太陽のまちから

ソーラー水素で燃料電池車が走る日

  • 文 保坂展人
  • 2013年11月26日

写真:埼玉県庁で実証実験が行われている「ソーラー水素ステーション」(世田谷区提供)埼玉県庁で実証実験が行われている「ソーラー水素ステーション」(世田谷区提供)

写真:可搬式インバータ(世田谷区提供)可搬式インバータ(世田谷区提供)

写真:水素ステーションの高圧水素タンク(世田谷区提供)水素ステーションの高圧水素タンク(世田谷区提供)

 東京ビックサイトで開催されている「東京モーターショー」では、燃料電池車(FCV)が話題となっています。トヨタは試作車を公開し、ホンダはロサンゼルスの自動車ショーで最新の試作車を公開します。

 水素を充填することで、ガソリン車に匹敵する走行距離を確保できる燃料電池車は「究極のエコカー」とも呼ばれ、2年後と言われる本格的な市場販売に向けて、メーカー間の競争にも拍車がかかっています。

 11月12日、私は埼玉県庁を訪れました。昨年から気になっていた「ソーラー水素ステーション」の現場を見ることが目的でした。2012年春、環境省の委託を受けて埼玉県とホンダが共同の実証実験を始めています。太陽光発電で水を電気分解し、CO2を排出しないという意欲的な試みです。

 写真にあるように、ソーラー水素ステーション自体は思った以上に小さなものでした。高圧水電界システムと水素を充填する機器がふたつ並び、後ろ側はコンクリートの壁で取り囲まれています。水素タンクを設置する場所にはコンクリートの壁を設置したり、6メートル以内に構造物を設置できない等の規制があるためですが、現在、規制緩和が検討されていると聞きました。

 燃料電池車FCXクラリティはデザインも仕上げも手づくりで、1台だけ製作されたかなり高額な車両のようですが、今後は量産して500〜600万円で販売する計画といいます。見た目は普通車と変わりありませんが、水素タンクには4キロの水素が充填でき、620キロの走行が可能です。埼玉県では知事公用車として使用してきたほか、一般の職員も使い、これまでの走行距離は約1万5千キロだそうです。

 ソーラー水素ステーションには10.5kwの太陽光パネルを設置し、最大で1日1.5キロの水素を製造しますが、クラリティはその水素で150キロ程度走行できるため、十分に水素供給は足りている状態だと聞きました。

もうひとつの特色は、可搬式のインバーダーボックスを使用して、9kwを7時間供給できるという機能です。これは一般家庭の約6日分の電力使用量にあたります。「イベント等の電源として積極的に利用しています」(埼玉県環境部環境政策課)

 現在、2年後の燃料電池車の市場発売をにらんで、水素ステーションを設置する計画が進んでいます。埼玉県庁での実証実験では、車のガレージにも入るような「高圧水電解システム」が使われていました。それを見ていて、デンマークのロラン島で見た「水素地域供給実験」を思い出しました。この実験が始まった時に、
<将来は家庭用水素供給装置としての普及をめざし>
 という一文がリリースの中にありました。

 ホンダによれば、独自技術である高圧水電界システムにより、水素の製造と圧縮を一体化することでコンプレッサーが不要となり、小型・低騒音化を実現。将来は家庭用水素供給装置としての普及をめざし、水素エネルギーの効率的な管理と有効活用の可能性を検証していく、といいます。

 昨年来、3〜4kw分の太陽光パネルを屋根に搭載している家庭が増えました。水素をめぐる現在の法規制が緩和されることが前提ですが、この高圧水電解システムが小型化され、量産されれば、一般家庭や集合住宅でも太陽光発電を通して電気分解で水素が製造され、燃料電池車に充填する日が来るかもしれないと想像してみました。

 燃料電池車の普及の課題は、水素ステーションがどれだけ設置されるかにかかっていると言われています。

 いかに高性能の燃料電池車でも、水素を充填できる場所が身近かになければ日常生活で使用する人は増えないでしょう。水素ステーションは、設備や安全対策のために5〜6億円の費用が必要になると言われています。今後、大都市圏で整備が進んでいくでしょうが、埼玉県庁で実証実験に使われていた、CO2を排出しない比較的小規模のソーラー水素ステーションに注目していきたいと思います。

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PROFILE

保坂展人(ほさか・のぶと)

1955年、宮城県仙台市生まれ。世田谷区長。高校進学時の内申書をめぐり、16年間の「内申書裁判」をたたかう。教育ジャーナリストを経て、1996年より2009年まで衆議院議員を3期11年(03〜05年除く)務める。2011年4月より現職。『闘う区長』(集英社新書)ほか著書多数。

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