東京の台所

<44>自由設計の夢キッチン 13年たっても

  • 文・写真 大平一枝
  • 2013年12月11日

〈住人プロフィール〉
 会社員(女性)・48歳
 2LDK・京王井の頭線 下北沢駅(世田谷区)
 入居13年・築13年
 夫(51歳 )、長男(18歳)、次男(11歳)の4人暮らし

    ◇

 コーポラティブハウスの住人である。コーポラティブハウスとは、居住者同士で建設組合を結成し、土地を共同購入して集合住宅を建て、それぞれの家の内部は自由に設計する方式をいう。竣工後は、そのまま管理組合に移行する。

 13年前、私はこの住人と一緒にコーポラティブハウスを建てた。女性の組合員はだれも台所にこだわったものだが、彼女の台所はとりわけ広くておしゃれ、そのくせ気取っていないので、私の中では密かに“使い勝手&憧れナンバーワン”である。

 冷蔵庫、食器棚まで組み込んだシステムキッチンはクッチーナに依頼。コの字型のアイランドキッチンだが、シンクは壁を向いている。

「壁を背にして、ダイニングのほうを向いたシンクにすれば良かったかなと思ったりしますが、適度に料理に集中でき、適度にダイニングの家族の気配もわかる。だから壁向きでもとくに後悔はないですね。それより、とにかく台所は広くとこだわったのだけど、『リビングに対して、スペースを取り過ぎてしまったかな?』とちょっとだけ後悔しました」

 こだわりが強すぎるあまり、あれもこれもと設備を増やしてスペースを確保しすぎた結果、他が狭くなり、設計をやり直してもらうという経験は私にもある。結局、自由設計とは、好きなものを選ぶ作業ではなく、予算に合わせて夢を削り、現実に落とし込む妥協との戦いなんだなと、皮肉交じりに痛感したことも。

 おそらく、我が家の台所の2倍以上の予算をかけて仕上がった彼女の台所は、モスグリーンが基調の洗練された空間である。オープン収納だが、リビングダイニングから手もとが見えないように、カウンターの立ち上がりが高い。

 この大理石のカウンターこそ、この台所の要であり、すべてはこれを元にデザインされているのだそうだ。

「雑誌で、大理石のカウンターのキッチンを見て、こういう石の素材がキッチンにあるのもいいなあと、ひとめぼれしてしまったのです。設計士さんと一緒に石屋さんに行って選び、すべてはカウンターを中心に設計していただきました」

 ダイニングとキッチンを緩やかに間仕切る大理石のカウンターには、ホームパーティのときは持ち寄りの大皿料理がずらりと並ぶ。スタンディングのセルフ形式で、客は並んで取り皿にのせる。その分、リビングダイニングを広く使えて、じつに重宝なスペースだ。

 シンク前は、食材を洗って、切って、火にかけるという一連の動作が、そのままひと続きでできるような動線になっている。

「壁のタイルも大判サイズで目地の汚れがあまり気にならないし、掃除もしやすい。本当に使いやすいです。13年使っていても、ここを変えたいということもなく、飽きません。設計士さんがよく考えてくれたおかげだと思っています」

 その設計士とはいまも食事に招いたりの交流が続いている。

 高校3年の長男が、カウンターに寄りかかって母の入れた紅茶を飲みながら取材に参加。「こんな皿あったっけ」と、楽しそうに会話に加わる。

 竣工当時5歳だった彼は、来年には大学受験である。建築を学びたいと言う。よく見ると手もとが見えない作りになっていたり、家族全員、何がどこにあるかわかるオープン収納で、男子も厨房に入りやすい台所を設計した建築家に影響を受けたのはいうまでもない。家づくりはときに、思わぬ置き土産を残すものである。

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PROFILE

大平一枝(おおだいら・かずえ)

長野県生まれ。ライター。生活やライフスタイルををはじめ、人物ルポなども執筆。著書に『ジャンク・スタイル』『もう、ビニール傘は買わない。』(平凡社)、『日曜日のアイデア帖〜ちょっと昔の暮らしで楽しむ12か月』(ワニブックス)、『かみさま』(ポプラ社)、『スピリッツ・オブ・ジャンク・スタイル』『ジャンク・スタイル・キッチン』(風土社)ほか多数。共著に『母弁』(主婦と生活社)、『ジャンク・ウエア』(平凡社)など。 ホームぺージ「暮らしの柄」

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