東京の台所

<13>超きれい好き、16歳年上夫と

  • 文・写真 大平一枝
  • 2013年4月17日
  

〈住人プロフィール〉
 美容ライター、27歳。
分譲マンション・3LDK・JR山の手線 目白駅(豊島区)
入居1年・築年数6年・夫(会社員)と2人暮らし

    ◇

 新婚ということで勝手に小さなコーポを想像して行ったら、部屋にたどり着くまでにオートロックのゲートが二つあるような高級マンションだった。受付には、コンシェルジュの女性がふたりいた。

 聞けば、夫は商社勤めで16歳上。駆け出し美容ライターの彼女とともに初婚である。

「結婚するとき、年齢のことは躊躇(ちゅうちょ)しました。私が80歳の時はきっとこの世にいないんだろうなあとか。でも、この先、彼以上に結婚したいと思える人は現れないんじゃないかなって思って。相手が若くても、亡くなったら悲しみの深さは同じ。人間、いつ死ぬかなんかわからないし。だったら、まいっかーと」

 マンションは彼がもともと住んでいたものだ。お酒が飲めない代わりに甘いもの好きで、夕食後はふたりで必ず、ほうじ茶と甘いものを食べる。

「私、きんつばって、彼が買ってきて初めて実物を見ました。ああ、これがきんつばかーって。名前だけは知っていたんですが。彼にお菓子係をまかせると、どら焼きや羊羹(ようかん)を買ってくるんです。ジェネレーションギャップを感じると言えば、そんなところですかねえ。でもそういう甘いもの、私も好きなんです」

 それ以外に年齢差を感じることはあまりないらしい。デザートまで入れると、毎日1時間はふたりで会話をしながら食事を楽しむ。大学を卒業してから2年で結婚したので、家事や料理は新米です、と謙遜する。

「彼が超のつくきれい好きで。一生懸命掃除をしても、シンクが汚れているとか、ほらホコリがあるでしょ?って言うんです。結婚直後はだいたいシンクのことで喧嘩(けんか)していましたね。『黒カビが生えやすいんだから水回りはきれいにしなくちゃだめだよ』『いいえ、私は掃除しました!』ってすぐ言い合いに」

 ライター仕事は駆け出しなので、ほとんど家にいる。おかげで、彼の帰宅後、喧嘩にならないようにすみずみまで掃除をする癖がついた。まな板とコップは週に1回漂白。流し台の上には物を置きっぱなしにしない。ものを持ちすぎず必要最低限で。

 彼は幼い頃から有機野菜や添加物のない自然食品で育ってきたので、彼女が買ってきたものについてもうるさい。

「まず、スーパーで売っている物は信用しない人なんです。原材料名や原産地も必ずチェックします」

 新婚だからだろうか。聞きようによっては難しそうなお相手だが、それを苦にする様子が少しもない。その理由を、シャイな住人から最後にやっと聞き出すことができて合点がいった。

「私が仕事でパニックになっても、そんなの普通の話ですよ、と平常心でうけとめてくれる。社会人歴が長い分、たよれるというか、なにがあっても慌てたり激しく怒ったりしない。彼と暮らすようになって私も気持ちがフラットでいられるようになり、ちょっとは大人になれたかなあって思います」

 無条件に相手を尊敬する気持ちがひたひたと伝わってきて、かわいいお嫁さんだなと素直に思った。

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PROFILE

大平一枝(おおだいら・かずえ)

長野県生まれ。ライター。生活やライフスタイルををはじめ、人物ルポなども執筆。著書に『ジャンク・スタイル』『もう、ビニール傘は買わない。』(平凡社)、『日曜日のアイデア帖〜ちょっと昔の暮らしで楽しむ12か月』(ワニブックス)、『かみさま』(ポプラ社)、『スピリッツ・オブ・ジャンク・スタイル』『ジャンク・スタイル・キッチン』(風土社)ほか多数。共著に『母弁』(主婦と生活社)、『ジャンク・ウエア』(平凡社)など。 ホームぺージ「暮らしの柄」

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