太陽のまちから

東電より2.5円/kw高く売電 世田谷区営太陽光発電所

  • 文 保坂展人
  • 2014年1月7日

写真:建設中の三浦太陽光発電所(世田谷区提供)建設中の三浦太陽光発電所(世田谷区提供)

写真:建設中の三浦太陽光発電所(世田谷区提供)建設中の三浦太陽光発電所(世田谷区提供)

 どんな大きなことも、すべては小さな変化から始まります。

 2011年3月11日の東日本大震災と原発事故以後、自然エネルギーに注目が集まりました。この間、被災地でいくつかのメガ・ソーラーを見に行きましたが、多くの場合は設置した企業が地代を自治体に支払い、投資を売電収入で回収して利益を生むという事業モデルでした。

 ソーラーパネルを設置する工事にはいくらかの人手を要するものの、完成してしまえば大量のパネルの制御は自動化されていて、雇用はほとんど生まれません。自治体からすれば、地代収入を得る以外にメリットは見いだしにくいと感じました。

 世田谷区はこの春、新たな事業に乗り出します。メガソーラーの4割ほどの規模(400キロワット)の区営太陽光発電所を稼働させるのです。

 神奈川県三浦市の高台に区が所有する約1ヘクタールほどの土地にはかつて、喘息(ぜんそく)や病弱の小学生たちを受けいれる区立三浦健康学園がありました。2005年に施設は廃止となり、建物は解体されました。ところが、さまざまな規制がかかっていることもあり、売却予定の土地に買い手がつかなかったことから、太陽光発電所として活用することにしたのです。

 当初は、区が直接、投資して太陽光パネル設備をつくって運営することを検討していましたが、担当者が綿密に調査した結果 、「リース方式」を採用することにしました。リース方式と聞いて、私もにわかに理解できなかったのですが、規模はまるで違いますが、「コピー機のリース」をイメージすればいいそうです。

 つまり、コピー機のように、「太陽光発電設備」を20年にわたって事業者から提供してもらうのです。例外的な災害を除いて、通常の機器の故障であれば事業者が修理をすることになります。コピー機が「コピーができる状態」である機器をリースするように、太陽光発電でも、「発電できる状態」の設備をリースして区が使用することになります。

 事業主体は世田谷区。つまり区営発電所ということになります。売電収入からリース料を支払い、差額が区の事業収入となるという仕組みです。

 昨年、「太陽光発電整備を設置・運営する事業者」の企画競争をした結果、国際航業と国際ランド&ディベロップメントが落札し、世田谷区との基本協定を結びました。

<出力約0.4MW、一般家庭の約120世帯に相当する太陽光発電所を設置、世田谷区へ賃貸し20年間当該発電所を維持管理するものです。この事業により世田谷区は20年間にわたり売電収入を得ることができます>(協定書より)

 世田谷区の三浦太陽光発電所の特徴は、発電した電力を東京電力ではなく、民間の電力事業者に販売する点にもあります。

 固定価格全量買取制度の導入により、電力を購入できるのは東京電力などの大手電力会社に限られている、と思い込んでいました。ところが、現実には、東京電力より高い価格で電力を買い取っても利益を出すことができる民間の電力事業者があるのです。しかも、経済産業省は太陽光発電所の電力の買取先を「入札で決定」するよう推奨しているというのです。

 2年前に、区の使用する大口電力を新電力(特定規模電気事業者=PPS)から購入する時にも、似たような経験をしました。制度は前からあったものの、一部の自治体以外、制度の存在さえ知らなかったために使われていなかったのです。

 今回、三浦太陽光発電所では、制度にのっとって「太陽光発電所が発電する電力を購入する事業者募集」の競争入札を行い、事業者はエナリスに決まりました。同社は国が決めた固定価格よりキロワットあたり2円50銭高い価格で買い取ってくれるのです(契約期間は3年1カ月)。

 同社によると、複数の新電力と取引をしているために多くのデータがあり、社内の気象予報士による発電量の予測技術があることなどから、独自のリスクマネジメントによって競争力のある価格で電力を買い取ることが可能だといいます。

 今回、世田谷区はなかなか売却できなかった三浦市の休遊地を活用し、リスクも抱える巨額の事業投資ではなく、「リース方式」によって太陽光発電を始めることができました。また、電力の売電先を入札で決めたことにより、固定価格で東京電力に売るより年間100万円ほど多くの収入を得ることもできるようになります。

 都市部における自然エネルギー活用のポイントは「交流のある地方自治体との連携」だ、と何度か書いてきました。この区営発電所の事業スキームによって、全国各地の交流自治体がエネルギー事業を立ち上げ、新電力を通じて電力消費地である都市部と結ぶという可能性が高まったのではないかと思います。

 建設中の三浦太陽光発電所は3月1日から稼働する予定です。

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PROFILE

保坂展人(ほさか・のぶと)

1955年、宮城県仙台市生まれ。世田谷区長。高校進学時の内申書をめぐり、16年間の「内申書裁判」をたたかう。教育ジャーナリストを経て、1996年より2009年まで衆議院議員を3期11年(03〜05年除く)務める。2011年4月より現職。『闘う区長』(集英社新書)ほか著書多数。

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