太陽のまちから

「屋根」と「友達」が自然エネルギーのカギ

  • 文 保坂展人
  • 2013年6月4日

写真:世田谷区と交流のある自治体世田谷区と交流のある自治体

 自然エネルギーの活用を広げていくにはどうしたらいいか。机上の空論ではなく、地に足の着いた取り組みを進めるうえで、私は二つのポイントを掲げています。ひとつは「地産地消」、もうひとつは「地域間連携」です。

 地産地消といっても、88万の人口を抱える世田谷区には空き地が少なく、メガソーラーや大型の風車などを設置することは現実的ではありません。ただ、視点を変えれば、見える風景も変わってきます。空から世田谷を眺めると、屋根が連綿と続いているのです。

 一つ一つの屋根は小さくても、世田谷の屋根をひとつのスペースと見なせば、「発電所」の役割が果たせるのではないか。そう考え、太陽光パネルの設置を後押しする制度を始めました。屋根とエネルギーを合わせて「ヤネルギー」。世田谷サービス公社が住民からの希望を募りながら「一括大量発注」することで価格を抑え、太陽光パネルの普及を加速させる仕組みです。

 標準モデル(3.4キロワット)で122万5千円のところ、国から11万9千円、東京都から34万円の補助金を受けられることもあり、世田谷区内では実質負担額が76万6千円。これまでの価格を大幅に引き下げることができました。

 昨夏に募集をはじめたところ、問い合わせが2千件、見積もり希望が600件にのぼりました。ただ単に「脱原発」と口にするだけでなく、具体的に自然エネルギーへの転換を図るにはどうしたらいいのか。そんな思いを持つ人々に、ひとつの解決策と映ったのかも知れません。

 ただ、実際に設置を検討してみると、家屋の強度が不十分だったり、屋根の向きや隣接するマンションなどの影響で日当たりが悪かったりするため断念せざるをえない人も少なくありませんでした。結果として、太陽光パネルを設置できたのは約200軒にとどまりました。

 たとえ、屋根が活用できなくても、自然エネルギーを生みだす道はほかにもあります。世田谷区では、「太陽熱温水器」を設置したり、外断熱やペアガラスなどを採り入れたりする場合に助成金を出す「環境配慮型リノベーション助成制度」を設けています。工事を請け負う地元の工務店の仕事にもつながり、エコリフォームの技術講習会などが開かれるようにもなりました。

 ところで、世田谷区は神奈川県三浦市に約1haの土地を所有しています。そこにはかつて、肥満や気管支喘息など健康上の問題がある児童の健康改善を進めるための施設がありました。その跡地を使って来春にも、年間44万kw(想定)の電力を生む太陽光発電所を稼働させる予定です。

 じつは、この計画を練りながら、気づいたことがありました。世田谷区にあるのは「屋根」や「土地」だけではない。長い年月をへてつくりあげてきた交流自治体とのつながりという財産があるではないか、と。

 毎年夏になると、「せたがやふるさと区民まつり」が馬事公苑で開かれます。2日間で30万人が訪れるイベントでは、世田谷区と交流のある38の自治体がそれぞれ特産物を並べたブースを出し、多くの首長が店頭に立って「売り子」をつとめます。たとえば、宮古島の下地敏彦市長は2年前、2日間で800キロのマンゴーを売ったそうです。

 この期間中には「ふるさと区民まつり首長懇談会」を開き、首長同士の交流も深めています。昨年の会議で、私は「観光」「雇用」のほかに、「自然エネルギー活用」でも日常的に連携していこうと呼びかけました。

 こうした「友達」とのつながりを生かすことが自然エネルギー普及のもうひとつの柱になる、と考えたからです。世田谷区が情報・技術・人材のステーションになり、全国各地に広がる交流自治体と自然エネルギーの事業をつなげていければ、大きなうねりを生みだせるのではないでしょうか。

 たとえば、世田谷区と縁組協定を結んで30年になる群馬県川場村。3・11の原発事故の影響を大きく受けた地域で、川の水を利用した小水力発電プロジェクトを進めようとしているそうです。関清村長は当時から「エネルギー転換を進めていきたい」との意向を示していました。

 そうした試みを知り、私はエネルギー消費地としての世田谷が果たせる役割があるのではないか、と考えました。

「都市の市民が共同で出資して小水力発電所をつくり、生みだした電気をPPS(特定規模電気事業者)に売って資金を循環させるるような仕組みができないだろうか」

 そんな地域間連携の構想をもちかけてみると、関村長は身を乗り出して聞いてくれました。ひとつでも成功例をつくることができれば、さまざまな形で全国の交流自治体との連携が広がり、自然エネルギー普及の突破口になるように思うのです。

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PROFILE

保坂展人(ほさか・のぶと)

1955年、宮城県仙台市生まれ。世田谷区長。高校進学時の内申書をめぐり、16年間の「内申書裁判」をたたかう。教育ジャーナリストを経て、1996年より2009年まで衆議院議員を3期11年(03〜05年除く)務める。2011年4月より現職。『闘う区長』(集英社新書)ほか著書多数。

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