集まってきたプレオーガニックコットンとオーガニックコットン(写真はすべてKURKKU提供)
収穫の季節は喜びにあふれている
コットンボールをひとつ一つ、手で摘んでいく。生産農家はこの作業で一区切り
2010年秋にインドを訪ねた小林武史(手前左から2人目)は農家の声を聞いて歩いた
かやぶき屋根の農家と話すクルックの江良慶介。POCに参加して2年後、レンガ造りの家を建てた
広大な畑一面に実ったコットンボール
歓迎する村人たち。プレオーガニックコットンプログラムに参加したい農家は年々増えている
集まってきたプレオーガニックコットンとオーガニックコットン(写真はすべてKURKKU提供)
インドで農薬漬けの綿花づくりを転換したい。クルックの江良慶介(36)は視察後、ずっと考えていた。そしてついに、突破口が見つかった。
「オーガニックコットンとして認められるまでの3年間はプレ期間として、『プレ・オーガニックコットン』というブランドをつくってはどうだろう。この期間中に虫害などで収穫が減った場合、その分をオーガニックコットンと同じ値段で買い取れば、受け入れられるのではないか」
新たな支援プログラムを考え出したのだ。帰国後、「プレオーガニックコットン(POC)」プロジェクトを提案すると、音楽プロデューサーでクルック代表の小林武史(54)も、
「いいね、やってみようよ」
と身を乗り出した。
新プロジェクトの舞台は、すでに視察を済ませ、伊藤忠商事が取引する紡績会社もあるインド。2008年春、江良は再びマディア・プラデシュ州を訪れた。
「プレオーガニックコットンを始めてみないか」
減収分は補てんするので、これまでと変わらない暮らしができる。そう説いて歩いた。1万軒の農家と取引がある紡績会社「ラジ・エコファーム」にも理解を求めると、もはや失うもののない貧しい農家から次々と手が挙がった。
ただ、無農薬栽培の方法がわからないため、農業指導ができるリーダーを農家に派遣し、土壌検査から始めた。畑には牛ふんやミミズをまいて土を肥やし、虫を引きつけるトウモロコシを植え、綿花に虫がつかないように工夫した。607軒の農家が遺伝子組み換えでない種をまき、秋には300トンのプレオーガニックコットンが取れた。2年目は856軒に増え、収穫は400トンを超えた。
農民たちの暮らしぶりが明らかに変わってきた。ある農家はかやぶきからトタン屋根に、別の農家はレンガ造りになった。江良がヒヤリングに回ると、「お腹が痛くならなくなった」「病院に行く回数が減った」「借金取りが来なくなった」「小作人も雇ってやろうかな」など、だれもが得意げに語ってくれた。
伊藤忠はさっそく、取引のある企業に「POC」の売り込みをかけることにした。最初に話に乗ったのは、ジーンズメーカーの「Lee」。アフリカのウガンダでのオーガニックコットン作りに取り組むなど、環境への意識が高かった。さらに、「AIGLE」、「TOMORROW LAND」などが続いた。こうして、POC製のニットやカットソーが徐々に店頭に並ぶようになった。
とはいえ、普通の綿製品と比べると価格は2割増し。プレオーガニックコットンを糸にしてインドから日本へ運び、その後、海外の工場で縫製するためコストがかさむ。ファストファッションブームでもあり、賛同する企業は伸び悩んだ。
転機が訪れたのは2011年3月11日。東日本大震災・大津波、そして原発事故が流れを変えた。=敬称略(つづく)
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