葉山から、はじまる。

<29>ビーチから、環境型社会への転換を

  • 文 清野由美 写真 猪俣博史
  • 2013年8月2日
ピラミッド形の竹屋根が「ブルームーン」のシンボル。店名は英語の慣用句「Once in a Blue Moon」(稀なること)にちなむ。

  • ピラミッド形の竹屋根が「ブルームーン」のシンボル。店名は英語の慣用句「Once in a Blue Moon」(稀なること)にちなむ。

  • 6月に建設中のブルームーン。材料の孟宗竹は、毎年2月に葉山の竹林から切り出している。

  • 軒が水平線に沿うように計算されている。ゆえに、眼前の海の風景がより鮮やかに、美しく見える。

  • 英語で書かれた食事のメニュー。地元産の「SHIRASU(葉山のしらす丼)」と「OCTOPUS(佐島のタコ丼)」が名物。

  • チームのアニキとして、みんなを引っ張っている近藤賢作さん。

  • この小径を抜けた左側にブルームーンがある。左手の壁は「葉山しおさい公園」。

 森戸海岸が観光客を惹きつける、葉山の夏の表玄関だとしたら、御用邸の庭先にある一色海岸は、少し敷居の高い、大人向けのビーチといえる。

 ここには、森戸海岸のOASIS(オアシス)と並ぶ人気の「BLUE MOON(ブルームーン)」が毎夏、都会的な「海の家」を開く。

 葉山産の孟宗竹で組んだ構造に、よしずを葺いた屋根。店内の椅子に座ると、軒が目の前の海を水平に切り取って、絵画的な眺めが出現する。屋根の上に乗るピラミッド形の装飾は、海に出ているヨット乗りやサーファーたちが目印にできるように、と考えられたデザインだ。

 ブルームーンのスタートは、今から17年前の1997年。一色に新しいコンセプトの「海の家」を、と言い出したのは、逗子育ちのトレンドリーダーにして自由人の長島太郎さん(44)だった。そこに集まったのが、太郎さんの弟の長島源さん(35/シネマ・アミーゴ館長)や、友人の近藤大輔さん(43)、その弟の近藤賢作さん(41)ら、逗子・葉山育ちの人々。オアシスが、よそから葉山に住み着いた人たちのチームだったのとは対照的に、ブルームーンのコアメンバーは、子どものころから地元の海風に馴染んだ面々だった。

 長島さん兄弟は、日本人の父とイギリス人の母とのハーフ。近藤さん兄弟は、父の仕事の関係で、少年時代をサウジアラビアで過ごしている。現在、タイのチェンマイでHIVに母子感染した子供たちの施設、「バーンロムサイ」を主宰する名取美和さんも湘南育ちで、立ち上げメンバーのひとりだった。

 彼・彼女たちは、地元を愛する気持ちと同時に、地球的な視野を持っていた。そこから生まれた合言葉が、「Think Globally, Act Locally(シンク・グローバリー、アクト・ローカリー)」だ。地球的視野で考え、足元から行動する、というこの思想は、今にいたるまで、ブルームーンを貫く価値軸となっている。

 ブルームーンは海岸を舞台に、次代への価値観として、消費社会から環境型社会への転換を打ち出した。

 オープン初年には、ゼロ・エミッションを提唱する国連大学学長顧問、グンター・パウリを招いたビーチ・ミーティングを開催。ゼロ・エミッションとは、生産、流通、消費、廃棄の各段階で排出物(エミッション)をできるだけ減らすという環境アクションだ。その後も、ブルームーンではメンバーたちが、フェアトレードの商品を売るマーケットや、アマゾンの熱帯雨林を守るチャリティイベントなどを次々と催していった。

 時代に敏感な人たちが、刹那的な消費よりも、未来への持続行動に目を向けるようになった90年代。「海の家」が、環境問題のプラットフォームになる、というあり方は、まさに時代の先端を行っていた。ブルームーンは、その先端のカッコよさで、葉山の夏に新しい展開をもたらしたのだ。

(→後編に続きます)

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PROFILE

清野由美(きよの・ゆみ)

ジャーナリスト。1960年、東京都生まれ。東京女子大学卒。英国留学、出版社勤務を経て、91年にフリー。先端を行く各界の人物インタビューとともに、時代の価値観や感覚、ライフスタイルの変化をとらえる記事を「AERA」「朝日新聞」「日経ビジネスオンライン」などに執筆。著書に『新・都市論 TOKYO』『新・ムラ論 TOKYO』(隈研吾と共著・集英社新書)、『ほんものの日本人』(日経BP社)など。「『葉山から、はじまる。』取材者だより」はこちらから。

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