わって、それぞれが独立した立場で運営に関わる。
運営は株式会社ではなく、LLC(=Limited Liability Company)という有限責任会社の形にした。「株式会社は株主の利益が優先されるけど、LLCなら、みんなが社長で、かつ社員という意識が持てる」からだ。
「飲食のチームも、僕たちが雇っているのではなく、売り上げから一定のパーセンテージを店に収めてもらう。その代わりに、彼らは共有のキッチンとシネマ・アミーゴの看板を使って、1人では受けられなかった大人数のケータリングができるようになる。ここでは、従来の会社のような『上司』と『部下』という関係を消して、関わる人たちが各自で裁量権と責任を持てるようにしたいんです」
仕事とは、生き方と不可分のものだ。
20世紀、高度経済成長の時代には、「企業社会」という枠組みの中で、会社に就職し、給料をもらって「安定する」ことが、多くの日本人にとってスタンダードな生き方と目された。しかし、21世紀になって、その企業社会が変質し、個人の時間と引き換えに保証された「雇用」は崩れ始めている。その流れで、不安をあおる論調も世の中に広がっている。
でも、と、ここで視点を変えてみる。今、進んでいる企業社会の変質は、個人が本来持っていた時間や自由を取り戻すチャンスなのではないか。そのヒントがちりばめられているのが、葉山というエリアだ。
長島さんの言葉からは、巷で紹介されるような「湘南のおしゃれな隠れ家スポット」を超えた、「次世代の思想」が伝わってくる。(つづく>>)

ジャーナリスト。1960年、東京都生まれ。東京女子大学卒。英国留学、出版社勤務を経て、91年にフリー。先端を行く各界の人物インタビューとともに、時代の価値観や感覚、ライフスタイルの変化をとらえる記事を「AERA」「朝日新聞」「日経ビジネスオンライン」などに執筆。著書に『新・都市論 TOKYO』『新・ムラ論 TOKYO』(隈研吾と共著・集英社新書)、『ほんものの日本人』(日経BP社)など。「『葉山から、はじまる。』取材者だより」はこちらから。
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