葉山から、はじまる。

<28>「海の家」 夏の間は「みんなの家」

  • 文 清野由美 写真 猪俣博史
  • 2013年7月26日
OASISのバーカウンターに並ぶアルコール類が、海辺の休日にぴったり

  • OASISのバーカウンターに並ぶアルコール類が、海辺の休日にぴったり

  • 海側のバーカウンターは、開放感あふれる竹の腰掛けに座る

  • 建築中のOASIS。砂浜に建ち並ぶ柱は、すべて竹

  • 建築現場に立つ朝山正和さん。梅雨最中のこの日は途中から雨だったが、そうなったらなったで、雨模様を楽しむ

  • 潮風に吹かれながら聴く夜のライブ音楽に、みんなリラックス。夏の後半からはダンスナイトもはじまる

  • 夜のバーカウンターは大人が自分の時間に浸る場所

  • 星空に光るOASISの看板。まだ夜は長い。お楽しみはこれからだ

 葉山のメイン・ビーチ、森戸海岸に建つ海の家「OASIS(オアシス)」は、今夏で33年目を迎える。主宰者の朝山正和さん(60)がここから発信したオルタナティブなカルチャーとライフスタイルは、後続の世代にも次々と受け継がれていった。

 たとえば逗子・葉山での新しい暮らし方を表現した根本きこさん(38)は、オアシスで育った第2世代のひとり。1990年代にキッチン担当として働き、同じくオアシスのスタッフだった西郡潤士さんと結婚。2人で逗子に「cafe coya」を開いた後も、毎年夏は店を閉めて、オアシスで料理を作り続けていた。

「今、スタッフとして集まってくれている半分が葉山の子です。オアシスのスタッフの子どもたち、そしてその友だち、友だちの友だち、その子どもたち……とつながっていっています。そうやって世代を超えて、大きな家族のように、みんなで生きていける形があるんじゃないかな、って僕は思っています」

 朝山さんがそう話すように、オアシスは「海の家」と同時に、「夏の間のみんなの家」としての意味も大きい。だからここには、ほかの海の家ではめずらしいスタッフルームや、スタッフ専用のシャワーブースも設けている。

 セルフビルドの建物は、毎年6月に入ると、オアシスのスタッフが中心になって建設をはじめる。砂浜に竹で柱を組み立てていくのはなかなかの重労働で、雨が降ったらスケジュールが押していても作業は中止。天気次第の現場では、若いスタッフと一緒に朝山さんも働く。

「楽しいですよ、友だち同士で自分たちの場所を作るのは。一日遊んでいるように働いて、かつ日当が出る。経営としては、成り立ちにくい考え方ですけれど(笑)」

 以前、建築デザイン的に考えて、工事の外注をスタッフたちに提案したとき、店長から「やめましょう。それよりも仲間の日当になった方がいい」と言われて、発想が変わった。デザイン的なカッコいい仕上がりより、素人による自分たちの空間作りの工夫。それは、朝山さんが当初から面白いと考えていた、ある種のインスタレーション(三次元の展示)感にもつながっている。

 その店長は後に、オアシスで働く仲間とともにレゲエバンド「HOME GROWN(ホームグロウン)」を結成。バンドは現在、日本のレゲエシーンを代表する存在に成長している。

 オアシスのあり方は、そのように、音楽とも不可分だ。仲間うちから生まれたオリジナリティあふれるバンドや、ガーナなど、リズムの本場から招いたアーティストらのライブは、葉山の夏の風物詩。ライブは一部を除いてドネーション(投げ銭)形式にしている。

「友だちがこの様子を見て、ヨーロッパ人が南インドで実践している『オーガニックファーム』に似ている、って言っていました。そのファームは食べ物を自給自足でまかなって、現金収入は音楽イベントで稼ぐんです。なるほど〜、って」

 朝山さんにとってオアシスとは、はじめたときから「海の家ビジネス」ではなかった。ここは、都会の経済活動とは違う価値が息づく、新しいコミュニティのあり方を探る拠りどころなのだ。

 スタート当初は、収支の厳しい時期が続いたが、90年代の半ばからコアなファンがつき、経営が回りはじめた。そのタイミングで、朝山さんは、毎年春に開催される「葉山芸術祭」の企画と進行役も担うようになった。芸術祭の時期は、町に点在するショップ、ギャラリー、名所、美術館、そして個人の家々が、アートをテーマに一般に開放し、それぞれの表現活動を楽しむ。そんな連携が可能なのも、葉山という土地ならではである。

「建築家出身なので、たくさんの人たちと顔を突き合せながら、プロジェクトを調整していくことは得意なんです。そして葉山では、僕が特に方向づけしなくても、自然になるようになっていく。この地域の素質なんだなあ、って思います」

 オアシスでは数年前から、水の汚染を軽減する活動にも取り組みはじめた。自分たちの行為と環境との関係に注意すること。それも、地域に根ざしたオルタナティブ・ライフの大切な精神であり、何よりも葉山へ捧げるリスペクトになっている。

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PROFILE

清野由美(きよの・ゆみ)

ジャーナリスト。1960年、東京都生まれ。東京女子大学卒。英国留学、出版社勤務を経て、91年にフリー。先端を行く各界の人物インタビューとともに、時代の価値観や感覚、ライフスタイルの変化をとらえる記事を「AERA」「朝日新聞」「日経ビジネスオンライン」などに執筆。著書に『新・都市論 TOKYO』『新・ムラ論 TOKYO』(隈研吾と共著・集英社新書)、『ほんものの日本人』(日経BP社)など。「『葉山から、はじまる。』取材者だより」はこちらから。

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