花のない花屋

故野沢尚さんの妻へ 20年前の感謝とともに

  • 写真 椎木俊介
  • 2013年6月27日
  

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〈依頼人プロフィール〉

 林 由美子さん 45歳 女性
 神奈川県在住
 会社員

     ◇

 とても憧れている女性がいます。その方は、今も私の心に強く残る舞台、「恋人たちの短い夜」を書いた脚本家の故野沢尚さんの奥様、野沢由紀子さんです。

 1993年6月、私は当時の恋人とその舞台を観に行きました。彼は高校の同級生で、長い間付き合っていましたが、その頃はちょうど別れ話をしていた時期。お芝居は、元恋人同士がお互いの結婚式の直前に2人の思い出をたどり、最後は幸せな形で別れる、という内容でした。役所広司さん、大竹しのぶさん主演で、それは素晴らしい舞台でした。彼がポロポロと涙をこぼす姿を見たのは後にも先にもこの時だけです。

 この舞台をきっかけに、私たちはもう一度やり直すことになりました。しかし、まるでお芝居の内容をなぞるように正面から向かい合い、ぶつかり合い、その2年後には別々の人生を歩む結果になりました。

 あの舞台から10年あまりたった2004年、野沢尚さんが亡くなったことをニュースで知りました。驚きと悲しみとともにインターネットで検索しているうち、奥様のブログにたどりつきました。そこには、野沢さんが人が手がけたドラマの再放送や進行中だった企画について、さらには今の心境などがつづられていました。

 読みながら胸を突かれるような奥様の無念さに涙したり、「こんな夫婦愛もあるんだ」と深い愛情に切なくなったり……。なにより妻としての真摯な姿勢にただただ感服したのです。あんなふうに家族を支えていけたら。野沢さんの奥様はいつしか、妻となり母となった私の理想となりました。

 今年3月、あの「恋人たちの短い夜」が20年ぶりに東京で再演されました。もちろん私も駆けつけました。ブログ上で何度かやりとりさせていただいた奥様にも初めてお目にかかりました。後日、生前に野沢さんが愛用していたという、「NOZAWA」というネーム入りの特注ペンを送っていただきました。私の宝物です。

 生涯忘れることのできない舞台を書いた脚本家の亡き後も、健気に作品に命を吹き込み続ける奥様。女性としての憧れと尊敬を込めて、野沢由紀子さんにお花をお贈りしたいです。20年前のあの舞台が上演されていた劇場のロビーに飾られていたような、純白の花々を中心にアレンジしていただけるとうれしいです。

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PROFILE

東信(あずま・まこと)

1976年、福岡県生まれ。男3人兄弟の末っ子。2002年、東京・銀座に「ジャルダン・デ・フルール」を開く。05年、パリのセレクトショップでクリスマス・ディスプレーを手がけて評判を呼ぶ。07年以降、ドイツ、イタリア、ベルギーをはじめ国内外で展示会を開く。他業種とのコラボレーション商品の開発にもかかわり、12年からサントリー・ミドリエのクリエイティブ・ディレクターに就任。現在は、東京・南青山に拠点を構える。

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