突然ですが、ドリアンはお好きですか?
“キング・オブ・フルーツ”と讃えられる一方、ホテルや公共交通機関などからは、「持ち込み禁止」とこぞって閉め出しをくらう、かわいそうな王様。
以前試したときには、食べられないほどではなかったけれど、やみつきにもなりませんでした。「マンゴーや女王様(=マンゴスチン)のほうが好み」と判決を下し、「大人になればわかる」とか「3回食べればハマる」とか言われながら、その存在を忘れかけていたのです。
あれから早幾年。なり過ぎたくらい、じゅうぶん大人になったいま、思いがけず、3度目の機会がやってきました。それも道路脇の露店。強烈な日射しの下、立ち食いで……
露店に立ち寄ると、ドリアンがブランド別に仕分けされています。この店で扱うのは3種類。ブランデーのように香りがいい「XO」、もっとも出回っている「D24」、そして最高品質の「猫山王」。
ドリアンといえば、強いニオイが特徴です。硫黄の温泉でゆでた卵と、夏祭りのわたあめを混ぜたような、あの独特のニオイ。ところが猫山王は、それほど気になりません。熟れ過ぎた南国系フルーツの香りの奥に、ちょっと発酵臭がしました。
果肉はねっとりと密度が濃く、いかにも栄養豊富そう。つまりカロリーが高そう。“森のバター”といわれるアボカドを、さらに水分を減らしてまったりさせたような、重たい舌触り。のどの奥から戻ってくる発酵の香りが、醸造系の密造酒を思わせる禁断の味。
ドリアンの味がわかる年ごろになったということでしょうか。3度目にして、まんまととりこになったのでした。
そして、もうひとつハマったのが、「クエ・ラピス」というマレーの伝統菓子です。餅米由来のもちもちした食感が楽しく、和菓子に通じる繊細さもありながら、ココナッツミルクがエスニックなフレーバー。黒砂糖にも似たパームシュガーが、やさしい甘さを加えています。
どこの国でも、“女性はスイーツが好き”というのは、定説なのでしょうか。色とりどりのスカーフをひらひらさせながら、女子が集まってにぎやかに笑い、カラフルなスイーツを食べている。その風景は、とてもマレーシアらしく、美しいものでした。
そもそも、マレーシアの人たちは「スダ・マカン?(もうごはん食べた?)」が挨拶代わりになるほど、食べることが好きなのだとか。
自然がもたらす恵みのフルーツと、技巧を凝らしたかわいいスイーツが街中にあふれています。カフェや屋台など、場所を問わないので、いつでもおやつにありつけるのです。
お酒については、正直なところ、イスラムの国ゆえ、旅行者向けのレストランでも品揃えはイマイチだし、値段も高い。屋台では、お酒を置いていないことがほとんどです。人なつこいマレー女子と、おしゃべりに興じながら、お酒ぬきでフルーツ・ジュースなんて飲んでいると、体内から浄化されるよう……。
これから日本は、中東との間で、人の行き来が増えると予想されています。これまで、あまりなじみのなかったイスラム文化に、今後は触れる機会も増えるでしょう。
マレーシアって、イスラム文化の入り口を学ぶのにぴったりかも。
髪をスカーフで覆い、流行のファッションをまとったマレー女子の素朴な笑顔を見ながら、ふと思いました。

旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化を体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案する。趣味は、旅や食にまつわる本を集めることと民族衣装によるコスプレ。「江藤詩文の世界ゆるり鉄道旅」をmsn産経に連載中。
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