【動画】胃がん検診について、新潟県立がんセンター新潟病院・成沢林太郎医師の解説です



 がん検診に関する厚生労働省の指針が今年4月に改訂されました。胃がんに関して、これまでのX線検査に加えて内視鏡検査も対象になっています。内視鏡検査が加わった背景にはどんなことがあったのでしょうか。また、従来のX線検査や、胃がんのリスクを上げるとされるピロリ菌の検査についてどのように考えたらいいのでしょうか。国立がん研究センターの「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」作成委員で、新潟県立がんセンター新潟病院臨床部長の成沢林太郎さんに、胃がん検診について聞きました。



(聞き手=田村建二)





 4月に改訂された厚労省の指針では、50歳以上の人に2年に1回の間隔で、内視鏡を含む検診をすすめるとしています。

 内視鏡が新たな指針でがん検診の選択肢に加わったのは、内視鏡による検診を受けることで死亡率が減少することが認められたからです。国内や韓国で、複数のエビデンス(根拠)が示されています。

 一つの例として、これは私たちが関わった症例対照研究ですが、36カ月以内に内視鏡による検診を受けていると、胃がんによる死亡率が受けない人に比べて約30%低いという研究結果があります。

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 「30%下がる」ということの意味ですが、たとえば、検診を受けた人と受けなかった人がそれぞれ100人ずついたとします。受けなかった100人のうち胃がんで10人が亡くなり、受けた側では7人が亡くなったという場合、その3人の差が30%の違いということになります。

 検診はどこで受けられるのか。指針が対象としているのは、自治体が公費を投入してする「対策型」の検診です。対策型の検診は、自治体が契約している医療機関で受けることができます。行っている施設は自治体の窓口である保健所、あるいは、地域の医師会に問い合わせていただければ分かります。対策型検診は医師会とタイアップして行われているからです。

 対策型とは別のものとして「任意型の検診」というものがあります。これはご本人の意思で、それなりの費用もご自身で支払って、いろいろな項目を選択して受けることができます。その代表が「人間ドック」、「がんドック」などです。

 対策型と任意型の違いですが、対策型ではがんの死亡率を下げることを最大の目標としていて、「精度管理」というものが重要視されます。精度管理とは「検診を受けたうちどれだけの人がより精密な検査などを受けたか」といった経過をしっかり追うことなどを指します。任意型は各検診機関が別個にやっているので、どれだけ精度管理がされているかは、外からはなかなか分かりません。もちろん、決してレベルの低い検診をしているという意味ではありません。

 検診で何かおかしなものが見つかった場合は、精密検査を受けるために医療機関に紹介されます。内視鏡による検診では、組織を一部つまむ「生検」によってがんかどうかを判断できます。精密検査では、がんの範囲や深さなどを調べ、それをもとに治療方針が決まります。

 内視鏡による検診には不利益もあります。内視鏡だと、ごく小さな、ミリ単位の早期胃がんを見つけることが可能です。ただ、こうした小さな早期がんが、必ずしもその人の命にかかわるとは限りません。こうした場合は広い意味での「過剰診断」となります。

 検査に伴う「偶発症」もあります。よくあるのは内視鏡と粘膜がこすれて起こる出血です。最近は経鼻の内視鏡が使われることも多いのですが、鼻腔(びくう)を通るときに鼻血が出ることもあります。口から入れる通常の内視鏡の場合、嘔吐(おうと)反射が起きただけでも、胃の粘膜が一部避けて出血することもあります。ごくまれですが、生検の際の出血が止まらないケースもあります。

 内視鏡によって消化管に穴が開いてしまうことも、ごくまれですが起こります。また、内視鏡を入れる際にはいろいろな薬を使います。例えば、胃腸の動きを止めるための鎮痙(ちんけい)剤や、のどや鼻の麻酔薬を使ったりします。薬にはどうしても副作用があり、まれに麻酔薬でショックを起こしてしまうこともあります。

<アピタル:インタビュー・アピタルがんインタビュー> http://www.asahi.com/apital/channel/interview/

田村建二

田村建二(たむら・けんじ) 朝日新聞編集委員

1993年朝日新聞入社。福井支局、京都支局、東京本社科学部、大阪本社科学医療部次長、アピタル編集長などを経て、2016年5月から編集委員。