リノベーション・スタイル

<52>ベルギーのアンティークなレンガで

  • 文 石井健
  • 2014年1月29日

 [JUMP]
 Kさん一家(夫36歳、妻35歳、長女1歳)
 東京都豊島区
 築32年 / 70.60m²
 工事費 1200万円

 リノベーションをするときには、最初に「どんな家にしたいか」を聞いて、とことん理想の暮らしを突き詰めます。Kさん夫妻にも同じことをたずねると、「食を中心にしたい」という答えが返ってきました。つまり、「ダイニングを中心にした住まい」です。

 そこで、外国の食堂のような、ちょっとスケールが大きいキッチンとダイニング一体型のプランを提案しました。

 キッチンはコンロ、シンク、ダイニングテーブルを一体とし、すっきりと。こだわったのは、奥さんが希望した壁一面のレンガです。ベルギー産のアンティークのレンガタイルを輸入して貼りました。50〜80年前にベルギーのボーム地方で実際に使われていたレンガです。

 レンガといえば、イギリスとベルギーが有名ですね。一言にレンガと言っても、大きく分けて“レンガ”と“レンガタイル”があり、レンガタイルはレンガをスライスしたものです。ホームセンターなどで安く売られているレンガのような“セメントストーン”もありますが、それはセメントで作ったレンガ風のセメント用品。レンガではありません。

 レンガの中にも新しく焼かれたものと、アンティークがありますが、古い質感を楽しみたいときはアンティークがおすすめです。異国の地の歴史を見てきた素材が自分の家の中にあるというのは、どこかわくわくしますよね。  

 Kさんのキッチンには、上から下まで惜しみなくレンガタイルを貼りました。普通、キッチンの収納棚というのは床までありますが、今回は贅沢(ぜいたく)に取り出しやすいところだけに設置したので、床と収納棚の間に隙間があります。だから、ここからもレンガが見えるんですよ。

 もう一つの大きな特徴は子ども部屋です。小さなお子さんがいたので、プレールームのような子ども部屋があったら楽しいよね、ということで、思い切って子どもスケールの部屋を作ったのです。

 キッチンダイニングのすぐ横にある4畳半ほどのスペースなのですが、ぐるりと囲った壁は椅子と同じくらいの高さ。小さな子どもが立つと、頭1個分出る感じです。出入り口はスイングドアで、子どもはそこから出入りします。天井からは、高さ1.5メートルくらいの収納棚を設置したので、大人がこの部屋に入るには、姿勢を低くしないと入れません。ちなみに壁の内側はすべて黒板塗装。床はコルクでやわらかく、食べ物をこぼしても大丈夫です。

 この空間が、めちゃくちゃ落ち着くんです。子どもスケールの中へ入ると、大人も童心に帰るというか……。視線が変わるので不思議な居心地の良さがあり、1度入ると出たくなくなります。こういうのを作ると、たいてい子どもより大人が喜ぶんですよね(笑)。「飲み部屋になっちゃいそう」っていうことがよくあります。

 この子ども部屋は段階的に壁を高くして閉じていき、将来的には独立した部屋にできます。そのときに、どこにベッドや机を置くかなども考えた上で作っています。部屋というのも、家族の成長にあわせて育てていくことができるものなんですよね。そういった視点で家造りを考えてみるのも一つの方法です。

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PROFILE

石井健(いしい・たけし)

1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から500件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)

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