太陽のまちから

ロラン島に自然エネルギー革命の息吹き

  • 文 保坂展人
  • 2013年9月10日

写真:ロラン島にある「森の幼稚園」では、少女がブランコで遊んでいたロラン島にある「森の幼稚園」では、少女がブランコで遊んでいた

写真:「森の幼稚園」に23年間勤めているというラウナ・ニールセンさん「森の幼稚園」に23年間勤めているというラウナ・ニールセンさん

写真:扇風機を使っての風力発電についての授業扇風機を使っての風力発電についての授業

写真:住民たちが利用するリサイクルセンター住民たちが利用するリサイクルセンター

 3回連続となるデンマーク・ロラン島からの報告の最終回です。いまや「幸福度世界一」とも言われるデンマーク。なかでも、見渡す限り田園風景の広がるロラン島は、その象徴かもしれません。

 1回目で触れたように島全体で500基にもなる風車。その半数は個人か、有志による共同での所有だといいます。風力発電によって生まれた余剰電力の売却益が確実に見込めるため、農家は5千万円を超えるローンを10年あまりで返済し、メンテナンス費用をのぞいた副収入を得られている、という話を多く聞きました。

 風車の大型化に伴って投資金額も膨らむことから、何人かでお金を出し合って風車を運営する共同所有も目立ってきたそうです。前回紹介した地域熱供給や糞尿発電所もそもそもは、地域住民が協同組合として設立・運営してきたものです。

 みんなで汗をかいて、力をあわせて、分かち合う。自己の利害を優先し、他者の失敗に手をさしのべず、どこまでも利益を追及するかのような生き方とは対極に見えます。

「ぜひ、見てもらいたい場所がある」

 案内役のレオ・クリステンセンさんが連れていってくれたのがリサイクルセンターでした。夕方になると、何台もの車が列をなして構内に入ってきます。そこには、まだ空の高い位置にある8月の太陽を浴びながら、黙々と作業する市民たちの姿がありました。

 廃棄物が満載されたカーゴで、木材、ガラス、陶器、プラスティック、鉄、アルミなどを分別しながらボックスに入れるのです。大きな家具や土壌などは、必要とする人が持ち帰ることのできる仕組みもありました。

 デンマークでは、朝8時から夕方4時まで仕事をすると、家に戻って庭仕事をしたり、DIYで改装を手がけたり。だから、リサイクルセンターに自分で廃棄物を持ってくるのも自然なことだというのです。

 行政に依存しすぎることなく、自分でできることは自分でやる。そんな気風は、風車の運営からリサイクルまで通じているように感じました。ここが「幸福度」の根っこにもなっているのでしょう。

そうした価値観はどのように育まれているのか。私は教育の現場にも足を運びました。

 1950年代にデンマークで生まれた「森の幼稚園」はロラン島でも人気が高く、25人の子どもたちが通っています。森に囲まれて幼稚園の施設があるのではなく、森という「幼稚園」のあちこちに子どもたちの遊具や小屋やブランコや、作業場があるのです。

 女の子もスイスイと木を登ったり、ターザンごっこで遊んだり、自分の身体能力にてらして何が危険なのかを身体で覚え、自分の頭で考えるのです。

 子どもたちは、先生がボストンバックに手製の人形と絵を詰め込んだ「お話の箱」を聞くのが大好きです。人形つきの立体紙芝居といえばいいでしょうか。イマジネーション豊かで創造的、身体能力も鍛えられた元気な子どもたちが巣立っていきます。ここでは、小学校に進学する前の予習などはありません

 私は、「フォルケスコーレ」と呼ばれる、6歳から16歳までの子どもが通う学校も訪れました。

 まず、5年生の子どもたちの教室に案内してもらうと、ちょうど「環境」の授業の最中でした。手作りの風車を扇風機で回しながら、どんな羽根が回りやすいのかを実験しています。

 日本ならクラス全員が一緒に同じことをやっていますが、ここでは、3〜4人ごとに、それぞれ違う課題に取り組んでいます。レモンやじゃがいもの電気抵抗を調べたり、スマートメーターを使って電気使用量を測って省エネに取り組んだり、PCの教育ソフトでクイズを解いたり、とさまざまです。

 3年生のクラスでは、「省エネ」をテーマとした授業が進められていました。先生は、学校の校務員。毎日、学校ではどのぐらいの水が消費されるのか

「トイレを使った後、『小』は3リットル、『大』は6リットルを使うんだ。だから、きちんと節約すると、全体では大きな効果を生むんだよ」

 そう語りかけながら、子どもたちとのやりとりを重ねていました。

 ロラン島には、前回紹介した「科学の地球儀(science on a sphere) 」 と呼ばれる巨大な地球儀があります。実際に子どもたちが行くのは年1回ですが、気候変動の様子を手にとるように見ることができるので強い印象を受けているようです。教室にある大画面のスマートボードにデータを送る準備をしているそうです。

 これでデンマーク・ロラン島からの報告をひとまず終ります。滞在中、福島第一原発の汚染水問題がトップニュースで伝えられていました。ロラン島は対岸のドイツとこれから海底トンネルで結ばれるといいます。風車の活用を切り口とした自然エネルギーの導入では先進地域ですが、けっして現状に満足していません。次の時代の扉を開こうと不断の努力を続けていることに強い感銘を受けました。

 何より時代は動いていく。私たちも次の時代の扉を開くことはできる、と実感しました。たとえ、紆余曲折があったとしても。

 最後に、ロラン島の取り組みを描いた「 ロラン島のエコチャレンジ」という本を紹介しておきます。

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PROFILE

保坂展人(ほさか・のぶと)

1955年、宮城県仙台市生まれ。世田谷区長。高校進学時の内申書をめぐり、16年間の「内申書裁判」をたたかう。教育ジャーナリストを経て、1996年より2009年まで衆議院議員を3期11年(03〜05年除く)務める。2011年4月より現職。『闘う区長』(集英社新書)ほか著書多数。

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