東京の台所

<42>相手を思えば、皿を洗う時間まで楽しい

  • 文・写真 大平一枝
  • 2013年11月27日

〈住人プロフィール〉
 カメラマン(男性)・40歳
 賃貸マンション・2DK・JR中央線 西荻窪駅(杉並区)
 入居1年・築10年
 婚約者(30歳・会社員)とふたり暮らし

 週6日は自炊する。外食はたまにするが、コンビニで弁当を買うことは皆無だ。けっして凝り性ではないが、できあいのものを食べるのは苦手なのだ。

「彼女があまり野菜を食べないので、いかに料理に野菜を使っておいしく食べてもらうかを考えます。ラタトゥユを発見したときはうれしかったですね。野菜がたくさんとれてかさが減る。それにおいしいですものね」

 彼女の仕事が思いのほか忙しく、時間の自由になるカメラマンの彼が、彼女の健康を思って作り始めたのがきっかけだ。もちろん節約の目的もある。

「クックパッドでできるだけ簡単な料理を探します。自分のレパートリーだけだと手詰まり感があるので。それをちょっと自分流にアレンジするのが好きです」

 いまは、きのことカマンベールチーズの炒め物が気に入っている。

「カマンベールのコクがいいんですよ。これ、きっとパスタの具にもなると思うんです」

 キャベツとウインナーのコトコトスープを作ったときは最後にリゾットにする。ひとつの料理をいろんな味つけで最後まで楽しむのが得意だ。

「じつは以前はほとんど料理をしなかったのですが、節約料理ってじつはすごくクリエーティブですよね。いくらカネあってもいいっていう料理より、知恵を使ってくふうをするほうがずっと楽しい。そんな豪華な食材で作ったことがないからわからないけど、きっと僕はつまらないんじゃないかって思うんです」

 台所の脇には、お気に入りの広いテラスがある。ここで春夏はソーセージやビールを楽しんだ。今は、部屋で鍋が多い。「鍋だとたくさん野菜がとれますからね」

 そんな彼に、彼女は「おいしい」の代わりに「申し訳ない」と言いながら完食するそうだ。

「そりゃ達成感がありますよね。空になった皿を洗うのも好きです」

 けっして贅沢(ぜいたく)ではないけれど、相手のことだけを思って作る料理の時間。これから籍を入れる2人の幸福な食卓。皿を洗う時間まで楽しいと思うこの感覚、そこに流れる甘く穏やかな空気を、私はずいぶん長い間忘れていたなと思い出させられた。こちらまであたたかな気持ちになる台所だった。

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PROFILE

大平一枝(おおだいら・かずえ)

長野県生まれ。ライター。生活やライフスタイルををはじめ、人物ルポなども執筆。著書に『ジャンク・スタイル』『もう、ビニール傘は買わない。』(平凡社)、『日曜日のアイデア帖〜ちょっと昔の暮らしで楽しむ12か月』(ワニブックス)、『かみさま』(ポプラ社)、『スピリッツ・オブ・ジャンク・スタイル』『ジャンク・スタイル・キッチン』(風土社)ほか多数。共著に『母弁』(主婦と生活社)、『ジャンク・ウエア』(平凡社)など。 ホームぺージ「暮らしの柄」

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