リノベーション・スタイル

<13> 円形の書斎、台形の寝室、そして…

  • 石井健
  • 2013年4月10日
[SHAPES](東京都渋谷区)Uさんご夫妻 夫(43歳)、妻(38歳)/築30年/72.5m²/工事費1300万円

  • [SHAPES](東京都渋谷区)Uさんご夫妻 夫(43歳)、妻(38歳)/築30年/72.5m²/工事費1300万円

  • 存在感のある円形の書斎。大きなニッチは読書スペースに

  • 玄関から中へ入る廊下の壁はかなりの傾斜。壁の反対側は寝室だ

  • キッチンは手元が隠れる高さの壁を設置。すっきりと見える

  • ニッチはギャラリースペースに。壁の上部には本を収納

  • ひと続きのサニタリースペース。ポップな色がアクセントに

  • 間取り図

 部屋は四角くで、壁は垂直じゃないといけないのか。そんなことに疑問を持ち、固定観念を取り払った空間を作ってみたい、と以前から思っていました。

 Uさんご夫婦は、県立美術館でキュレーターをなさっているご主人と美大卒の奥様。アートコレクションを飾れる部屋にしたいという相談を受け、昔から温めていたアイディアを提案しました。

 考えていたのは、部屋を空間ごとに区切っていくのではなく、空間の中に箱を置いていくというもの。丸、三角、四角の彫刻が配置された土地を散策するイメージです。そこでふと、書斎を円形にしたらどうだろうかとひらめきました。

 それによってできた裏のスペースで本を読んだり、ニッチや廊下をギャラリーにできるんじゃないか。もちろん、そういった空間が苦手な方もいるので、従来通りに空間を区切ったプランも用意しました。すると、おふたりは一目で最初の案を気に入ってくれたんです。

 寸法がシビアなので、担当者がけっこう苦労していましたね。必要な通路幅、何をどれくらい収納するかを決めたクローゼット、寝室に置く家具……。実際にあちこちの寸法をはかって線を引いていくと、最終的に円形の書斎、台形の寝室とウォークインクローゼット、四角いサニタリーが出現しました。

 廊下は玄関から室内に向かうところが一番狭くなっています。でも、天井に向かって広くなるように壁に傾斜をつけたので、圧迫感がありません。いったん狭くなった廊下が途中で広くなり、リビングにつながるので、視線の先にある空間への期待感がふくらみます。廊下を歩くだけで物語性があるんです。

 円形書斎は、直径2.5m。本棚に囲まれた空間にデスクがふたつ並び、心地よいこもり感があります。天井が空いていて入り口のドアがなく、小さな窓もあるので、中にいても外の気配が伝わってきます。

 ギャラリーのようにコレクションを飾るため、壁の色は白が基本ですが、裏側で色をたくさん使っています。書斎のカーペットやニッチの壁、お風呂のタイル、トイレの壁、クローゼットの壁紙……。ぱっと見の印象は白ですが、実はあちこちに色が点在していて、それが反射したところに淡い色合いの空間ができるんです。“裏側のカラーリング”が裏テーマでした。

 大胆なデザインであるからこそ、空間の配置、壁の傾斜、カラーリングなど、かなり細かく調整しました。(談)

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PROFILE

石井健(いしい・たけし)

1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から500件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)

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