リノベーション・スタイル

<43>リッソーニのソファが入る93m²の部屋

  • 文 石井健
  • 2013年11月19日

 [Vesper]

 尾関さん夫婦
 東京都目黒区
 築35年 / 92.72m²
 工事費 1500万円

 尾関さん夫妻のリノベーションは、「ピエロ・リッソーニのソファを置きたい!」というところからスタートしました。リッソーニといえば、シンプル&モダンなデザインで知られるイタリアの大御所デザイナーです。

 彼の白いソファを置くのが尾関さんの夢だったとか。そこでリッソーニのL字型ソファが入る家、という条件で物件探しが始まりました。

 なにしろ大きいのです。日本のソファなら2、3人がけで長さ1.4mくらい、外国製の大きいソファでも3人がけで2mちょっとです。でも、リッソーニの場合、なんと4m以上もあります。これが入るリビングとなると、どうしてもある程度のスペースが必要になります。

 その結果、見つけたのが目黒の93m²の部屋。当時で築35年でしたが、広さは十分。角部屋で窓が多かったので、いくつでも細かく部屋は作れましたが、ほぼワンルームにしてソファを置きました。さらに、ダイニングは作らず、キッチンのシンクとテーブルをつなげて食事ができるようなスペースを作りました。

 この空間を活かすために使ったのが、ワイヤーシステムの照明です。ドイツ人照明デザイナーのインゴ・マウラーが1984年に考案したもので、今は日本のメーカーも作っています。

 2本のワイヤーを通して電流を流し、好きな灯具をつけて明かりを灯します。広いリビングにワイヤーシステムを設置することで、天の川のような流れが生まれ、天井の梁(はり)の存在感も薄まっています。シンプルな空間だからこそ、照明で遊んでみるというのは効果的ですね。

 リッソーニのソファの後ろには壁を設けて、その裏側にはワークスペース的な空間を作りました。ホテルライクを意識して、トイレと洗面所は一体型にしています。玄関からお風呂までの壁は斜めになっていますが、これはバスタブの大きさを十分とるため。壁には外壁でよく使う割肌の天然石を使いました。フローリングはシックなローズウッドです。

 今回はソファから家作りが始まりましたが、リノベーションの魅力は「LDK」といった標準的な間取りや広さからいったん解放されることだと思います。

 家の大きさは、「うちは3人家族なので2LDKで60m²」などと決めることが多いですが、本当に自分にとって必要な大きさというのはもっと狭いかもしれないし、広いかもしれない。「リビングは使っていない」という人も意外と多いんです。

 広さを優先するなら郊外へ行こうとなるし、狭くても大丈夫なら都心に住むという選択肢も出る。あるいは、リノベーションなら、そうした制約からも自由になれます。

 いずれにしても、家作りというのは、その時自分の大切にしているものと向き合う行為でもあるのかもしれません。

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PROFILE

石井健(いしい・たけし)

1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から500件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)

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