自分や家族が「がん」と診断されたときに、信頼できる情報をどう集めればよいのでしょうか。本や新聞だけでなく、インターネット上には、「がん」についてのさまざまな情報があふれています。専門家が第三者の評価を踏まえ、吟味した情報を載せているものもあれば、特定の治療方法に偏って、有効性や安全性について十分検証されていない情報を掲載しているものもあります。治療情報の質を見極めたり、情報を判断したりする際のポイントについて、長年、確かな情報の発信に取り組んでいる帝京大の渡辺清高准教授(腫瘍内科)に聞きました。(聞き手=林敦彦・アピタル編集長)

【ポイント】

▼信頼できる情報かどうか迷ったら、担当医に聞いてみよう

▼ネットの情報、自分の症状にあてはまるのかどうか吟味しよう

▼新しい治療法は担当医に聞きながら「標準治療」と比べ優れているのかどうか見極めよう

▼「補完代替療法」の情報は特に冷静な判断を。中には高額なものもあり、担当医や主治医に相談しよう

▼医療情報の発信側も科学的根拠や有効性、安全性に配慮しよう

Question今回のテーマは「がんと情報」です。自分や家族ががんになったときに、信頼ある情報を集めるために、どんな助言をされていますか?

Answer患者さんががんと診断されてから、どういう治療を受けようかとか、どういったところでそのあとの生活をすごそうかとか、いろんなことを考える必要があります。たくさんの情報源がありますが、まず大切にしていただきたいのは、いまの担当医との関係づくりです。診断されて間もないころは、いろんな面でショックを受けたり、パニックになったりしていらっしゃるかもしれません。

 

■情報の信頼性に注意 迷ったら「担当医」に相談を

 診断されたあとの経過には、治療を続けたり、一段落したあと経過観察したりする期間があり、病気とのつきあいは長くなります。まずは患者さんご自身のことについて、一番よく知っていらっしゃる担当医に情報を聞いていただくことが大事だと思います。その担当医と話しやすい関係をつくっておけば、さまざまな情報についても相談できます。その先生が専門でないことについても、その先生を通じて紹介してもらったり、相談先を教えてもらったりすることもできますので、まずは担当医の先生と話しやすい環境をつくっていくというのが第一歩だと思います。

【動画】渡辺清高さんインタビュー(ダイジェスト)

Question患者・家族側からするとがんについて基本的なことを勉強しようとするときに、たくさんの情報を前に、何をどこまで信頼できるか悩むことが多いです。

Answer患者さんご自身が病気について積極的に調べてみようというのはとても大切なことだと思います。一方、いまはインターネットや本とかいろんな情報があふれていて、情報が自分にあてはまるのかどうか、選び出すのが大変難しいです。私は以前国立がん研究センターがん対策情報センターに在職していたときから、患者さん向けにわかりやすく、かつ信頼できる情報を発信するという取り組みをしています。

■「患者必携」つくったいきさつは?

 医療を提供する側の視点で信頼できる情報をこちらからお伝えしたいという一方で、信頼できる確かな情報を得たいという患者さんやご家族の声に応えるかたちで、患者さんや家族、遺族の意見も反映しながら「患者必携 がんになったら手にとるガイド」(国立がん研究センターがん対策情報センター編著、学研メディカル秀潤社発行)をつくるプロジェクトに携わりました。国立がん研究センターのウェブサイト「がん情報サービス」でも、内容を読むことができます。

 「患者必携」では、診断されて間もない時期の患者さん向けにまず病気について知っていただくこと、医療者とのコミュニケーションのとり方、診察に行くときに聞いておくといいことをまとめました。治療が一段落するまでの大まかな流れがわかるように、わかりやすい言葉でまとめています。

■不安、疑問は書き留めて

 がんと診断されたときには、こうした情報を参考にしていただきながら、どういった形で病気や治療の情報と向き合えばいいのか、ヒントを得ていただきたいと思います。わからないことや不安や疑問に感じたことは、どんなことでもいいので、書き留めたり、書き出したりしておくといいと思います。不安や疑問をいつまでも自分ひとりで抱えているのではなく、声に出したり、医療者に伝えたり、家族や周囲の方と話し合ったりすることで、ご自身の不安の解消につながったり、解決のヒントをみつけたりすることもあると思います。

Question実際に情報を集めて、それからどうするかが次のステップです。

Answer信頼できる情報を集めた上で、理解し、納得をしてご自身の行動に取り入れていくことで初めて生きた情報になるのですが、それが実際には難しいものです。多くの患者さんにとって、診断や治療を受けるというのは初めての体験です。たくさんある選択肢のなかから正しく、これがよかったとか、これがベストだという選択をするというのは難しいことだと思います。

■「セカンドオピニオン」の活用も

 それでまずは患者さん自身の病気について一番よく知っている担当医や主治医に疑問に思っていることを伝えることが大事ということになります。これから受ける治療についてほかの選択肢と迷っている場合は、遠慮なく担当医に話しましょう。担当医はそういったやりとりを通じて、どんな不安があるのかとか、治療の方針についてどんな悩みや疑問があるのかについて知ることもできますので、納得して医療を受けられるためにもぜひ意見をきいていただけるといいと思います。

 また、「セカンドオピニオン」という形で、担当医ではない別の専門の医師、別の施設の医師の意見や考え方を知ることもできますので、そういったことも活用してもらうこともできます。その場合もまずは今の担当医の提案する意見(ファーストオピニオン)についてよく理解した上で、セカンドオピニオンを聞くようにすると、どちらを選んだ場合であっても、よりご自身が納得して治療を受けたり、続けたりすることができるのではないでしょうか。

Questionいまはインターネットで簡単に膨大な情報が集められます。特にインターネットで情報を集めるときの注意点は?

Answerインターネットでの検索で、いくつかのキーワードを入力すると、それに関連する情報がずらっと並んででてくるので、便利ではあると思います。ただ、信頼性や確からしさはどうか、ご自身にその情報があてまるかどうかについて、一歩引いて冷静な目で判断する必要があると思います。

 インターネットの「キーワード検索」は、過去によくその言葉が調べられたとか、注目されたというときに、上位に結果が出てきます。わかりやすいキャッチフレーズで、断定的な文言が検索結果として出てくることが多いのですが、実際のがんの診療では、断定的に物事が進むということはあまりありません。

■「必ずなおる」「奇跡の○○」に気をつけよう

 検索結果の例でいうと、「必ずなおる」とか「奇跡の治療」といった言葉には注意が必要です。治療を受けている患者さんは普段から不安にかられていらっしゃいますので、「奇跡の治療」とか「必ずなおる」という言葉に引き寄せられやすいです。そのときも、情報の確からしさや、その治療がどれくらい有効かどうかということに関しては気をつけながら、ご自身が受けている薬物療法や手術、放射線治療などいろんな治療のメリットとデメリットについてバランス良く情報を集めていくことがとても大切だと思います。ある特定の治療について誘導するような説明をしていたり、情報源が偏っていたりする場合は要注意です。体験談が添えられている場合もありますが、個人の意見がご自身にあてはまるかどうかはわかりませんので、冷静にとらえていただくことが重要です。もし興味があるときやわからないことがあれば、担当医や主治医に確認していただくのがいいと思います。

■長所と短所のバランス踏まえた判断を

 インターネットの場合、情報源が匿名であったり、出典が書かれていなかったりする情報、あるいは古い情報、更新されていない情報といったものもあります。いいことしか書いていない情報については立ち止まって考える必要があると思います。がんに限らず、治療に関してはメリットとデメリット、効果と副作用が両方ありますので、費用のことも含めて情報がバランス良く書かれているものを参考にしていただくのがよいと思います。

 具体的には、国立がん研究センター「がん情報サービス」のように質の担保された情報、自治体、がんの拠点病院、がんに関する規模の大きな学会がつくった情報は信頼できるものと考えていただいていいと思います(ただし、中には作成日や更新日が古いものがあります)。逆に、個人の発信する情報はたとえ医師や専門家であっても偏った情報があるので、情報源や発信元がどんなものなのか関心をもっていただくのは情報の質を見極める上でとても大切だと思います。

Question有名人が受けた検査や治療について取り上げられると、その内容に患者さんが影響を受けることがあります。

Answer有名な方やみなさんがよく知っている方ががんと診断されたとか、がんで亡くなったとか、そういったニュースがでることはよくあります。そういった報道をきっかけにしてがんの検診を受けようとか、自分ももしかしたら同じ病気なんじゃないかといって、病気や治療について関心をもっていただくという意味では、そういった報道も意味があることと思います。

 ただ、さきほどのインターネットの情報と同じで、その情報が自分にあてはまるかどうか、冷静に情報を評価して自分が取り入れていいのかどうかよく考えていただきたいと思います。診断や治療、特定の食品について勧める記事が、個人の体験談に過ぎないものなのかどうかや第三者に検証された情報なのかどうか。多くの方に有効で役に立つ治療であれば、有名な方の事例を持ち出す必要はないわけで、そういったことには何らかの理由があるとクールな目で情報を見極めていただくことが大切だと思います。

■「新しい治療」に注意 「標準医療」と比べて判断を

 そもそもその検査や治療がどういった人を対象に行われているものであるのかといったことやご自身にあてはまるのかどうかを、きちんと冷静に見極める必要があります。新しい技術とか新しいキーワードはみんなの関心を集めやすいですし、いままでにない治療ということになると、効きそうなイメージをもって受け止められがちです。現在はがんの拠点病院をはじめとして質の高いがん治療を行う医療機関で広く行われているのは「標準治療」といって、その有効性や安全性についてきちんと検証された治療です。話題の新しい治療は標準治療に比べて必ずしもすぐれているかどうかはわかりません。ですので、新しい治療とか、新しい診断方法に関する情報があったら、冷静に情報の確からしさや信頼性を判断することが大事で、わからないことがあったら、担当医に相談にのってもらうのが一番いい方法だと思います。

Question特に「がん」の場合は、インターネットを中心に「補完代替療法」についての情報について、とまどっている患者さんや家族がたくさんいらっしゃると聞きます。

Answerたくさんいらっしゃいますね。補完代替療法には健康食品やリラクゼーション、鍼灸などがありますが、健康食品で有名なものにSMAPというのがあります。サメの軟骨(S)、メシマコブ(M)、アガリクス(A)、プロポリス(P)の頭文字をとって、そうよばれています。こちらのSMAPは、ちょっと冷静に判断していただくのがよいと思います。

■補完代替療法の「SMAP」には冷静な判断を

 補完代替療法で治療効果が証明されたものはありません。どんなことを期待して、補完代替療法を取り入れようとしているのか、よくふりかえっていただくのがいいと思います。

 補完代替療法の中には、抗がん剤の副作用を軽減したとか、心を落ち着けたとかという効果が示されたものが一部にありますが、あくまでもそれはごく一部です。それを使うことによって、どんなことがメリットとしてあるのか、なかには高額なものもありますので、そういった費用に見合うものかどうか見極めることが大事です。

■補完代替療法、「高額」なものも 費用や副作用に注意しよう

 中には高額なサプリメントもありますが、いままでの治療で受けているほかの薬とあわせてのむことで、副作用がおこりやすいものもありますので注意が必要です。例えば、「自分がこのサプリメントを使ってみたい」とか、「家族や友人が勧めるけど、どうなんだろう」という疑問があれば、ぜひ担当医や主治医に相談してみてください。医師に相談しにくい場合は、薬剤師さんや看護師さんにたずねてみてください。

 特に費用のこととか、副作用のことについては、バランス良く情報を得ていただくのがよいと思います。多くのサプリメントや健康食品については、国立健康・栄養研究所のホームページで「健康食品」の安全性・有効性情報として、効果や安全性・副作用に関する情報がバランスよく発信されていますので、そういった情報源も活用していただけるといいと思います。

Question新しい治療というと、まだ科学的根拠(エビデンス)のない免疫活性化療法や再生医療について、ネットで情報を得る患者は多いです。

Answerインターネット上には、そういった治療に誘導するようなウェブサイトもありますので、その治療法について自分が取り入れていいのかどうか悩まれる患者さんがいらっしゃいます。その治療がどれくらい確からしいのか、信頼できる治療なのかについて見極めることが大事です。

 がんの治療を専門としているがんの拠点病院など、がん医療についてきちんと質の高い医療ができるよう体制が整った病院では、治療の効果や、有効性・安全性について検証された「標準治療」が行われています。治療を考えるときにはまず標準治療がスタートラインだと思いますが、がんの病状によっては、そういった標準治療が当てはまらなかったり、有効でなかったりする場合もあります。

■特定の治療に誘導するサイトも 

 先進的に行われている医療のなかで、研究段階のもので効果が期待されているものもあります。ただ、実際の患者さんで有効かどうか、安全かどうかについては、まだまだ検証段階であるということを理解しておく必要があります。インターネットのサイトのなかには、特定の治療方法であるとか、特定の医療機関やクリニックに誘導するようなものがあります。

■魅力的な文言にまどわされない

 中には高額なものとか、ヒトにおける有効性や安全性についてきちんと検証されていないものもあり、注意が必要です。魅力的にきこえてしまいそうな文言が並んでいますが、そこは一歩冷静に考えていただいくことが必要ということです。いま治療している主治医、担当医はどんな意見をもっているのか、きちんと確認していただくのがよいと思います。

Question最近、インターネット上で医療や健康に関する情報を発信する側の姿勢が問題になりました。

Answer健康や医療に関心をもつ方に向けて、メディアの方や出版にかかわる方だけでなく、患者さんや医療従事者も情報を発信するようになっています。大切なのは科学的根拠(エビデンス)で、新しい治療を紹介するときは、多くの患者さんで有効性や安全性が検証されているのか、いま行われている標準治療に対して、その新しい治療はより有効なのか、より安全なのか、どんな患者さんを対象としているのか(自分の今の状態にあてはまるのか)ということを確認していただくといいと思います。

 いろんな情報源を得ていただくというのはメディアの方が記事を発信するときにもあてはまると思います。ひとつの治療について肯定的な意見を発信される方もいれば、それに対して慎重な意見を発信する方もいらっしゃいます。治療の効果や有効性についてのお話だけでなく、それに関するコストや副作用についてもバランスよく情報を出していくことも大事なのではと思います。

Question「いい病院ランキング」などの本の出版が長く続いています。読者がいろんな情報を身近に調べられる一方、その情報をもとに「ドクターショッピング」として、患者が病院を渡り歩くという弊害もあるといわれます。

Answer医療情報の公開がすすみ、一部の病院ではがんの種類ごとに5年生存率が公開されるようになりました。医療についてのデータをみられるようになったというのはとても大切なことだと思います。ただ、ランキングという形で比較することがよいのかというと、これは考える余地があると思います。例えばランキングがひとつ違ったとか、数字が1割違ったということにどのくらい違いがあるかということです。あくまでそれは過去の実績であったり、症例の数を数えた時期によって変わりうるデータの一つにすぎないのであって、そこで行われている医療がよいとか悪いとかについて判断する材料には使えないと考えたほうがいいと思います。

■「5年生存率」などの数字、絶対視しないで

 例えば生存率にしても、診療実績にしても、その医療機関がどういったがん患者さんを診療しているかによって数字は大きく変わります。例えば症状が進行した患者さんを主に診療する医療機関や高度ながん治療を提供している大学病院、がんセンター、総合病院では病状が進行しているだけでなく、もともとほかの病気を合併しているとか、高齢者で何らかの病気をもっている方がいらっしゃいます。こうした場合にはそうではない医療機関と比べて、生存率が低く算出されます。

■数字の「一人歩き」に注意 背景の吟味を

 数字はわかりやすい指標ですが、一方で一人歩きをしやすいので、数が多かったり、生存率が高かったりすると、良いように受けとめられがちです。ただ、それはあくまでも指標の一つであって、その数字だけでその医療機関が行っている診療や、得意にしている分野を判断するのは早計です。同じ地域にあるほかの医療機関と連携しながら、ともに肺がんや乳がんを診療しているというように、特定のがんの種類に特化した医療機関があることも地域によってはあります。ですので、生存率や診療実績はあくまでも過去のデータであるということを認識した上で、その内容が自分自身にあてはまるかどうかというのを今の担当医や主治医とのコミュニケーションのなかで考えていただくことが一番大切なのではないかと思います。

■ランキングの情報、担当医と相談を

 ランキングの数字によって右往左往したり、ご自宅から遠方の医療機関に通うことが負担になったり、治療のあと通院し続けることがつらくなってしまうこともあるかもしれません。医療機関ごとのデータは、あくまでもかかっている医療機関はどんな特徴があるんだろうという現状を把握していただくことは役立つかもしれませんが、それで病院を比較したり、選んだりするのに役立つかどうかということは一歩引いた目で考える必要があるんじゃないかと思います。

Questionがんとのつきあいは長いということですが、がん治療を受ける病院を選ぶのと同じように、治療後の療養生活も大切ということですね。身近なところにどんな医療機関があるのか、療養が必要なときどこに相談すればよいかを知りたいときにはどうすればよいでしょうか。

Answer診断されて間もない時期に必要な情報であれば抗がん剤治療とか、手術や放射線治療など、「標準治療」ということで日本のどこにお住まいであっても共通の一般的な情報としてお示しすることができます。一方で、住み慣れた「地域での療養」ということになると、在宅療養を受けたいときの相談窓口や療養を支える医療機関や施設、サービスの状況は地域によって異なります。都心と地方とか、在宅医療が浸透している地域とそうでない地域とか、お住まいの地域によって利用できる情報が変わります。ぜひお住まいの地域にがん患者さんを支える仕組みとしてどのような施設や制度・サービスがあるか、相談できる窓口や患者会・患者団体などの支え合える場所があるか、といったことを知っていただきたいと思います。先ほどご紹介した「患者必携 がんになったら手にとるガイド」と一緒に活用していただきたい情報として、「患者必携 地域の療養情報」という、身近な医療機関や相談窓口をまとめた、地域の方がつくる情報冊子を提案させていただきました。

■がん治療後の「療養情報」 地域で作成の取り組みも

 2012年以降、全国で「患者必携 地域の療養情報」を作成する取り組みが少しずつ広がってきました。これまでに、がん患者さん向けの「地域の療養情報」としては30道府県以上でつくられています。無料で患者さん向けに配布している県があるほか、インターネット上でも公開されていますので内容を無料で読むこともできます(がん情報サービス 都道府県などの療養情報冊子一覧)。「地域の療養情報」には、地元にあるがんの拠点病院や相談窓口、費用や制度の手続きの説明や連絡先、患者会や患者サロンなど支え合う場所の情報、緩和ケア施設のリスト、就労についての相談窓口などがまとめられています。実際に患者さん向けの情報として活用されることをきっかけに、さらに役に立つ情報が追加されたり更新されたりして、改訂版が定期的に発行される地域も増えてきました。地域のがんの相談窓口としては「がん相談支援センター」があります。がんの拠点病院には「がん相談支援センター」が設置されていて、専門の相談員ががんに関する相談があったときにお話をお聞きしたり、信頼できる情報源をもとに情報探しのお手伝いをしてくれます。その病院にかかっていなくても、どなたでも相談することができます。お近くのがんの拠点病院はこちらからご覧いただけます(がん情報サービス がん診療連携拠点病院などを探す)。

Question家族ががんと言われたとき、治療が一段落したあとに在宅で過ごすイメージがなかなかわきません。どんなことを知っておけばよいのでしょうか。

Answerがんの治療を受けた後の生活をどう過ごすか、ということでいうと、自分が住んでいる地域にどういう医療機関や療養施設があるかを知っておくことが大事です。

 がんと診断されて間もない時期に知っていただきたい情報をまとめた「患者必携 がんになったら手にとるガイド」では、読むことでがんの診断から治療まで大まかな流れがわかる総論的な情報を盛り込みました。ただ、がんと診断されて治療が終われば、病気とのつきあいがおしまいということではなく、多くの場合はその後も治療を続けたり、再発がないか確認したりするために通院することになります。がん治療を続けたものの、残念ながら根治が見込めないといったことも考えられるわけで、こうしたときの備えも大切です。

■在宅療養、家族の不安にも寄り添う情報を

 がん患者さんが在宅での療養を考えるときに、どのようにご自宅やご自宅に近い環境で過ごすのか、役に立つ情報はどこにあるのか、どこに相談すればいいのでしょうか。在宅での療養を考えることも、住み慣れた環境で安心して暮らしていくためにとても大切なステップです。治療を始めるときや治療が一段落したときに、在宅療養のことについて早い時期から情報を集めて知識を備えておくことが大切です。在宅での生活ではご本人に加えてご家族の不安にどう向き合うかがポイントだと考えています。がん患者さんを自宅で支えることについてイメージすることは難しいことだと思います。核家族化や高齢夫婦世帯が増えていることもあり、ご家族向けにがんの在宅療養について情報をつくることにしました。

■3年がかりで完成した「在宅療養ガイド」

 それが、在宅療養についてヒントになるガイドブック「ご家族のための がん患者さんとご家族をつなぐ在宅療養ガイド」(地域におけるがん患者の緩和ケアと療養支援プロジェクト 編著、日本医学出版発行)です。在宅医療や訪問看護、介護福祉に関わる方の伝えたい情報と、ご家族やご遺族が知りたい情報をつなぎ合わせるかたちで3年がかりで作成し、2015年にウェブサイト(「がんの在宅療養 地域におけるがん患者の緩和ケアと療養支援情報 普及と活用プロジェクト」)で公開しました(Facebookページ)。その後、本として手に取って読みたいというご意見を多くいただきましたので、2016年5月に書籍として購入することもできるようになりました(ご家族のための がん患者さんとご家族をつなぐ 在宅療養ガイド)。

■「看取り」などの情報や対話のヒント盛り込む

 がんの治療を受けたあと、在宅やご自宅に近い環境で過ごすとき、病状との向き合い方とか、家族でできるケアのやり方とか、看取りのときの様子も含めて在宅療養の実際を知ることができる情報や、医療者や在宅支援チームとの対話のヒントがあればいい、というご意見をご提案をいただいたのがきっかけです。

 がんという病気の実際は、患者さんひとりひとりで大きく異なります。診断されて治ることもありますが、治療が長期にわたる場合もあります。診断された時点で残念ながら根治は見込めないとか、治療を続けたけれど再発したとか、限りある人生をどう過ごそうかとか、いろんなときに判断を迫られる場面があると思います。ご家族とどういった最期の時間を、例えば病院のなかで過ごそうかとか、おうちに近い環境で過ごそうかとか、自宅で過ごしたいけど、いまの介護やケアの体制で本当に大丈夫かどうか、不安になられることがきっと多いと思います。「在宅療養ガイド」では、そんなときにぜひ知っていただきたい情報を集めています。

■患者・家族支える取り組み、先進的な地域も

 患者さんとご家族にとっては一連の治療は初めての経験でしょうけれど、ご自宅で過ごすということについても不安を抱く方は多くいらっしゃいます。近年は核家族化が進んで家族構成もかわってきていますので、老老介護の問題とか、住宅環境が在宅に向いているかどうかといった問題もあります。がん患者さんの療養生活の質の向上をめざして、がん患者さんとご家族をきちんと支えていこうという仕組みが少しずつ動き始めており、先進的な支援や連携の取り組みを行っている地域もあります。生活や療養を支えるという視点でみると、地元のかかりつけ医、看護師、薬剤師、介護福祉職といった職種の方がいらっしゃるということをぜひ知っていただきたいと思います。

 そうなると、今度はがん治療を行っている医療機関だけではなくて、在宅療養支援診療所とか、訪問看護ステーションとか、ケアマネジャーさんとか。そういった在宅の医療・介護・福祉を担う方といっしょに地域のがん患者さんの療養をよりよくしようというネットワークが少しずつ地域で育ってきています。そういったことも知っていただいて、安心して自分の住む地域で過ごしていただけるような情報をまとめたガイドブックを、ということで作成しています。

■患者や家族だけでなく介護福祉担当者の活用を

 こういった情報があると、患者さんもご家族も、自分の住む地域で療養を支える方やサービスとうまく出会えて、準備ができると思います。がんの患者さんの場合、刻々と病状が変わることも多いので、治療をはじめるころから在宅での療養に向けて備えておくと、いざ必要になったときにスムーズに連携ができていきます。ぜひとも患者さんを支えるご家族に読んでいただきたいですし、周りでがん患者さんを支える介護福祉職の方など、在宅にかかわる多くの方に、このガイドを含めて役に立つ情報をぜひ活用していただきたいと思います。

Question最後にメッセージをお願いします。

Answerまずは信頼できる情報源をもとに正しい知識を得ていただくということが大切だと思います。インターネット上の情報だけではなく、まずは目の前の主治医、担当医を信頼できる情報源のひとつとしてぜひ活用していただきたいです。それに加えて、情報をただ見つけるとか集めるだけでなく、それをご自分の病状とかご自身の状況にあてはまるかどうかということを吟味した上で、納得したり理解したりすることも大事だと思います。

■治療効果、検証された情報が重要

 治療効果がきちんと検証された治療をしっかり受けていただいて、安心で満足できる療養生活を送っていただきたいと思います。がんの病状は多くの場合、経過が長いことが多いですので、情報をうまく取り入れて、ご自身に当てはまる情報をうまく選択して、納得できる治療・療養生活を送っていただくのが大切です。実際には、情報を得てもその通りに行動できなかったり、病状が変われば不安になったり、ほかのことができるのではないかと心配になったりすることもきっとあると思います。それは特別なことではなくて、刻々と病状がかわったりとか、考えが揺れたりすることもあります。いつも正解があるということではなく、ご自身にとっての正解をご自身の中で探さないといけない状況も出てくるかもしれません。

■信頼できる情報もとに行動を

 そうしたときはご自身なりのこれまでの信頼できる方とのやりとりの中で答えをみつけていくことでもよいと思いますし、同じような経験をしていらっしゃる体験者の方に話を聞いたりとか、そういった方をたくさん診療している医療者の方に相談してみることもよいと思います。確かな信頼できる情報を備えておいて、必要なときに活用していただくというのが大切だと思います。知識を備えて、いざとなったときにあわてないように、「今後どんなことがおこりそうか」「自分で何かできることはないか」「ほかに選択肢がないか」とか。ぜひ今回ご紹介した情報を信頼できる情報源として活用していただくとともに、「信頼性」ということを意識して情報を見極めていただきたいと思います。これからの治療や療養について、納得して考えていただくことがご自身にとっても、まわりのかたにとっても、安心につながると思います。信頼できる情報をもとに正しく行動していくことに役立てていただきたいと願っています。

※インタビュー記事については、動画の内容に一部補っています。

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    <アピタル:インタビュー・アピタルがんインタビュー>

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    林敦彦

    林敦彦(はやし・あつひこ) 朝日新聞記者・アピタル編集長

    1992年朝日新聞社入社。新潟支局、甲府支局、名古屋本社社会部、東京本社社会部、医療グループ、科学医療部などで、医療を中心に取材。2011年4月から5年間、東京本社と大阪本社の科学医療部次長として、医療・医学を担当。2016年5月から「アピタル編集長」。