24歳の長女。金融関係の職場で働いています。仕事でミスが続いて悩み、心療内科を受診すると「軽度の注意欠陥障害」と診断されました。医師に「接客業は向かない」と言われ、自信を失っています。別の仕事を探すべきでしょうか。将来が心配です。(広島県・M)

 ■答える人 岩波明(いわなみあきら)さん 昭和大学付属烏山病院長(精神医学)=東京都世田谷区

Question注意欠陥障害とは。

Answerいまは「注意欠如・多動性障害(ADHD)」と呼びます。特徴は、物事に集中できずケアレスミスが多い、忘れ物が多い、片付けが苦手などの症状が強い「不注意優勢型」と、落ち着きがない、一方的なおしゃべりや不用意な発言が多い、感情が高ぶりやすいといった動きが目立つ「多動性、衝動性優勢型」に大別されます。相談のケースは前者でしょう。珍しい病気ではなく、成人の3~4%にみられるとも言われます。

Question相談者によると、子どもの頃は「忘れ物が多い」と感じる程度だったそうです。

AnswerADHDは生まれつきの性質です。詳しく問診すると、気が散りやすかったり、じっと座っていられなかったりするなど、児童期に何らかの傾向が見られることが多いです。小学校の通知表に「最近は少し落ち着きがでてきましたね」といったコメントが書かれていたら、可能性があるかもしれません。学生生活には支障がなくても、社会人になれば仕事でミスは許されず、ADHDの人にはつらい状況になりやすいです。うつ症状を伴うこともあります。

Question治療法は。

Answer注意力の欠如を改善する薬が2種類あります。飲むか飲まないかは本人と相談します。薬物療法のほかには、集団精神療法、カウンセリングも有効です。

Question仕事は今後どうしたらよいですか。

Answer好きな分野には優れた集中力を発揮する人が多く、自分のペースでできる仕事が向いています。一方、複数の案件を処理する仕事にはあまり向きません。仕事が合わなければ、無理をせずに職場を変えるのも一案です。

大人のADHD この症状をチェック

 最近よく耳にする大人の注意欠如・多動性障害(ADHD)。昭和大学付属烏山病院の岩波明病院長(精神医学)に、診断の目安や対策を具体的に挙げてもらいました。

QuestionADHDが疑われるのは、どんな場合でしょうか?

 次のような症状に心当たりが複数ある場合です。

・課題や活動に必要なものをなくす

・約束や締め切りを忘れる

・落ち着きがない(着席すべきときに座り続けられない)

・手足をそわそわ動かさずにいられない

・周囲の動きに気が散りやすい

・会話の流れを読めずに一方的にしゃべる

・人の話を最後まで聞けず、話が終わる前に答えてしまう

・一度感情が高ぶると、抑制がきかない

Question失敗やトラブルを少しでも減らす工夫は?

・するべきことを毎日書きとめる習慣をつける

・家族とスケジュールや忘れてはならない打ち合わせ、会合の予定などを共有する

・複数の仕事(課題)を同時並行でしない習慣をつける

・仕事の量を見直す(減らす)

・睡眠、飲酒に気を配り、規則正しい生活を送る

Question受診が必要なレベルの症状とは?

 以下に心当たりがあれば、受診を勧めます。

・職場でケアレスミスが多く、上司から頻繁に注意を受ける

・ミスが重なり、うつや不安を感じる症状が強くなっている

・転職、結婚、出産で環境が変わり、親戚づきあいや育児で失敗が続く

Questionどんな治療がありますか?

 薬を飲むほか、グループでのカウンセリングや、考え方の癖を自覚して対応する力をつける認知行動療法があります。ADHDの治療で通院している人は、全患者の1割程度と推定されています。家族の協力が必要になる場面も多々あります。

 何よりも重要なのは、ADHDをよく知ることです。一見、「だらしない」と思えることでも、本人の責任というよりもADHDの症状や特性によって現れていることを理解する必要があります。

 家族や職場の上司・同僚らは、患者に合うように生活環境や職場を整えていってほしいです。

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