太陽のまちから

4人家族の幻想 「血縁」に代わるもの

  • 文 保坂展人
  • 2013年7月16日

写真:「家族」の変化を示す図(7月14日付朝日新聞朝刊より)
「家族」の変化を示す図(7月14日付朝日新聞朝刊より)

 1982年に刊行された『日本国憲法』(小学館)は今年、復刊して累計100万部を超えたといいます。日本国憲法の条文を29枚の写真とともに紹介しているのですが、そのなかの印象深い1枚に、裸で露天風呂に入っている4人家族の写真があります。

 当時は、夫婦とこども2人というのが「標準」家庭とされていました。しかし、いまや家族のかたちはすっかり変わってしまっています。

 7月6日から14日まで9日間連続で、世田谷区内でタウンミーティング、対話集会を重ねました。「コミュニティ」をめぐる話題が出ることが多く、私は何度か、こう話しました。

「これから地域で必要となるのは『友達以上、家族未満』というつながり」

 私たちの人生にとって、家族がきわめて重要であることは間違いありません。家族が仲良く、健康で暮らしていけることは何よりの幸せでしょう。ただ、どんなに強いつながりでも、いつかはゆるんだり、ときに断たれたりすることがあります。永遠不変のように思えても、別れは突然やってきます。

 2010年の国勢調査で、1世帯の平均は2.42人。一人暮らし世帯は32.4%と、初めて夫婦と子どもの世帯を上回ったようです。世田谷区でも1世帯平均は1.95人、一人暮らし世帯は49.8%を数えます。65歳以上の高齢者16万3千人のうち、一人暮らしが約4万人、高齢者のみの夫婦が6万4千人で、子どもや孫とともに暮らす高齢者は少数となっているのです。

 7月14日付朝日新聞は、「変わる現実に向きあえ」という見出しをつけて、社説で政治家の家族観を取り上げていました。

〈「家族で」支えあうことは大切だ。だが、家族の力が弱っているときに、支えあうのが日本の美風だからと説いても仕方がない。いま必要なのは「家族を」支えることだ〉

 家族の力が弱っているのに、家族の力に頼る仕組みが続いていることが問題だ、と指摘しています。

 いまや「標準」と呼べるモデルはなく、シングルマザーやDINKSをはじめ、現実には多様な暮らしのかたちがあります。家族と離れて住んでいる人に、行政や国が「家族の価値」を何度となく強調しても、その言葉が届くことはない、と私も思います。

 私が出席した、「子育て・教育」をテーマにした集会では、30代半ばの女性がこう語っていました。

「『保育園が足りない』という皆さんの悩みを聞いてうらやましい。私は派遣だし、彼は最近失業したし、生きていくのが精一杯。この生活を抜け出さない限り、子どもを産むこともできないと思うと、目の前が真っ暗になります」

 子どもを産みたい、育てたいのに、いまの長いトンネルのような生活では、その先にあるはずの出口がまるで見えないというのです。

 一人暮らしをしている中高年も、病気と闘ったり介護を必要としたりしている妻や夫を持つ高齢者のみの世帯も、仕事を探しているシングルマザーも、派遣で仕事を転々としている若者もみな、地域社会に生きています。

 そして、「家族」という血縁でつながっていなくても、地域の中に生まれた、新しい「地縁」によって支え合っている人たちはいるのです。

 世田谷区の「空き家・空き室活用」の試みもそのきっかけを提供したいと考えたものです。使われていない家や、使われていない部屋を外部に開放することでコミュニティの結び目となる場が生まれています。

 こうした場所に、地域にさまざまなかたちで住む人たちが集まり、夕食を共にすることでくつろいだひとときを過ごし、顔色が悪ければ健康状態を気づかい、世代の差を超えておしゃべりを楽しむ……。さきに「友達以上、家族未満」と呼んだのは、こんな関係をさしています。

 家族は大切です。その価値をいささかも否定するつもりはありません。けれども、子育てにしても、生活保護にしても、高齢者の介護にしても、財政難などの理由で十分なセーフティネットが準備できていないなか、その「穴」を埋める役割を家族にだけ求めるとしたら、それは政治の怠慢というものでしょう。

 少子高齢化が進む日本では、「血縁に限らない社会のつながりで、家族の機能を補う仕組み」を生み出すことこそ、政治が取り組むべき最大のテーマではないでしょうか。

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PROFILE

保坂展人(ほさか・のぶと)

1955年、宮城県仙台市生まれ。世田谷区長。高校進学時の内申書をめぐり、16年間の「内申書裁判」をたたかう。教育ジャーナリストを経て、1996年より2009年まで衆議院議員を3期11年(03〜05年除く)務める。2011年4月より現職。『闘う区長』(集英社新書)ほか著書多数。

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