太陽のまちから

カオスのまち・下北沢の変わらぬ魅力

  • 文 保坂展人
  • 2013年4月2日

写真:下北沢駅近くの踏切は、最終電車まで大勢の人が集まり、地上を走る電車をカメラにおさめていた=23日未明、世田谷区北沢下北沢駅近くの踏切は、最終電車まで大勢の人が集まり、地上を走る電車をカメラにおさめていた=23日未明、世田谷区北沢

 3月23日午前0時40分ごろ。

 小田急線の最終電車が踏切を通過すると、下北沢駅付近の両側で待っていた約2千人の人々が、2度と閉まることのない踏切の中央で手と手をあげてハイタッチしながら歓声をあげていました。

<さよなら踏切、ようこそシモチカ>

 そうボードに書かれた文字が、この日の若者たちや、青春をこの地で刻んだ多くの人たちの気分を語っているかのようでした。

 代々木上原から梅ケ丘にいたる約2.2キロメートルの小田急線が地下化されたことにより、9カ所あった踏切はなくなりました。このニュースはテレビでも大きく取り上げられ、やはり東急東横線の地下化で注目された渋谷に匹敵するくらいのインパクトがありました。

 小田急線の連続立体交差事業に関連する工事は地下化の後も続きます。これから、かなりの期間、駅周辺は「工事中」になる予定です。私は、2年前に区長に就任して以来、下北沢を中心とした線路跡地に「緑の充実と防災の機能強化」を実現できるように、と構想を練ってきました。

 店舗等の商業施設や住宅、駐輪場、駐車場など、すでに計画されていたプランを受け止めながら、2.2キロの線路跡地を「ひとつながり」で歩けるような道、災害や事故などの緊急時以外は車の走らないゆったりとした歩行空間にしたいと考えています。

 ニューヨークでは、撤去が決まっていた貨物線の高架線路が住民の声を受けて保存され、「ハイライン」と名づけられて人々がたたずんだり、歩いたりできる空間に生まれ変わったことを、建築家や街づくりに関心のある友人から教えられました。いつか行ってみたいと思っていますが、小田急線の線路跡地の利用を考える上でも大きな示唆を受けています。

 住宅過密都市では、広がりのある空間、ひとつながりで、ゆっくり歩くことができる道は貴重な資産です。新しい下北沢の中心軸として徒歩空間が生命線となり、周辺にこれまで以上にアーティストが活躍出来るようなゾーンが広がっていくことも、ハイライン同様に期待できます。

 線路跡地の中心のひとつとなる下北沢では、駅前広場や道路が計画されています。街が集積してきた魅力を生かした空間として生まれ変わり、新たな人の流れと文化発信が始まる――。そんな物語を引き寄せたいと模索しているところです。

 下北沢というまちの魅力は、街全体が雑居混在型の奥深いカオスであるところにあります。この地から個性的なフアッションが生まれ、演劇や映画、音楽等の多くのアーティストが巣立っていったことはよく知られているところです。

 私も20歳前後の頃によく通いました。古本屋で本を漁り、ジャズ喫茶でひとときを過ごし、安い酒場で果てしない議論をしました。この先、どう生きていいかわからなかった頃に、人生を選ぶのに躊躇している者に、この街はやさしかったのです。

 そんなモラトリアムの時期を終えた私は仕事を選び、ジャーナリストになって全国を駆け回り、また政治家になって日々タイトなスケジュールに耐えてきました。いつやら、目的もなく街を歩く優雅な体験は遠い過去のものとなっていましたが、区長に就任して以来、下北沢を歩く機会が増えています。そのたびに発見があり、ギスギスしていない包摂の街としての魅力を感じるのです。

 日本全国の観光地などの魅力を伝える「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」(改訂第3版)にも、世田谷区では唯一、下北沢が1つ星で登場しています。1950年代から60年代のパリ・サンジェルマンに近い雰囲気があり、街のあちこちにアーティストがいるような魅力がある、と紹介されています。

 こうした街に潜在する魅力は、一朝一夕にできるものではなく、時代が移り変わったとしてもずっと大切にしていきたいものです。

  ◇

 4月9日に、下北沢のライブハウス「風知空知」で、「下北沢から発信するアートルネッサンス」と題するイベントを行なうことになりました。私のツイッター開始3周年もかねています。ゲストに演出家の坂手洋二さん(下北沢で上演し好評だった「カウラの班長」を演出)、シンガソングライターの宍戸留美さんらを招いて、世田谷・下北沢からの文化発信を語るひとときにしたいと思います。詳しくはこちらへ。

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PROFILE

保坂展人(ほさか・のぶと)

1955年、宮城県仙台市生まれ。世田谷区長。高校進学時の内申書をめぐり、16年間の「内申書裁判」をたたかう。教育ジャーナリストを経て、1996年より2009年まで衆議院議員を3期11年(03〜05年除く)務める。2011年4月より現職。『闘う区長』(集英社新書)ほか著書多数。

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