太陽のまちから

「待機児童」解消に立ちはだかる壁

  • 文 保坂展人
  • 2013年6月18日

 連日のように「待機児童問題」で担当課の報告を受け、打開の道を探っています。

「待機児童数」のカウントの仕方が自治体によって相当に違うことは前回のコラムで書いた通りですが、厳しい状況にあることは変わりません。

 世田谷区では来春までに、「1550人」の定員増を打ち出しています。今春の876人と比べれば、ほぼ倍の規模で、目標を実現するためには夏までに全体の見通しをつける必要があります。

 保育園の中でも定員の多い認可保育園をつくるには、1千m²という広大な土地を確保しなければなりません。そのためには、売却が決まっている国家公務員住宅跡地などの国有地を借りることができるかが大きなポイントになります。

 そのひとつとして国に働きかけてきたのが、かつて放送大学東京学習センターがあった世田谷区下馬4丁目の国有地(6753m²)の活用です。このうち、保育所を新設する1500m²の敷地は期限付きで借り、残る5千m²あまりは無償で借りたり、一部を買い取ったりして、隣接する下馬中央公園と一体の都市公園として整備するという計画です。

 財務省関東財務局は18日、この計画を進める方針を決定した、と発表しました。また、世田谷区内にある2カ所の国家公務員宿舎跡地の利用についても検討してくれています。

 ただ、一般的にこうして確保した土地の活用には、さらに巨額の費用がかかります。

 以前、このコラムで書いたように、認可保育園をつくる際、社会福祉法人には手厚い支援があります。国の「安心こども基金」から50%、東京都から25%、さらに区から12.5%、あわせて87.5%もの公費を受けられるのです。認可保育園をつくるには約2億4千万円がかかる。社会福祉法人であれば3千万円の負担で済むのに対して、株式会社だと全額を負担しなければならなくなるのです。

 これが、認可保育園の運営に、株式会社やNPO法人などの参入を考える際に気になる点のひとつです。

 5月27日に、厚生労働省の石井淳子雇用均等・児童家庭局長と面会した際、この施設整備のあり方についてたずねました。すると、来年から始まる新制度の下でも、社会福祉法人に対しての公費補助は継続し、株式会社などには、建物の減価償却費にあたる金額を一定の期間、国が負担する方針である、との答えが返ってきました。

 また、株式会社には倒産による「急な閉園」のリスクがあります。その場合、保育園に残る子どもたちをどうするのか、というのが深刻な問題となります。企業が撤退すれば、世田谷区のような基礎自治体がすべての責任を負うことになるでしょう。しかし、現実には、行政の対応には大きな困難がともなう――と、石井局長にぶつけてみました。

「新しい制度のもとでは、市町村の権限が拡大・強化され、保育園を運営する企業に立入調査をしたり、帳簿類などを提出させたりできるようになります。市町村にはこれまで以上に積極的にチェックをしてもらいたい」

 特に、保育士の勤続年数などは健全な運営ができているかどうかを見極める着目点になるのではないか、と石井局長は話しました。

この「施設整備費の補助」と「事業者に対する審査」の方針については、厚労省に直接確認したことで初めて判明したことです。株式会社やNPOなどの保育事業への参入について、世田谷区としてどのような制度設計ができるのか、時間との競争をしながら検討を重ねています。

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PROFILE

保坂展人(ほさか・のぶと)

1955年、宮城県仙台市生まれ。世田谷区長。高校進学時の内申書をめぐり、16年間の「内申書裁判」をたたかう。教育ジャーナリストを経て、1996年より2009年まで衆議院議員を3期11年(03〜05年除く)務める。2011年4月より現職。『闘う区長』(集英社新書)ほか著書多数。


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