リノベーション・スタイル

<54>DJブースとキッチンを斜めにしたら

  • 文 石井健
  • 2014年2月12日

  [Y]
 Yさん夫婦
 東京都品川区
 築19年 / 54.69m²

 Yさん夫婦のリノベーションに対する要望は直球でした。「DJブースが欲しい」というのは旦那さん。「大きいキッチンが欲しい」というのは奥さん。

 そこで、二つを満たすプランを考えたのですが、気をつけたのは、窓への視線の開き方です。というのは、55m²というコンパクトな空間は、視線をどう扱うかによって見た目の広さがかなり変わってくるのです。玄関から入って外が見えたり、壁を曲がって窓があったりすると、実際以上に広く感じるものです。

 最終的に落ち着いたのは、DJブースをテラス側に斜めに置き、キッチンを玄関にはみ出す形で斜めに設置する案です。キッチンとDJブースという二つの大きな島の間にリビングがあるような、ちょっと変わったプランです。

 なぜDJブースとキッチンが斜めになったかというと、その場所に立ったときに、部屋にある二つの窓へ視線が抜けるようにしたためです。壁に対して平行に置いてしまうと、その場所からは壁しか見えません。また、キッチンは、背中側の壁がクランクしているため、斜めにしないと回遊性が出せないという事情もありました。斜めに置くことによって、感覚的にも実質的にも空間を広く活用できたのです。

 フローリングは、「おもしろいかも?」というノリで、縦や斜めを組み合わせました。視線の誘導にも一役買っていて、部屋の中にサーキットのようなダイナミックな動きが出ました。

 寝室は部屋の奥にありますが、広々とオープンにしています。リビングの後ろには日当たりのいいワークスペースを造りました。玄関もスペースを有効利用するためにちょっといびつな台形に。部屋の中では風呂とトイレの壁だけがまっすぐです。

 部屋の全体のイメージは、新国立競技場で話題となっている建築家ザッハのような感じでしょうか……。DJブースの斜めの置き方やキッチンの飛び出し方は、立体高速道路が飛び交う、どこかロシア・アバンギャルドのような……。

 若いご夫婦で、おふたりのテンションが同じくらい高かったので、部屋づくりは3人でスカッシュをやっているような感じでした。1回の打ち合わせが5時間くらいかかったこともあります。リノベーションは、そういったプロセスも楽しいものですね。

つづきはこちら

このエントリーをはてなブックマークに追加
mixiチェック

PROFILE

石井健(いしい・たけし)

1969年、福岡県生まれ。「ブルースタジオ」執行役員。日本のリノベーション・シーンの創世期から500件以上を手がけてきた。「カンブリア宮殿」(テレビ東京系)でも「古い物件の家賃を倍にする不動産集団!」として紹介される。「郷さくら美術館」(東京・中目黒)で2012年度グッドデザイン賞受賞。 著書に『リノベーション物件に住もう』(共同編集/ブルースタジオ)


Shopping

  • ダイバーシティープロジェクト