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一色さゆり「神の値段」 美術愛が存分に

写真:『神の値段』を手にする一色さゆりさん 拡大『神の値段』を手にする一色さゆりさん

 画家と画商とコレクターの思惑が入りまじる美術業界を舞台にした推理小説『神の値段』が、宝島社の公募新人賞「このミステリーがすごい!」の大賞を受賞した。作者は一色さゆりさん(27)。メディアへの露出を控えつづけて一昨年81歳で死去した世界的な現代美術家・河原温(かわらおん、愛知県出身)へのオマージュをこめた作品だ。

 正体不明の前衛画家の傑作を売りに出そうとした画廊経営者が何者かに殺され、仕事を引き継いだ薄給アシスタントの若い女性が、事件の真相に迫っていく。画廊の日常の仕事ぶり、近年のアートの動向、臨場感たっぷりのオークションの描写などが、犯人捜しを盛り上げる。そして何よりも魅力的なのは、美術をいとおしむ作者自身の気持ちが存分に書き込んである点だ。

 東京芸大美術学部芸術学科に在学中から小説を書き始めた。卒業後、都内の画廊に3年間勤め、上海や台北、香港、ソウルなどで仕事をしたこともある。昨年9月からは香港中文大学大学院で漢字文化圏の美術史やアートマネジメントを学んでいる。

 受賞作は、好きな作家のひとりだった河原温の死をきっかけに2カ月で書き上げた。「美術愛好者を変人扱いしない新しいアート小説を書きたかった。アートの面白さを少しでも多くの人に知ってもらい、若いアーティストたちの作家活動を応援できれば、という気持ちが支えになった」

 愛知県生まれの夫も美術畑。義父は硯(すずり)の作家。作品に登場させた「傑作」は墨絵。つまり今回のデビュー作は、作家の足元から生まれたといえる。「一色さゆり」は応募時に考えたペンネーム。白い紙のうえで世界を広げる単色の黒い文字。作家の仕事にかける夢をこめた命名だ。静岡市在住。『神の値段』(宝島社、1400円+税)は2月10日に発売される。 (佐藤雄二)

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