モードな街角

パリで人気、Bento

  • 文 田村有紀
  • 2013年3月6日
「Neo Bento」は一面ガラス貼りで、明るく開放的

写真:「Neo Bento」店主のリオネル・ドゥルグマンさん「Neo Bento」店主のリオネル・ドゥルグマンさん

写真:店内には、閲覧用にフランス語版のマンガも店内には、閲覧用にフランス語版のマンガも

写真:弁当12ユーロ。店主が市場へ自ら出向き、旬の食材を厳選。美しくヘルシーで、栄養満点のメニューを提案している弁当12ユーロ。店主が市場へ自ら出向き、旬の食材を厳選。美しくヘルシーで、栄養満点のメニューを提案している

写真:「Mussubi」は丸いおむすびを連想させる、白い丸形のタイルが印象的。黒板に書かれた当日のメニューは、同レストランのフェイスブックのページでも知らせている「Mussubi」は丸いおむすびを連想させる、白い丸形のタイルが印象的。黒板に書かれた当日のメニューは、同レストランのフェイスブックのページでも知らせている

写真:イートインは8席。壁と天井は木の板で覆われ、山小屋のような雰囲気だイートインは8席。壁と天井は木の板で覆われ、山小屋のような雰囲気だ

写真:「Mussubi」看板商品、小ぶりのおむすび3種、おかずを6種詰めた日替わりの「ベント・スペシャル」(13ユーロ)。ベジタリアン用のおかずも用意している「Mussubi」看板商品、小ぶりのおむすび3種、おかずを6種詰めた日替わりの「ベント・スペシャル」(13ユーロ)。ベジタリアン用のおかずも用意している

 フランスに「Bento」ブームが起きているといわれて、どのくらいたつだろう?

 そう、日本でいう「弁当」のことである。

 パリの大型書店の料理本コーナーに並ぶ数々のお弁当のレシピ本に筆者が気づいたのが、2年ほど前。雑誌やテレビ番組などでもしばしば取り上げられるようになり、大手冷凍食品メーカーも、おかずに照り焼きチキンや餃子などを詰めた冷凍Bentoの発売を始めた。

 フランスのメーカーが製造しているスタイリッシュな弁当箱「Mon Bento(モンベント)」は昨年、国際的なプロダクトデザイン賞「レッドドット・デザイン賞」を受賞。Bentoという単語がフランス語の辞書にも記載されるようになった。

 「Bento」ブームの火付け役は、すでに世界的に広まっているアニメやマンガで、登場人物がおいしそうに弁当やおにぎりを食べるシーンといわれる。バランスのとれた食事や健康への関心の高まり、そして手作り弁当の場合は不況をきっかけとした節約志向も、ブームの追い風になっているのだろう。

 見目よくバラエティに富んだ弁当は、パリのトレンド発信エリアの手軽なイートインやテイクアウトのレストランでも、提供され始めている。

 昨年12月、北マレ地区にオープンした「Neo Bento(ネオ・ベント)」は、その名が示すように新スタイルの弁当が売りだ。店主は元航空会社勤務で、来日の際に日本の弁当に感銘を受け、日本各地で料理の講習を受けるようになったという。

 ネオ・ベントでは、お客が6種類のおかずとデザートを自由に組み合わせる。ポップでカラフルな空間からも、あからさまな和食レストランらしさは感じられないが、旬の素材をしょうゆ、みりん、みそなどの日本の調味料で味付けた多彩な料理を用意している。ハーブと鯖のタタキ、きびと人参のガレット、ココナッツミルクとコリアンダー風味のさつまいものピュレなどが、看板メニューだ。

 「みそ汁の具にフランスの伝統野菜を入れたりと、私たちなりにアレンジしています。Bentoという言葉ですか?だいぶ浸透してきていると感じますが、それでも1日に15回くらいは説明していますよ」と、店主のリオネルさん。

 ランチの忙しい時間帯には、40分以上待ちにもなるとか。新感覚のBentoは、しっかりと人気をつかんでいるようだ。

 1月に10区に開店したばかりの「Mussubi(ムスビ)」は、これまでパリになかったおむすびをメインにした日替わりの弁当を用意している。日本とフランスを「結ぶ」という意味も込めて、パリ在住のふたりの日本人女性がオープンさせた。

 日替わりのおむすびは3種。海苔を巻いた三角の「おにぎり」ではなく、まぜご飯にして具を分かりやすく。丸く握った「おむすび」は、フランス人にも親しみやすく一口サイズに。ふっくらと炊いたお米に混ぜ込んだセロリの葉のみそ漬け、和風ドライトマトなどの珍しい具材は、まさに日本とフランスを結ぶフュージョンな味わいだ。

 「ベント スペシャル」では、おむすび3種、おかず6種が3×3の升目に色とりどりに並べられて目にも美しい。味もバラエティーに富んでいるから、飽きずに最後まで食べられる。

 「私たちが作っているのは、日本の家でふつうに食べている家庭料理」と店主の今井めぐみさんは言うが、和洋中華を自由に行き来するバリエーション豊かな日本の家庭料理こそ、実はとても今らしい食のあり方なのかもしれない。

 おかずを詰めた箱に、無限に広がる食文化の可能性。遠い異国の「Bento」ブームは、国境を越えた食の未来を感じさせてくれる。

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PROFILE

田村有紀(たむら・ゆき)

1973年、京都府生まれ。ライター、翻訳者。『コンポジット』編集部を経て2001年よりフリーランス・ライター、翻訳者。ファッション、デザインなど文化や暮らしにまつわる人物や企業のインタビュー、ルポタージュを担当。寄稿書に『ファッションは語りはじめた』(2011年/フィルムアート社)、『ハイファッション デザイナーインタビュー』(2012年/文化出版局)、訳書に『Feel and Think: A New Era of Tokyo Fashion』(2011年/Prestel )。2004年よりフランス在住。


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