太陽のまちから

4時間半のナマ討論 住民がつくるまちへ

  • 文 保坂展人
  • 2013年5月13日

 東日本大震災・大津波に襲われた3・11から2年あまり、日本の社会は「アベノミクス」「円安・円高」一色に塗り替えられたかのようです。あのとき、「過去の延長に未来はない」ことが明らかになったはずでした。にもかかわらず、原発事故の真相は不明のまま、再稼働が語られ、輸出までされようとしています。

 事故で立ち止まったはずの「経済成長」重視路線が知らぬ間に勢いを取り戻しているようです。検証されるべきことを置き去りにしたまま、なし崩しに現状を追認するという「思考停止」の罠に陥ってはいないでしょうか。

 5月12日、私が世田谷区で取り組んできた政策を検証する公開ミーティング(後援会主催)を開きました。区長選挙のときに掲げた「基本政策」のうち、この2年間で何ができ、何ができていないのかを項目別にチェックしようという試みです。

 たとえば、そのひとつに「情報公開・住民参加」があります。この2年間に「33回の記者会見」「区のお知らせ・ホームページのリニューアル」によって情報発信を強めたほか、「区長へのメール」の受け付け、「50回を超える車座集会や意見交換会、ワークショップ」の開催を通じて、区民の声に耳を傾けようと務めてきました。

 私自身は区長としての仕事でフル回転しているつもりですが、それでも「いったいどのように動いているのか見えない」といった声も聞こえてきます。ジャーナリスト時代からの習性で、「エネルギーシフト(電力自由化)」や「保育待機児問題」など、焦点を定めたテーマを深掘りしていく「1点集中主義」を得意としていることと無縁ではないかもしれません。そのためもあって、「高齢者介護」「医療」といった重要なテーマがツイッターなどではあまり取り上げられていない、といった指摘を受けてきました。

 そこで、徹底的に住民のみなさんと向き合い、政策について語り合ってみようと考えたのです。そのため、ミーティングの副題を「ともに政策をつくる中間報告会」としました。

 政治家の報告会といえば、最大で90分というのが相場です。そのうち、本人の報告は長くても30分程度。関係者の挨拶などがが続き、会場からは2〜3人が発言して終了というのが、ある種のパターンです。

 しかし、今回は定石の3倍、270分の時間をとることにしました。

 人口が減少し、それにともなう自治体の財布も小さくなるなかで、行政の果たせる役割にはおのずと限りがあります。自治体のトップはひとり、職員のマンパワーも減少傾向にあります。そのため、市民の力を借り、市民と力を合わせて問題に取り組まなければ、よりよい「まち」をつくっていくのは難しい。

 市民も、これまでのように行政にまかせたままで文句をいう「おまかせ民主主義」から脱し、みずからまちづくりに関わり、共有認識を持って仕事や役割も引き受ける「参加型民主主義」へと転換することが求められている。だからこそ、じっくりと向き合う場が重要だと考えたのです。

 ミーティングで、私は「世田谷からのエネルギーシフト」や「被災地支援」をはじめ、「保育園待機児問題」や「中高校生の声」「若者支援」「空き家・空き室活用」など八つのテーマについて10分ずつ説明し、参加者から意見や質問を受けてやりとりを繰り返しました。私の報告が計80分、質疑や議論に計120分を費やし、発言した市民も30人ほどにのぼりました。

 そのなかで、参加者から一方的な行政批判や個人的要望はほとんど出ませんでした。むしろ、「こうしたらどうか」という提案型の意見が多く飛び出したのが印象的でした。

「アメリカの民主主義はタウンミィーティングでつくられる、と聞いた。この場はまさにタウンミィーティングで、『民主主義の現場』だと思った」

 最後にでた参加者の発言に、時間をかけて議論を熟成させていくことの大切さを改めて感じました。

 これからの日々を担っていく主人公は住民の方々です。それだけに、行政と市民が議論を交わし、ともに解決策を探り、考えていく場を持ち続けていきたいと考えています。「参加型民主主義」によるまちづくりはどこまで可能なのか。私たちの実験はまだ始まったばかりです。

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PROFILE

保坂展人(ほさか・のぶと)

1955年、宮城県仙台市生まれ。世田谷区長。高校進学時の内申書をめぐり、16年間の「内申書裁判」をたたかう。教育ジャーナリストを経て、1996年より2009年まで衆議院議員を3期11年(03〜05年除く)務める。2011年4月より現職。『闘う区長』(集英社新書)ほか著書多数。


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