リノベーション・スタイル

<48>3千冊の蔵書収めたストイックな空間

  • 文 石井健
  • 2013年12月25日

 [Shapley]
 Tさん
 東京都豊島区
 築18年 / 65.72m²
 工事費 約1300万円

 Tさんは大学教授という仕事柄、3千冊ほどの蔵書がありました。しかも専門書が多いので、大きいものから小さいものまで判型もバラバラ。それらをきれいにアーカイブしていく、というのが今回のリノベーションの大きな課題でした。

 ご本人が最初にイメージしていたのは、“ストイックな空間”です。禅寺のような静かな空間で本に囲まれた生活を思い描いていらっしゃいました。

 とはいえ、実際の物件は、ベランダ側の日当たりがよくて、とても気持ちのいいお部屋です。そこで、シンプルな生活と本に囲まれた空間、つまり“シンプリシティ”と“コンプレックス”という対比をテーマにプランを構成していきました。目指したのは、スウェーデンの著名な建築家グンナール・アスプルンドが建てた「ストックホルム市立図書館」のような、居心地の良さと静謐(せいひつ)な書棚が共存するような空間です。

 玄関側には窓がなく、実際にストイックな雰囲気だったので、そちら側を図書館のようにして、そこをぐるりと抜けていくとベランダ側の日だまりの空間にたどり着く、という構成にしました。寝室やバスルーム、キッチンなどは最小限のシンプルな形にして中央に集め、そのまわりを書棚に囲まれた廊下で囲んで回遊できるようにしたのです。

 玄関から入ってまっすぐの廊下がパブリックな動線、左側の引き戸を開けて続く廊下がプライベートな動線です。後者の方には、廊下にオープンな洗面台もあります。

 書棚のある廊下はかなり広く、幅は1.6メートルほど。本当の図書館のように書架を引きながら移動できます。

 写真では見えにくいかもしれませんが、実は廊下の真ん中にはガラス戸が設置されています。玄関側の書棚は図書館のような雰囲気がかなり強いので、生活空間との間に区切りをつけたかったのです。空間としては連続していますが、空気の流れをそこで一度止めています。

 中心の生活空間ゾーンも、空間的には図書館とつながっていますが、境界を作りたかったので、書棚の上部に欄間を作って空間を分けました。

 ストイックな空間を目指しましたが、一つ一つの素材にこだわり、居心地のよさを追求していった結果、最終的には静謐でありながら、どこか温かみのある空間が生まれました。

つづきはこちら

このエントリーをはてなブックマークに追加
mixiチェック

PROFILE

石井健(いしい・たけし)

1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から500件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)


Shopping

  • ダイバーシティープロジェクト