子どもの頃に囲まれて過ごした素材にインスパイアされ誕生したFog Linen。シンプルでクラシック、そして長持ちするリネン製品を提供する、オーナーの関根由美子さんに話を訊(き)く。
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――まずは関根さんのバックグラウンドから聞かせてください。
自分の会社を立ち上げることになるなんて思ってもいませんでした。大学生の頃の夢は、幸せな主婦になることでしたから。でも小さなかわいいカフェが併設された家庭用品店で働き出してから、少しずつ考えが変わりました。当時は大学に行くよりもカフェで料理をすることのほうが多くて、お店のマーチャンダイジングのお手伝いもさせていただきました。それが雑貨ビジネスに興味を持つようになったきっかけです。
でも大学卒業後の2年間は家具会社に勤め、フィリピンに家具製造やギフトフェアを見に行ったり、ヨーロッパのファニチャーデザインフェアに足を運んだりしました。
退職後は半年ほど、小さな洋書専門店に勤めました。とても小さなお店でお客さんを引き付けるアイデアが必要だったので、大型書店とは違った、洋書の古書を仕入れるのはどうかと提案しました。でも買い付けのために渡航費は出せないと言われたので、自腹で海外へ飛ぶことにしました。30万円ほどの貯金を使ってニューヨーク行きのチケットを取り、いろんな古本屋を回りました。おかげさまで、日本へ持って帰った古書は飛ぶように売れましたよ。それからは、ポートランド、ボストン、シアトルといった街へ買い付けに行くようになりました。次第に重い本の山を持ち運ぶことに疲れちゃいましたけど。スーツケースも重さでしょっちゅう壊れちゃうんですよ。
そして、サンフランシスコでメキシコ製のワイヤーバスケットを取り扱う人と出会い、輸入することにしました。このバスケットは売れ行き好調で、今でも取り扱っています。それから私の仕事は古書から雑貨輸入へとシフトしていきました。そのほうが楽でしたしね。実際に海外まで買い付けに行かなくても、ファックスで仕入れることができますから。雑貨の卸売業を拡大させて、アイテムも増やしていきました。その頃、叔母が友人とリトアニアで和食店を始めたんです。
――ちょっと待ってください。どこっておっしゃいました?
リトアニアです。以前、彼女はリトアニアからの交換留学生のホストファミリーをしたことがあったのですが、日本滞在中にリトアニアがソ連から独立したために彼らは帰国できずにいました。その後、数年を日本で過ごしている間に、彼らとリトアニアでの身の振り方について話し合ったそうです。そしてどういうわけか、彼らと和食店を始めることになりました。
リトアニアには興味がありました。でも初めてリトアニアを訪れたとき、生活用品店ではリネン製のタオルすら売っていませんでした。リトアニアでのリネン製品は生活必需品ではなく、どちらかといえば輸出品だったのです。
――リネンの生産国として有名なのに、リトアニアではリネン製品が売られていないのですか?
リネンは輸出がメインですね。リネン製のウェディングドレスはあっても、タオルやエプロンはありませんでした。リネン製品を縫ってくれる女性たちを雇うのはどうかと勧められましたが、彼女たちは日本に輸出した経験がなかったので不安でした。結局、電話帳で調べて10件ほど工場をあたりました。英語がわからないために電話を切られ続け、話しが通じたのは2件だけ。もともと工場から商品を輸入するつもりでしたが、商品どころかサンプルすらないことに気づきました。あるのはリネン生地だけです。なので、こちらでデザインしたものを作ってもらうことにしました。そうやってすべてが始まりました。
――関根さんのアイテムは、ほとんどが100%リネンですよね。なぜリネンに惹かれたのですか?
まだ子どもだった頃、母がよくリネン製のテーブルクロス、ナプキンやピローケースを使っていたので、早くからなじみがありました。でも大学進学のために上京したとき、リネン製品が高価なものだと気づいたんですよ。リトアニアで工場を見つけたとき、自分でデザインして無理なく買えるリネン製品を提供したいと思いました。
――では現在の関根さんに刺激を与えるものを教えてください。
Fog Linenのアイテムを気に入ってくれるお客さんやお店、特にビジネスパートナーのジュリーには刺激を受けますね。彼女はアメリカでFog Linenを広げてくれました。Fog Linenのアイテムを使ってくれる人たちを見るのはうれしいものです。またお客さんからいただくご意見も刺激になりますね。
子どもの頃の思い出。母の趣味であふれた家が好きでした。そして当時、着させてもらった洋服は今でも持っていて、たまにアイテムの参考にしています。
日常。生活に必要なものからアイデアを得ています。
――個人的、もしくはご両親から受け継いだ習慣はありますか?
うちの家族は外国人の友人やお客さんを招くのが好きでした。叔母も外国人の留学生を家に住まわせていましたし。両親は定年退職したフランスの友人と家を貸し合っていましたし、祖母の家にも留学生が住んでいました。基本的に、日本人は他人を住まわせることに慣れていませんが、うちの家族はそれが好きでした。こういった経験が、旅をすることや海外と仕事をすることに役立っているのかもしれませんね。
――Fog Linenのアイテムは時代に流されないものばかりです。最後に、Fog Linenを形成する要素を三つの言葉で教えてください。
Useful(便利)、simple(シンプル)、durable(長く使える)。
(インタビュー・SEAR RICHARDS 写真・PARKER FITZGERALD)
(「KINFOLK」日本版1号より)
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