花粉症などアレルギー性鼻炎でつらいこの季節。専門の医療機関で治療を受けるのが基本ですが、さらにふだんの生活の中で工夫をすれば、症状の改善につながることもあります。マスクやめがねの選び方、鼻が「ツーン」としない鼻うがいの仕方など、つらい季節を快適に過ごすために家庭でできる対策について、耳鼻咽喉科の専門医である福井大学の徳永貴広さんにアドバイスしてもらいました。

■鼻がムズムズする原因は?

 花粉が飛び始めると、鼻水・鼻づまり・くしゃみといった鼻炎の症状に悩まされる人が多くなります。徳永さんによると、鼻炎には、スギやヒノキなどの花粉や、ダニ・ほこりといったハウスダストが原因となるアレルギー性鼻炎があります。このほか、冷たい空気を吸い込んだときに寒暖差などの刺激で透明な鼻水が出る「血管運動性鼻炎」もあるといいます。
 このほかにも、鼻の周りにある空洞(副鼻腔)がウイルスや細菌に感染し、炎症を起こす「副鼻腔炎」(蓄膿症ともいいます)もあります。副鼻腔炎の場合、どろっとした粘り気のある黄色い鼻水が出ることが多いそうです。頭やほっぺたが痛いといった場合は副鼻腔炎の可能性もあります。
 「日常生活がつらいと感じるほどの症状の場合は、耳鼻咽喉科やアレルギー科といった専門の医療機関を受診し、原因を調べた上で、適切な治療を受けた方がいいでしょう」と徳永さんは言います。
 

【鼻のムズムズの主な原因】

・花粉やダニ・ほこりが原因のアレルギー性鼻炎

・寒暖差などの刺激による血管運動性鼻炎

・感染により鼻の周囲の空洞が炎症を起こす副鼻腔炎

 

■花粉症対策はマスクとゴーグル型のメガネを

 ふだんの生活の中で心がけることとして、徳永さんは「アレルギー性鼻炎の場合、アレルギーの原因となっている物質(花粉やダニ、ほこり)を除去することが第一の対策になります」と言います。花粉症では、マスクやゴーグル型のメガネをつけることが有効です。症状が出る鼻や目に花粉が入らないように、マスクやメガネとの間にすき間ができないようにすることが大事です。
 マスクは、市販されている不織布のマスクであれば、花粉を通すことはないそうです。マスクには上下や表裏があります。鼻の部分にワイヤーが来るように装着して、鼻の形にフィットするように顔に密着させます。口だけ覆い鼻を出してつけている人もいますが、鼻から花粉が入ってしまいます。
 メガネは、目の周りや鼻の付け根をがっちりガードするゴーグル型がおすすめです。メガネをつけたままかけられるタイプやくもりにくいレンズもあります。ゴーグル型ではないメガネでも、ある程度、花粉の侵入を防ぐ効果があるとの報告もあります。
 仕事の理由などからマスクやゴーグル型のメガネをつけにくいという人もいるかもしれません。徳永さんは、そんな人には保湿剤で使われる「ワセリン」を使うことも一つの手だといいます。ワセリンを目のまわりや鼻の入り口に塗ると、花粉がそこにくっつき、中の粘膜までいきにくくなるそうです。そして、家に戻ったら、洗い流しましょう。ワセリンは、軟膏の基になる材料で保湿剤としても使われていますので、「多少目や口の中に入っても安全性は高いです」。ただ、かゆみや湿疹などを起こすことがまれにあるかもしれないので、異常があったらすぐに医療機関を受診してください。
 

【マスクやメガネの選び方・使い方】

・すき間ができないようにつける

・マスクは、鼻や口を覆うことができるタイプを選ぶ

・メガネは、目の周りや鼻の付け根にぴったりフィットさせる

・マスク、メガネをつけられない人は、ワセリンを目の周りや鼻の入り口に塗る

 

■鼻のムズムズ、鼻水、鼻づまりがひどいときは?

 鼻水や鼻づまりがひどいときには、「鼻うがい」がおすすめです。鼻に水を入れると、鼻が「ツーン」となるのではないかと心配になるかもしれません。そこで、徳永さんに「ツーン」となりにくい鼻うがいのやり方を教えてもらいました。
 

【鼻がツーンとしない鼻うがいのやり方】

①1リットルのぬるま湯に食塩9グラム(小さじ1.5杯)を入れて洗浄液をつくり、ドレッシングボトルに入れる

②下を向き、片方の鼻を押さえ、もう片方の鼻から洗浄液を入れる。「えー」と声を出しながら洗浄液を口から出す

③反対の鼻でも同じ事をする。これを3~5回繰り返した後に、鼻をかむ

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「鼻がツーンとしないようにするポイントは、体液と同じ洗浄液を作ること」と徳永さんは言います。真水や塩水は使わずに、一度、沸騰させた水を冷まして、体温と同じ人肌くらいの温度にして、0.9%の食塩水を作ります。これで、鼻の粘膜についた花粉や炎症物質を洗い流すことが期待できます。洗浄液を鼻に入れるときに、「エー」と声を出すのは、のどがしまった状態にして、洗浄液を飲み込まないためです。洗浄するときに、服や床がぬれるかもしれないので、タオルなどを用意しておきましょう。また洗浄中に飲み込もうとすると、鼻の中の水が逆流して耳に入り、中耳炎の原因になることもあるので、「洗浄中は飲み込まないようにしましょう」といいます。

 

■他にもある鼻づまりを改善する方法

 鼻づまりがひどいときには、蒸しタオルを使うこともいいそうです。鼻炎で腫れた鼻の粘膜の血行をよくすることで、鼻づまりを改善します。ぬらしたタオルを電子レンジであたため、やけどしないように冷ましてから鼻全体を覆います。お風呂に入った後と同じで、鼻の通りがよくなることが期待できます。
 鼻の通りをよくするためには、鼻の粘膜を乾燥しないように適度に湿らせることが大事です。加湿器や吸入器を使うと乾燥を防げます。さらに徳永さんは「アロマテラピーで自律神経の働きを整えてリラックスできるとの報告もあります」と言います。鼻炎の症状は自律神経と関係しており、アロマテラピーが症状の緩和につながったとの報告もあります。アロマオイルをお風呂に数滴たらして、湯気と一緒に吸入するといった方法もあるそうです。
 夜、鼻がつまって眠れない時は、つまっているのと反対側を下にして寝ると、鼻づまりがよくなることがあるといわれています。はっきりした理由は分かっていませんが、片方の脇の下を圧迫すると、逆側の交感神経が刺激されて、一時的に鼻づまりが改善すると考えられます。
 

【鼻づまり症状がつらいときには】

・蒸しタオルで鼻を温める

・加湿器や吸入器で鼻の粘膜を湿らせる

・アロマオイルをお風呂に垂らす

・鼻づまりがあるのと反対側を下にして寝る

 

■ふだんの生活で気をつけること

 鼻炎の原因となる花粉などを家の中に持ち込まないように、外出先から戻ったら玄関で衣服を脱いだり、花粉を払ったりしましょう。マスクは新しいものにかえ、メガネやゴーグルについた花粉は拭き取りましょう。家の中をこまめに掃除することも大事です。布団は、ダニやほこりをとるために干した後にも掃除機をかけます。ただ、花粉症の人は、花粉が飛んでいる季節は、外に干すのは避けた方がいいです。
 食生活では、野菜や穀物中心の和食をとった方がいいと言われています。体の中の腸内細菌が、アレルギー反応には関係していると考えられており、腸内細菌を整えるためには、和食の方が適しているそうです。バランスのいい食事を心がけましょう。
 また、最近は根本的な治療につながる免疫療法が注目されています。徳永さんは「全員に効くわけではありませんが、7~8割の人には効果があります」と言います。スギ、ダニが原因のアレルギー性鼻炎には効果が期待できますが、2~3年以上続ける必要があるそうです。注射ではなく、自宅でできる「舌下免疫療法」が最近できるようになりました。特定の専門医のもとでしか受けられませんので、受診の前に医療機関に確認しましょう。
 一方、これらの免疫療法ではない治療で、「注射で一発で治る」という文句を目にすることもあります。徳永さんは「『一発で治る』という治療は、耳鼻咽喉科の専門医はまず選択しません。副作用が強い治療の可能性がありますので、注意しましょう」と専門の医療機関を受診することをすすめています。

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<アピタル:インタビュー・医療>

http://www.asahi.com/apital/channel/interview/

北林晃治

北林晃治(きたばやし・こうじ) 朝日新聞記者

2002年朝日新聞社入社、北海道報道部、さいたま総局をへて、東京本社生活部、科学医療部。厚生労働省など社会保障、医療分野を取材。東日本大震災後、社会部をへて再び科学医療部へ。2016年9月からアピタル編集部員