東京の台所

<51>青春の続きはオープンキッチンで

  • 文・写真 大平一枝
  • 2014年2月5日

〈住人プロフィール〉
 会社員(女性)・27歳
 賃貸マンション・1LDK・中央線 中野駅(中野区)
 入居1カ月・築1年
 

 中野の町が好きで、駅をはさんで2カ所に住んだ。新宿に近いのに庶民的で物価が安いのも気に入っているが、最大の魅力は、学生時代の友だちがみな近所にいること。キャンパスが中央線沿線だったので、必然的にそうなった。

「いまだに週2〜3回は、学生時代の友だちと会います。『ちょっと飲もうよ』ってラインで誘いがきたら、すぐに落ち合えるのがいいですね。短い時間でも、会うとほっとするし、こんなミスしちゃったという仕事の些細(ささい)な話もきいてくれる。どんな失敗も受け入れてくれるあたたかさが、居心地がいいんです」 

 1カ月前、オープンキッチンのこの家に越してきた。それからは、友だちがここに集まることも多い。

「前の家は、台所と部屋が分かれていたんです。だから料理するときは孤独で。今の台所はいっさい収納もないし、なにもかもが丸見えですが、わいわい話しながら料理をできるところがとても気に入っています」

 得意料理はロールキャベツ。トマトが大好きなので、トマト味にする。友だちと、料理のお裾分けをしあうこともある。

 ハードな広告の仕事をしている。おそらく彼女にとって、中野は何も飾らない素の自分に戻れる街。完全なるオフの空間だろう。

 来年は「友だち10周年」なので、みんなでパリに行く予定だという。社会人になってから結婚するまでの間、私も学生時代の友だちとよく会っていた。それが支えだったし、アイデンティティーの拠り所でもあった。関係がその先どうなるかは誰にもわからない。わかっているのは、損得抜きに「あなたはあなたのままでいい」と言ってくれる友だちはかけがえがないということ。そして、そんな友が近所に住んでいる街はさらにかけがえがない。

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PROFILE

大平一枝(おおだいら・かずえ)

長野県生まれ。ライター。生活やライフスタイルををはじめ、人物ルポなども執筆。著書に『ジャンク・スタイル』『もう、ビニール傘は買わない。』(平凡社)、『日曜日のアイデア帖〜ちょっと昔の暮らしで楽しむ12か月』(ワニブックス)、『かみさま』(ポプラ社)、『スピリッツ・オブ・ジャンク・スタイル』『ジャンク・スタイル・キッチン』(風土社)ほか多数。共著に『母弁』(主婦と生活社)、『ジャンク・ウエア』(平凡社)など。 ホームぺージ「暮らしの柄」

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