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文化【百聞より一見】

「ほどく かたち」 ギャラリー数寄

写真:米山より子 作品展示風景(米、絹糸、手漉き和紙、水) 拡大米山より子 作品展示風景(米、絹糸、手漉き和紙、水)

●日本的イメージ超えて

 2020年の東京五輪開催に向けてか、最近よく聞く「和のおもてなし」や「日本文化の発信」。だがその中心である安倍首相直轄の有識者会議「『日本の美』総合プロジェクト懇談会」で語られる「日本」は、驚くほど古色蒼然(こしょくそうぜん)としている。「クールジャパン」でも「伝統回帰」でもない日本のリアリティは、どこにあるのだろうか。

 米や和紙という一見非常に日本的な材料を用い、手仕事を通じて素材の美を最大限に引き出しながらも、米山より子の作品は「日本」のイメージからふんわりと飛翔(ひしょう)していくかのようなおおらかさをはらんでいる。

 絹糸に様々な間隔で接着されたご飯粒が、半透明に光りながら五月雨のように天井から何十本も降り注ぐ中、台の上に乳白色の像が5体。複雑な襞(ひだ)のブラウスは細かく畳まれた裾の長いプリーツスカートに続き、首や腕はなく中は空洞だ。近づいてみればすべて和紙。

 水にぬらすと紙粘土のような可塑(かそ)性に富む手漉(てす)き和紙を、土台に被せて成形し乾かして土台を抜き取る。身体が土に還った後にひっそり残された「衣装の遺跡」とでも呼びたい静かな佇(たたず)まい、そして全体の姿や襞の表情から想起されるのは、飛鳥、ガンダーラの仏像やパルテノン神殿の女神像。国は異なっても歴史を遡(さかのぼ)れば、身体と衣服のイメージはどこかで重なり合う。

 窓際のガラスケースの中には、器の水に浸された連なるご飯粒や、絹糸の刺しゅうを施された和紙のオブジェなど、無国籍感漂う小品が並ぶ。添えられたゲーテの「水の上の霊の歌」は、たくさんの水を潜(くぐ)り抜ける米と和紙に捧げられているかのようだ。

 思えば米も絹も紙漉きも、大陸から伝来し生活・文化の中に根を降ろしたもの。それらを日本的イメージに固定化せずクリエイトしていこうとする作家の姿勢が清々(すがすが)しい。5月8日まで。  (文筆家・大野左紀子)

 【大野左紀子 おおの・さきこ】  名古屋市生まれ。東京芸術大卒。近刊「あなたたちはあちら、わたしはこちら」など。

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