リノベーション・スタイル

<49>マホガニーの風合いで大人の家に

  • 文 石井健
  • 2014年1月8日

 [dinghy]
 Sさん夫妻
 東京都港区
 築43年 / 50.46m²
 工事費 約1100万円

 「マホガニーのディンギーヨットをモチーフにした部屋を作りたい」。そんなところからSさん夫妻のリノベーションが始まりました。

 というのも、ご主人の趣味はヨット。葉山に友人と小型のマホガニーのヨットを持っていて、それが大のお気に入りだったのです。マホガニーといえば希少な高級材木。いくつもの工程の塗装を重ねるため、ピカピカとした光沢があるのが特徴です。そこで、ヨットのイメージは収納家具で取り入れることにしました。

 玄関から入って正面の壁側には、マホガニーを思わせる風合いの長い収納棚を設置しました。リビングからキッチンまでずっとつながっているので、生活雑貨の収納棚であり、テレビ台であり、キッチンでもあります。

 玄関脇や正面の壁には、ショップのように飾って収納できるスペースを作りました。収納には「隠す収納」と「見せる収納」がありますが、この部屋はその両方を上手にミックスしています。

 間取りは少し変わっていて、リビングインです。玄関とリビングの差がなく、玄関を開けると、すぐにコンクリートのような表情を持ったタイルの床が広がっています。コンクリートのようなラフな表情ですが、あえて大判のものを使い“禁欲的な贅沢”とでも言える雰囲気を出しました。

 シンクはアイランドになっていて、ダイニングテーブルも兼ねています。インパクトのある照明はインゴ・マウラーのもの。ドイツ語で「紙切れ」を意味する「Zettel'z(ツェッツル)」というシリーズは彼の代表作の一つです。クリップには文字が書かれている紙が40枚、白紙の紙が40枚ついています。自分で書き足すこともできますし、自分の好きなものを留めることもできます。

 部屋の壁はすべて白く塗ったので、コンテポラリーな雰囲気ですが、天井や梁(はり)は時代を感じさせるような味わいがあったので、そのままの風合いを残しました。

 床は玄関からリビングが大判タイル、ダイニングキッチンから寝室までがヘリンボーンで、表情の差をつけています。

 自転車やお酒、ロッキングチェアや器などおふたりが好きなものが、ところどころにさりげなく散りばめられていて、上質な大人な空間に仕上がっています。

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PROFILE

石井健(いしい・たけし)

1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から500件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)

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