太陽のまちから

「空き家」「空き室」はまちの資産

  • 文 保坂展人
  • 2013年2月26日

 日本の空き家は「757万戸」と聞いて驚くのは私だけではないでしょう。総務省の住宅・土地統計調査(2008年)の数字です。住宅総数は5759万戸。ということは、空き家が13%を超えているのです。

 世田谷区内の空き家は3万5千とされ、集合住宅の空室が多いのですが、それでも一戸建の住宅が6200軒を数えます。崩壊寸前のものから、築年数が浅くてすぐに使えるもの、手を入れれば再生できるものまで、さまざまです。

 私が「再生可能な空き家」の活用に目覚めたのは、2年前に区長に就任してまもなくのことでした。

 原発事故から避難してきた方々の落ち着き先を探すため、区民から「空き家・空き室」の提供を求めることにしました。災害救助法によって認められる「応急仮設住宅」の家賃は「7万5千円以下」。家族で住もうとしたら十分な広さをまかなえる額とは言えません。にもかかわらず、市場価格を下回ってでも提供したいという家主さんが次々と手を挙げて、60軒近くを提供してくださいました。

 もうひとつ、区民から「土地・建物」の寄付の申し出が少なくないことも知りました。自分が生涯を終えたら、長くお世話になってきた区に寄贈したい。家や部屋を「公共的・公益的」な形で生かしてほしい。そう感じている人がいることを心強く思いました。

 空き室が増えている一方で、空き室を利用したいというニーズもあります。起業したり、介護福祉や地域コミュニティに根ざしたソーシャルビジネスやNPO等を立ち上げたりしたいけれども場所を確保できない、という人たちです。

 そこで、再生可能な空き家・空き室とマッチングすることはできないかと考えるようになりました。昨春、「空き家研究会」が立ち上がり、30代の若い世代が中心となって研究と交流を重ねています。また、お母さんがひとりで住んでいる一軒家の2階に、女性たちが起業した非営利企業による「子育て広場」をつくろうという動きもあります。

 世田谷区は昨年1年間で人口が5400人増え、空き家率は全国でもっとも低い地域のひとつです。空き家の活用をめぐる総合相談をはじめるとともに、空き家活用のモデルケースに対する初期費用の助成を進めていくつもりです。そのほか、不動産業界などの協力もえて、持ち主と借り手のマッチングの仕組みを考えていきます。

 これから事例を積み重ねていけば、地域からまちをつくりかえることにつながるのではないか。そう考えて、少々わくわくしているところです。

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PROFILE

保坂展人(ほさか・のぶと)

1955年、宮城県仙台市生まれ。世田谷区長。高校進学時の内申書をめぐり、16年間の「内申書裁判」をたたかう。教育ジャーナリストを経て、1996年より2009年まで衆議院議員を3期11年(03〜05年除く)務める。2011年4月より現職。『闘う区長』(集英社新書)ほか著書多数。


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