太陽のまちから

待機児童ゼロへ 定員増だけでは……

  • 文 保坂展人
  • 2013年4月23日

写真:こどもたちの未来を閉ざすことのないように。取り組みは続いている。(提供:世田谷区)こどもたちの未来を閉ざすことのないように。取り組みは続いている。(提供:世田谷区)

 「全国の保育所の待機児童をゼロにする」

 安倍晋三首相は19日、保育所の定員を2017年度までに40万人増やす「待機児童解消加速化プラン」を打ち出しました。認可外保育所への多様な支援や保育士の処遇改善などについては評価したいと思います。

 昨年12月下旬、私はある数字を見て、大変なことになったと感じました。

<認可保育所申込者 4986人>

 4429人だった前年に比べて、一気に550人も増加していたのです。

 世田谷区では昨年、待機児童が786人と、過去最多を記録しました。深刻な状況を受けて、160人分の定員増をはかり、さらに区内の施設を総点検して保育施設への転用を進めてきたにもかかかわらず、認可保育所への申込者がこれほど増えていることに驚きました。

 年末の仕事納め直前でしたが、私はすぐに会議を招集しました。

「このままだと、待機児童は1千人を超える規模になるだろう。来春(2013年4月)に向けて、緊急に300人分の保育枠を増やしてほしい。さらに、整備する保育園の数を上積みしてほしい」

 こうして、2013年度に300人分の定員を追加すること、14年度には200人分を上積みして1千人まで枠を広げることを決めました。さらに、緊急対策として、2年間で保育サービスの定員を1300人まで増やすことにしました。

 とはいえ、あくまで緊急対策であり、待機児童の解消には至らないことは認識しています。それに定員枠を増やすというだけでは、生命と未来を預かる「保育の質」を保つことはできません。そのことを十分に自覚しながら、改善を図っていこうと思っています。

 07年、世田谷区で保育サービスを受けられる定員は約8700人でした。6年後のいま約12800人、約1.5倍に増やしました。でも、認可保育園への申込者はそれを上回る勢いで増え、需要に追いついていないのです。

 保育園の整備の現状と予想される待機児童について、担当する「子ども部」と話しているなかで、私は、住民基本台帳の人口が増えていることに目を止めました。

 2012年の1年間に、世田谷区では人口が5400人増えました。このうち0歳から5歳までの「乳幼児」は949人。当然ですが、このなかには、「これから転入してくる乳幼児」の数は含まれていません。そうした潜在的な需要も視野に入れて対策をとっておくべきでした。

 じつは、世田谷区では、めずらしいことに子育て世代の人口増が顕著なのです。乳幼児を育てながら第2子を産むケースも多く、一時は「0・7」台まで低下していた合計特殊出生率が近く「1」を回復しそうな勢いです。

 日本全体が少子高齢化による「人口減少社会」に入っているなか、世田谷区では、大人も子どもも人口が増えている。これはきわめて特別なありようだということを自覚したいと思います。

 より多くの人に住みたいと思ってもらえるということは喜びですが、いまのままでは、世田谷で子育てしてよかった、と思ってもらえなくなってしまう恐れがあります。

 子どもが生まれてこない社会に未来はありません。どんなに厳しく、また難しくても踏ん張りどころだと思います。子育てがしやすいまちへ、保育園だけでなく、預かり保育等の在宅子育て支援などで勝負をかけたいと考えています。

 近く、最新の「待機児童数」が発表になります。このテーマは次回さらに掘り下げたいと思います。

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PROFILE

保坂展人(ほさか・のぶと)

1955年、宮城県仙台市生まれ。世田谷区長。高校進学時の内申書をめぐり、16年間の「内申書裁判」をたたかう。教育ジャーナリストを経て、1996年より2009年まで衆議院議員を3期11年(03〜05年除く)務める。2011年4月より現職。『闘う区長』(集英社新書)ほか著書多数。

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