リノベーション・スタイル

<51>壁を取り払えず、すべてガラス張りに

  • 文 石井健
  • 2014年1月22日

  [Loci]
 加藤さんご夫妻(夫34歳、妻30歳)
 東京都杉並区
 築23年 / 58.90m²
 工事費 1200万円

 この部屋はすべての壁がガラス張りで、間取りが少し変わっています。写真だとどこがどうなっているかわかりにくいかもしれませんね(笑)。こういうユニークな部屋ができたのには、理由があります。

 この物件は三方開口で日当たりがよく、都庁や東京タワーなども見渡せる素晴らしい眺望つき。ただ一つ、壁式構造という難点がありました。壁式構造だと壁を取り払えないので、お気に入りの東京タワーがリビングからは見えません。

 そこで、壊せない壁以外はすべてガラスで仕切り、視界を窓の外へつなげるプランを提案しました。部屋の印象を左右する玄関からの視線と、滞在時間の長いキッチンダイニングからの視線を窓の外へ行くように誘導すれば、壁があっても外が見えて開放感があります。

 壁を斜めにしたり、ガラス張りにしたりする必要があるので、そういうテイストが嫌いな方は難しいですが、加藤さんご夫妻はそのプランを楽しんでくださり、物件を購入することになりました。

 大きな特徴は、まず玄関まわり。部屋に入ると、いきなり全面ガラス張りのお風呂があります。ただし、お風呂そのものは見えず、お風呂というよりはガラスの向こうに小さな中庭があるような雰囲気です。配管をタイルで隠し、そこがディスプレースペースになっています。低い壁の向こう側にバスタブがあり、黒い扉が出入り口となっています。

 もう一つの特徴は寝室。扉を開けると3段の階段があり、フロア全体が大きなベッドのようになっています。そこに直接マットレスを置きました。洗面台も寝室にあります。お風呂場を広く使うために洗面台をこちらにもってきましたが、意外と使い勝手がいいんですよ。歯をみがいたり、顔を洗ったりするのは寝る前と起きたときなので、一連の行動がスムーズです。

 寝室の反対側にキッチンとダイニングがありますが、こちらも日当たりがよくて気持ちのよい空間です。窓側には畳の小上がりがあり、昼寝をするのに最高です。ダイニングテーブルを小上がりまで伸ばせるようにしたので、大人数でも食事ができます。

 床のブルーが印象的ですが、これは絨毯(じゅうたん)ではなくフローリングにペイントをしています。部屋と部屋をつなぐ廊下は見えがかりになっているので、奥行きが出て広く見えますよね。

 壁式構造で間取りを動かしにくいというデメリットが、今までにない新しい空間を生み出しました。

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PROFILE

石井健(いしい・たけし)

1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から500件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)

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